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議論の渦に飛び込んで行け!~桐朋前総務委員長・土田君に聞く外務と内務~

外務に内務に常に全力なのがこの男、というのが彼の評判だ。桐朋中学・高等学校生徒会で2022年度中央委員会議長・高校総務委員長をしていた土田淳真さんに話を聞いた。

生徒会に入ったきっかけ

「中一の終わりごろに先生から呼ばれて、いつの間にか『土田が生徒会役員に』って話が出ていたみたいなんですよ。昔からこういうことやるの好きでしたし、せっかくだし生徒会やってみよう、と思ったんです。」生徒会役員としての生活はこうして始まった。中三の時には中止となった中学運動会の代替企画に取り組んだ。できるだけ人と人との接触を減らしながら、楽しめる企画をどのように作るか。ひらめき問題による「頭脳戦」を組み合わせることで、生徒の多くを教室にとどめたままイベントができるやり方を考えた。
高一になったのち、生徒会中央委員会内の機構改革に取り組む。中高がバラバラに活動していた生徒会を、中長期的な話については連携して行うようにした。一から組織を作るという経験が、生徒会長になったのちにも生きていると土田さんは語る。

総務委員長になって

総務委員長(生徒会長)になり、チームを引っ張る立場に立った時に大事にしていたことは何か聞いた。土田さんの答えは「議論を大切にすること」。
「トップにとって扱いやすいような、いわゆる『トップダウン』な組織ではなく、参加者が議論して問題を洗い出せるようなものにしたいと思い、生徒会のチーム化に取り組みました。30年ぶりとなった生徒会会則改正や、後述するICT化に関する議論などはまさに『議論』の賜物です。」しかし併せてもう一年生徒会長をするなら改善点は?という問いにはこう答えた。「おそらく理論上は一番良いやり方だったんでしょう、しかし実際には、各チームの成果が個人のやる気に直結していたり、振り返りが不足していたりで、結局ただの体験で終わってしまった感もあります。俯瞰して見れなかった、というのも反省の一つです。」

外務で得られるもの

「土田君といえば外務」ー親交の深い人たちからはこんな評価がある。そんな土田さんに外務に対する姿勢について、聞いた。「外務の活動というのは、大体参加者と運営が分かれており、ただ参加するだけでは受け身になりがちです。実際自分でやってみて、運営のほうが得るものが多いですし、やっぱり楽しいんです。桐朋での活動にしろ、中高協での活動にしろ、『システムを作る側になれ』というのをモットーに、それぞれのメンバーがどこかしらかの外務活動にいるようにしていました。首都圏のみならず全国各地の学校・団体とコネクションを築き、コロナ禍で打撃を受けた全国生徒会ネットワークをある程度は再興できたと自負しています。」と述べた。また外務で得たものについて「外務というのは自分の活動を客観視できる場だと思うんです。たとえば一人一台配布されたパソコンの活用について生徒会として提言したとき、他校での生徒目線の活動実態はどうか聞くと、他校でも実際思ったより使えないな、という意見が多いことがわかりました。その内容をもとに、そもそもなぜ教育にICTが必要なのか、から踏み込んで考えて、『ICTで何ができるか』でなく『何をすべきか』を盛り込み提言書づくりに取り組みました。それだけでなく、個人としても『ものの動かし方』を学べたように思います。物事を前に前に進めるときに、どうしたらうまくいくか。いろんな人との関わりが糧になりました。」と述べた。

中高協代表として

生徒会、文化祭に関するイベントを開催していた中高生の有志団体・日本中高生協議会。その代表も務めていた土田さんに、代表としてどう活動に向き合ったかについて聞いた。「ほかの生徒会団体もある中で『中高協は生徒会だけの団体じゃない』というのを念頭に置いて、生徒会にとらわれない交流を生もうというのを意識しました。」その結果生まれたのが参議院議員通常選挙直後に行った中高生による政治・社会討論会「中高生よ未来を語れ!」や人狼やワードウルフを通じて交流を深める「オンライン○○大会」といった企画だった。

日本中高生協議会のイベント。文化祭から政治参加まで、幅広いものが並ぶ。

2023年3月に4年ぶりに開催された全国生徒会大会。日本中の生徒会役員が一堂に会して討論交流するというこのイベントでは実行委員長を務めた。そんな土田さんに、全国規模で生徒会に関するイベントを開催することとなったいきさつやその難しさを聞く。
「もともと上野君(生徒会会談)と何かしらか対面でのイベントをやろう、という話をしていました。そんな時別の生徒会OBの団体の人たちが、こういったイベントを全国規模でやりたいので実行委員を募集するという話を聞いたんですね。その団体はあまり生徒会の実情に沿った活動をしているといえず、その団体だけの運営だと、企画内容に中高生の意見が反映されず『大人が子どもをリードする』生徒会の象徴になりかねないという懸念がありました。そこで、自分をはじめとした現役の中高生が、今あるネットワークを生かした形でイベントを開催することで、外務活動の集大成とするとともに、現役中高生だけでもイベントを実現できるんだということを示す機会にしたいと思いました。」結果は全国から28都道府県300人以上が集まる大盛況であった。中高生のみで実施した前日企画では大臣経験のある2名の現役国会議員との意見交換を実施し、多様な視点から教育を見つめ直す取り組みを実施したという。

生徒会大会で壇上に立つ土田さん。大盛況である。

運営、その中の課題

逆に運営していく中でどんな問題があったのか。土田さんは「情報共有が徹底されなかったこと」を挙げた。「ともに企画を進めた(前述の)OB団体からの情報共有が不十分で、当日の運営のグダグダさを招いてしまいました。生徒会活動に社会人の方が興味を持ち支援してくださるのは非常にありがたいのですが、逆にその枷となるようなことがあってはなりません。当日のトラブルに臨機応変に対処してくれた桐朋や中高協のメンバーに感謝するとともに、次世代の方々がこの経験から多くを学んでくれることを期待しています。」


最後に様々な外務活動を経験した土田さんに、そこで得た「極意」を聞いた。
「内務があってこその外務であり、外務はあくまで手段であるというのを忘れてはいけないと思います。学校内外を問わずそういったグループで代表をするにあたって、リーダーというのは『上』でなく『前』に立つ人であるというのを心がけていました。誰よりも主体的、誰よりも実務をこなす。誰よりも悲しみ、誰よりも喜ぶ。そんな人であるということです。」

文・桃井晴崇(生徒会活動振興会編集長)


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