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【百合漫画レビュー】あの頃の青い星(第2回)

   ごきげんよう、ナタリー・ポートマンです。前回までは二人の出会いや関係性について少し書いていきました。今回はこの作品のテーマになっている「海」について。今回もちょっと細かい作中の描写を含みますのでネタバレ嫌な方はご容赦。

1.この作品の海

   海といえば構本海さんですよ。構本海=最高。瀬川さんへの気持ちに気づいて悩むところとかたまらねぇよ...。てのはわたしの好みの話です。まじめに話すと、瀬川さんからすればこの物語ってずっと海と向き合ってる話になってます。水の海と構本海。そこが共通してるってことは何か海自体に大切な意味があるんじゃないか?と百合ヲタクは考えたわけですよ。じゃあ海にはどんな意味が込められてるの?というところをシンボル(象徴)的に考えてみましょう。

2.海は何を象徴する?

   フロイトやユングの夢分析から拝借するといくつか海の象徴するものがありますので少し挙げてみます。

①無意識
   フロイトっぽい(汗)。フロイト曰く私たちの知覚しうる現実、意識を向けられる部分というのは一部であり、その下にはエス(本能、欲動)超自我(理想)と言われる無意識の要素、今まで知覚し体験してきたものの堆積物のようなものが広がっていると言います。瀬川さんは「母親の愛を経験していない」という体験をしてきていて、それが彼女の言動やパーソナリティに大きく影響してますよね。これって瀬川さんが意識してやっている事じゃなくて無意識にある欲動に突き動かされてるわけで。海はこの作品のテーマとして大きなウエイトを占めていると思いますが、つまりは瀬川さんの無意識の本能、欲動が大きな問題として扱われていくことの象徴とも考えられます。

②母体、母性
   これは直球ですね。作中ではもっと分かりやすいように「海には人魚の母親がいる」という表現がなされてますが、その設定がなくても象徴的に見れば瀬川さんが母の愛を欲していることが分かります(ほかの描写からも分かりますが)。そして構本さんの名前も海なんですよね。作中では瀬川さんが帰宅途中で耳にする「おかえり」「ママご飯なに?」の声に焦点が当てられているシーンがあります。そんな暖かい家庭と自分の寂しい家庭を対比しながら寮に帰宅すると構本さんが笑顔で「おかえり」といいます。瀬川さんの心にダイレクトアタックですよ。構本さんは海が象徴するところの母性を一部与えてくれる存在なんですね。でもそれだけじゃないのがこの漫画のいいところ。それは次の項目にて。

③外界への船出
   これはまぁ現実的な感じですね。港とか基本的に別の場所へ船を出すための施設ですし。ただこの場合の船出とはつまり自分の外側、他人や社会との接触を意味します。瀬川さんが現実には興味を示さずここにいない母親に焦がれて海を眺める(対面している)という作中の描写、これは同時に、本当は外界と繋がりを持つべきだという現実的な課題に対面していることの2つの意味を含んでいるのではないでしょうか。ではそこで出会った構本さんはどんな存在か?前述のように構本さんは母性を一部与えてくれる存在なんですが、一方で彼女はあくまで構本海であり本当の母親ではないんですよね。それでも瀬川さんが初めて他人(外界)に興味を持つきっかけになっていて、構本「海」さんは名前の通り外界への船出の鍵にもなっているのだとわたしはイメージしました。

3.さいごに

   と、いうのがわたしの妄想でありました。ここまで書いてきたことは本当にわたしの感じたことでしかないんですけど、しかし作品の設定がしっかりしているからこそ色んな想像や推測が出来ているんだと思います。それとこの作品は色々考えなくても、絵は可愛いし、雰囲気はいいし、二人の関係はちょい切ねぇし、パッと見で最高ですから是非まだ読んでおられない方がいれば見ていただきたいと思います。リンクは第1回のレビューに貼っているので割愛。あの頃の青い星のレビューは今回で終了、わたしの妄想レビューを読んだ皆さまお疲れ様でした。(・ω・)ノシ

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