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REBUILD - KAGERO

KAGERO楽曲全70曲を再構築、再録音。

それは2021年度最後の日。吉祥寺NEPOで突如告知された。
この日、KAGEROとしての単独ライヴは約2年ぶり。久しぶりの爆音に不覚にも涙腺が崩壊しかけていた僕は、この突然のサプライズに只々唖然とするばかりだった。

音楽業界はコンテンツのリユースがまかり通ってきたように思う。所謂ベスト盤等はその最たる例といえる。
適切なプロモーションをうてば新規リスナーを取り込むチャンスかつ、未発表曲の一つでも入れておけば古参ファンからの売上も見込めるという、実にローカロリーなビジネスモデル。もちろん、既存曲へのテコ入れが行われることは稀、というのがよくある話。
そんな中で、リユースでもなく、リサイクルでもなく、まさかのリビルド、しかもそれを全曲やると言うのだから、メンバーもレーベルもクレイジーとしか言いようがない(褒めてる)。

メンバー間はもとより、バンドを取り巻く環境が良好な状態でないと到底実現せず、時間がいくらあっても足りないであろうその作業ができたのは、言い換えれば(こんな表現本当はしたくないけれど)コロナ禍があったから出来たことと思う。
そのきっかけはそもそも、既存曲の再構築、アップデートそのものが好きだからだそう。
言われてみれば、REBUILDの精神は今回に始まったことではない。KAGERO ZEROでは再構築&再録&新曲入りという、非常に豪華なベスト盤を以前出しているし、ライヴ会場限定の再録バージョンもリリースし続けてきた。つまり、片鱗は既にあったと言える。

今回のREBUILDは、フィジカル音源に先駆けて1日一曲ずつ配信され、アルバム一枚分が終了する日に、今回の再録やオリジナル製作時を振り返る語らい動画が配信された(全曲にコメントも入り、まさにマニア垂涎の内容)。
「当時はこの曲をちゃんと理解できていなかった」
「今回のREBUILDでやっと理解できた、納得いく形にできた」
という発言が印象的だったこの配信が、過去作を1作ずつきちんと聞き直す切っ掛けとなり、驚きと再発見に溢れた時間を過ごすことができ、結果的にREBUILDも原曲も、合わせて楽しむことができた。
配信に投げ銭をすればダウンロードURLを送信してもらえたのだが、大容量のためダウンロードできる環境になく、泣く泣く保存を諦めたため、現在は視聴できないのが非常に悔やまれる。

REBUILDされて、どの曲も原曲よりアップデートされ、一段と魅力が増している。その中でも個人的なイチオシは以下の通り。
1 THE PINBALL
サビのベースラインめちゃ大好物
2 THE COLD
ピアノの深化がえげつない
3 HYRTERIA
キメの入れ方が最高に良い
4 Pyro Hippo Ride
複管がゴージャス過ぎてえぐい
5 Ajisai
メジャーとマイナーの入り乱れ最高
6 under
もはやPart2、ドラム暴れまくり
順位ではなくアルバム順。

普段ならばあまり聴かない曲がピックアップされるのも、今回全作品をじっくりと聴き直す機会に恵まれたからだろう。

僕はKAGERO 3から聴くようになったため、3以前の作品は実はそこまで聴き込んでこなかったが、今回一枚ずつ改めて聴き直してみると、作風の変遷を如実に感じることができる。1を原点として、常に前作を超えるものを、という意志のもと3まで正統進化をし続け、4になるとメンバーチェンジもあってか振れ幅が増え始め、5でその多様性は最高潮に。同時に今のスタイルを確立していった。そしてもはやジャズ要素のあるオルタナティブハードコアに突然変異した6。
これに続く7がどんな作品になるのか、本人からは既に売れない発言が飛び出しているが、今から楽しみでならない。

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