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七海礼奈と黄昏のワルツ【後編】

5 墓地を出た僕たちは、ほど近い停留所でバスを待ち、やってきた車に乗って駅まで戻った。今日はこれで終わりではない。旅行の目的はまだ半分しか達していないのだ。  礼奈が忘れているとも思えないが、万が一に備えて僕はおじさんに彼女の家の場所を教えてもらっていた。家はここから都心方面に二十分ほど電車に乗り、さらにバスに十分乗ったところにある。僕が二年前に住んでいた場所ともさほど遠くないのでだいたいの場所は見当がついた。  新宿行きの電車に乗り、シートに座ると、礼奈のお腹がぐう、と

    • 七海礼奈と黄昏のワルツ【前編】

      あらすじ 四年前に事故で両親を亡くした少女・礼奈。二十二歳の「僕」は、おじさんに頼まれ、彼女とともに、命日の墓参りをすることになる。彼女が幼い時を過ごした大切な場所。失われた人々、時間、記憶。それは彼女のための旅でありながら、しだいに「僕」の心をも揺さぶりはじめる。  ※この小説はゲーム『雀魂』の二次創作作品です。ゲームをプレイしていなくてもお読みいただけます。 1 三月の風が僕たちの頬を撫でた。生き物のような湿り気とあたたかさを帯びた風だった。風は無言のまま僕の指や彼女

    七海礼奈と黄昏のワルツ【後編】

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    • 七海礼奈シリーズ
      2本