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ゲートボールクラブ(F上に騙された話)

小学生の頃クラブ活動ってあったよな。毎週木曜日の4・5時間目にサッカーとかバドミントンとか吹奏楽とかいくつかのグループに分かれて遊ぶ、部活動のプレ演習みたいなやつ。

僕あれ5年生のとき、ゲートボールクラブに所属してたんですよ。ゲートボールクラブ。校庭の隅っこの植物園に囲まれた薄暗い一角で、近所の爺さんに習って。赤白帽被って体操服着た10歳ちょいのガキが雁首揃えてやることがゲートボール。なんで僕がそんな年金生活を50年先取りしたようなクラブに参加していたかというと、そこには深いワケがある。端的に言うとF上に騙されたのだ。

4年生の頃、僕は仲良しグループの親友(F上ではない)と共にボードゲームクラブに所属して毎週ボードゲームをエンジョイしていた。

5年生のクラブ選択でも当然、ボードゲームクラブを選択するつもりだった。しかし当時僕たちのクラスには、5年生のクラブ選択は希望通りにはならないという噂が流れていた。クラブ活動が初めての4年生と最後の6年生に挟まれていると考えると、この噂は非常に尤もらしく思われた。ボードゲームクラブに参加できなくて仲良しグループと行動を共にできずサッカーとかやらされるのは死んでも嫌だ…と僕は悩んだ。

そんなところに画期的な策を耳打ちしてきたのが、隣のクラスのF上だった。こいつは昔からそういうやつで、こういうちょっとした困り事に対して異常に豊かな悪知恵が働くのである。その策とは次のようなものだった。まず第一希望には適当な第三希望くらいのクラブを書き、第二希望に本命のクラブを書く。すると第一希望では4.6年生が優先されて弾かれるので、第二希望に回されて望み通りのクラブに入ることができる!これは当時の僕には革命的な提案のように思われた。

第二希望にテーブルゲームクラブを書き、第一希望は何にしようか…と手が止まる。希望が通ってしまう可能性も無くはないから、少なくとも絶対参加したくないクラブは書けないのだ。動きたくないし陽キャと一緒になりたくないから運動系クラブは論外、イラストコンピュータクラブは絵を描きたくないからダメ、茶道クラブと吹奏楽クラブは女子しかいないから除外…と消去法で選んでいくと、ゲートボールクラブしか残らなかった。よく分からんけどまあこれでいっか、とゲートボールクラブを第一希望とする。これが全ての間違いだった。

クラブ抽選結果発表の日。当然ながら僕のクラブはゲートボールクラブだった。第一希望が通ってしまったのだ。F上に騙された!そう思った僕は憤怒した。よく考えたら第一希望にゲートボールクラブなんて不人気クラブを書いてしまったらいくら5年生が後回しにされようが通るに決まっているのだが、小学5年生当時のボンヤリした頭ではそれに気づけず、まあとにかく僕を騙した悪の権化F上に全ての怒りが向いた。

憤懣やるかたなしという感じでゲートボール場に向かった僕の怒りは、数分前の僕と同じ、こんなはずじゃなかったという顔をしてゲートボール場に突っ立っているF上を見てすっかり萎んでしまった。お前もかよ。

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