WHITE ALBUM 2 例のルートの感想

 ご無沙汰してます。城之内赤坂改め、赤城智明です。改名しすぎなのではと思うかもしれませんが、名前なんていくらあってもいいじゃないですか。それより重要なのは「WHITE ALBUM 2」の感想ですよ。というわけでネタバレ全開です!閲覧注意です!

 今日はホワルバ2を完走したてホヤホヤの今、心に響いているハーモニーをそのまま、ここに書きなぐろうと思います。思えば初めてプレイしたのは半年前。冴えカノロスに耐えられず、この作品に手を出しました。そこから4日でclosingのEDまで拝み、そこからは上京して、環境の変化に必死でついていく片手間、半年かけてようやく、全ルート及び全選択肢制覇しました。
 長い間ちまちまやり続けたせい(おかげ)か、キャラ達への思い入れは募りに募って、またロス状態。では早速、ここからはタメでいきます。

 例のルートとは言うまでもない、codaのかずさtrueルート。春希が雪菜ではなく、かずさを選ぶルート。一見、普通かと思うかもしれないが、このワンフレーズには紆余曲折やらなんやらがぎっしりと詰まっているのだ。私は最後の最後にこのルートにたどり着いた。ルート分岐は非常に複雑で、雪菜に「ただ会いたい」と言い、かずさに「嘘は言えない」と言うような立ち回りをする。(未プレイ勢はわけわからんと思うが)これは春希がかずさと本気で向きあうルートなのだと思う。じゃあかずさnormalルートは本気で向き合ってないかというと、そのとおりである。あのルートは後先考えずに、一時の欲望に身を任せたルートである。つまり何が言いたいのかというと、浮気ルートは「五年前の二の舞ルート」なのだ。ただの二の舞ではない、社会人になり、雪菜だけじゃなく、職場や友人関係、色々な繋がりを持った上で、五年前と同じくかずさを選ぶ。だから、五年前みたく、子どもの付き合いでは済まされない。春希の手には責任がある。それを裏切り、新たな責任をもつ。折り合いをつけて、話もつけて、大人の形をして、子どものように行動する。

 これがどれだけ苦しいことか!かずさを選んだことに後悔はない。でも、辛い。「袂を分かつ」こと、それはよく行われることかもしれない。でも、絶対にそう思ってなかった人と別れなければならない。そうなったとき、どれほど辛くて、いたたまれない気持ちになったか...。

 ルートの順を追って説明する。先も述べたように、このルートは真面目にかずさを選ぶ。まず、冬馬かずさの来日が報道され、春希は戸惑う。五年前が頭をよぎる。それから春希は運命と呼ぶべきか、宿命と呼ぶべきか、冬馬かずさ密着取材を任される。もちろん運命なんてものは嘘で、これは冬馬曜子が仕組んだものだ。そう、あの時、ストラスブールでの邂逅から、運命はレールから外れていった。あの時かずさの取材を受けたが故に、かずさは来日し、冬馬曜子は春希に仕事の依頼をした。冬馬母子は、希望を見つけてしまったのだ。時を同じくして、春希は雪菜との婚約の決着をどうつけようか決めあぐねていた。

 密着取材を重ねるに連れて、春希はかずさが何も変わっていないことを知る。そして、かずさは春希が変わってしまいそうなことを知る。春希はこんな状況で雪菜とコミュニケーションをとれるわけもなく、空白の期間が空いていく。もともと予定していたプロポーズもかずさとの再会で後ろ倒し。かずさと半ば同棲生活しながら、記事を書き上げていく春希。じわじわとフラストレーションが溜まり、コンサート手前、かずさは告白する。さらに春希はコンサートへ行かず、かずさから逃げるように雪菜に会いに行き、逃げるように婚約を申し込む。このままだとかずさを選んでしまいたくなる。そう思っての行動だったのだろう。この時点では、たとえかずさを愛していても、誰もがかずさを選ばないだろう。しかし、コンサート終了後、事態は急変する。

 コンサートは一部には盛況。だが結論から言うと失敗した。冬馬家はマスコミの手から逃れ、行方をくらます。春希は東京に戻り、それを聞きつけ、かずさをやっとのことで見つける。そこで、春希は決断する、かずさに嘘はつかない。かずさにだけは誠実でいる。つまり、かずさ以外には嘘をつくこともある、と。次にようやく冬馬曜子の居場所を掴む。そして説得のひとつでもしてやろうかと思っていた春希だが、まさかの白血病を罹患していることを知らされる。冬馬曜子はかずさとはもういけないことを伝え、かずさと日本にいてほしいとほのめかした。かずさの世界には春希しか頼れる人がいない。そんなことを言われると、春希は感じる。かずさのために動く理由ができて、よかった。それと、かずさのために動くとなると、また雪菜を裏切る。それだけじゃない、みんな、自分が今いる世界もろとも裏切る。とりあえずは、かずさのコンサートが一番と考え、心配させないよう冬馬曜子の容態は嘘をついてごまかす。が、それもすぐにバレてしまう。実の母親の変化をかずさが気づかないはずがない。それだけではなく、小木曽家の雰囲気が、最早後戻りできないほど円満になっていく。さらに派生して、武也たちにも伝わり、あろうことがかずさの前で雪菜との婚約を祝われてしまう。春希の本心とは違う方向に事態は動き、しかもその事態をかずさが知ってしまう。かずさの世界から春希までもが去ろうとする。かずさは傷ついて、春希に祝福を送ってしまう程混乱した。ここのかずさは、見ていて本当に胸が痛かった。同情しないわけがない。このまま野ざらしにしておくと死んでしまいそうだった。そんなかずさをみて、春希は、決意する。かずさと共に生きる未来を。雪菜との未来を消す選択を。ここで私は「あぁ、このルートこそがWHITE ALBUM 2であり、ここまで絆を紡いできた理由なんだ」と感じてしまった。ほんの少しのワクワクと、大きな恐怖を抱えて私は画面をクリックしていた。

 ここからが地獄。逃避行とか駆け落ちみたいなそんな安っぽいものじゃない。今まで積み上げてきた信頼、関係、友情。大切な人との繋がりをひとつひとつ、断ち切ること。かずさが好きだからという理由で、これまでの選択を裏切る罰を受けること。大多数を切り捨て、ちっぽけな幸せを得る。自分のためというより、その人のために。こうしないとかずさが壊れてしまうから、なんて都合のいい言い訳でしかなく、俯瞰してみると自分から結婚を申し込んだのに取り消し、別の女のところへ行く男性。人として、社会人として、やってはいけない最低の行動。近くで見ると、五年間嘘で塗り固めた気持ちを唐突に捨てて、五年前と同じ過ちを犯す男。かずさからの目線以外、なんとも下劣な人間に見えてしまう。けれど、仕方がないのだ。かずさが一番で、それ以外は二の次。優先順位に従っただけだ。

 雪菜の誕生日祝いの埋め合わせで、雪菜とはもう一緒にいられないことを告白する。今までみたいに応援されることはない。だってその選択は春希の幸せは保証されていないから。かずさのことを第一に捉えている選択だから。また仲間外れ、それも五年前と同じ構図。辛さは五年前の何倍もある。もう取り返せないかもしれないから。五年のアドバンテージがあってもまた行ってしまう、そんなの耐えられない。その後、職場で浜田さんに怒鳴られる。後戻りできないことを実感する。本当に壊れていってしまう。柳沢と依緒に呆れられる。今までどんなに失敗したって、彼女らは春希は雪菜の味方だという前提があったから、見放したりしなかった。けれど、もうそうじゃない。どんな理由があってもやってはならないことをやってしまった友人なのだ。高校からの付き合いで、お互いを信頼していて、これ以上に無い良い仲間なのに、こんな言葉をぶつけられるなんて...。武也もかずさとの関係を応援することはなく、雪菜とよりを戻すことを提案する。でも、そんなことはもうできない。今雪菜を呼んでしまったら、それこそかずさに後戻りできない。そして、かずさはどうなるのかわからない。だから断る。親友を裏切り、親友に別れを告げる。これ以上にない苦しみ。closingではあれだけ助けられて、もう何があってもこの絆はなくならないと思っていた。でも、そんな絆は消えた。自分で消してしまった......。次の日には雪菜の家族にも告げる。雪菜との婚約を取り消すこと。それも、他に好きな人ができたから。あの五年間は何だったのだろう。あれだけ思い出を重ねて、雪菜と生きて、将来を誓い合ったはずなのに。それをどうして裏切らなければならないんだ。しかし理由は明確、それ故に残酷。一番愛していた人を忘れられない、北原春希というのはそういう人間なのだ。もちろんそういうルートを選択したのは紛れもなく自分であるから、春希だけじゃなくプレイヤーの意思も入っているのだが。こういうめちゃくちゃ展開に、納得できる理由を持ってこれるこの作品はなんとも度し難いといいたいのだ。

 小木曽家に別れを告げた後、なんとあの松岡から飲み会に誘われ、行ってみるとどうやら真の送別会だったらしい。ここがまた心に刺さってしまう。大人の人達はすでに北原春希という人間を理解している。なにか理由があってこういう行動をしている、サボりたいとか、そういうわけじゃなく、誰かのために行動を起こしていることを知っているのだ。その行動の内訳を聞いていないからこそ、こうして見送られるのであった。ある程度心の距離があるからこその理解。春希には、それは表面上はあまり喜べることではなかったけれど、内心では、人の温かさに触れられて嬉しい気持ちがあったと思う。ここで私はもう何度目かもわからない涙を流した。ホワルバ2は落としてから上げてくるのだが、その上げるときがなんとも皮肉交じりだったり、辛いときもあるんだけど、人のぬくもりを確かに感じるときでもあるから、目頭が熱くなってしまう。一方その裏ではかずさと雪菜が落ち合っていた。あの時は一言も交わすことなく別れてしまった。だから今度は少しでも会って話して納得させて、春希の負担を減らそうとしたのだろう。でも雪菜にとっては逆効果である。雪菜は余計心を痛める。もう壊れてしまった。春希の一番近くにいたから、他の人より傷ついた。introductoryとclosingでのトラウマをことごとく再現する。本当の悲劇のヒロインになっていく雪菜に、心底胸が痛かった。申し訳なく思う資格なんかないのはわかっている。雪菜の人生の半分を壊したのは自分自身だから。それを見てしまったかずさは、償いをしなければという焦燥感に駆られてしまう。どんどん壊れていく。かずさ以外は最悪な方向へと引きずられていく。あの時した決断はそれほどまでに重い決断だったのだと肌で感じた。

 そんなこんなで何もかもをぶち壊しにして、最後のコンサートが始まろうとする。ここで雪菜がなんと交通事故にあう。春希に助けてもらえる理由ができた。しかし、ここで雪菜は逃げ出す。今このことを知られたらコンサートに響いてしまう。春希の裏切りをぶち壊してしまう。だから逃げた。ここで春希にすがってもかずさと春希は幸せになれない。だったら、自分の足で歩けるなら、自分の足で歩く。雪菜が腹を括った瞬間だった。一度は自分も人生を壊して2人についていこうとした。でも自分には無理だった。周りに人がいなくなることに耐えられない。幸い、まだ完全に断ち切ったわけじゃない今からでも取り返せる領域にいる。なら自分はここに残ると雪菜は決断したのだと思う。

 コンサートは盛況に終わり、あとはウィーンに帰るだけ。日本に別れを告げるだけ。日本と北原春希の繋がりを断ち切るだけ。空港で新しくできた母に見送られる。最初で最後の冬馬家の団欒、寂しい。冬馬家に名を連ねるとは、天才と生きるということはこういうことなのだ。理解してくれる人が少ないから狭い世界で暮らすしかない。そして、飛行機に乗る。離陸する。やがて様々なことを思い出す。全てけりを付けたはずなのに、いや、だからこそけりを付ける前の幸せを噛みしめてしまう。決して後悔はしていない。未練も何もないけど、自分の心にぽっかり穴があいたようなそんな気持ちになる。この穴が早くかずさで埋まればいいのに、そう思う。

 エピローグでは、春希のギター、かどうかはわからないけれど、雪菜の弾き語りのビデオレターが流れた。本当にまた歩き出せてしまった。春希がいなくても、雪菜には周りの人との繋がりがあってしまった。めでたいとも辛いとも言い切れない、そんな感情が心に浮かんだ。歌を捨てずに、春希を忘れずにいてくれている。五年前、ではなく七年前より結果的には軽症ですんだのかな。雪菜だけは俺たちをまだ信頼して見放したりしていないのかな。とか思ってしまった。皮肉としては百点満点だ......。うぅ。なんだこの余韻は、なんなんだよ。喪失感と満足感、これでよかった...のか、という思いが押し寄せてくる。お互いを思っての行動が、お互いを傷つけて。大事な人を大事にしようとするから、大事な人を傷つける。いいこととは言えないけど、悪ではない。この作品はこういうことが本当によく起こる。

 全体を通しての感想。こんなにのめり込むとは思わなかった。ここまで切実な作品は初めてだった。introductoryをプレイし終わったときは、「うわすげぇわぁ、ちゃんと考えられてるわぁ。こりゃ辛い」みたいに半分他人事で、まぁこの時点でもかなり心を抉られたんだが、のちの章に比べると序の口レベルの展開だった。深く考えられているが、心に入り込んでいるかと言われれば微妙、めちゃめちゃいい作品という印象だった。しかし、closingでは形相を変える。選択肢が出てきやがる。プレイヤーの意思が入りこむ余地ができ、徐々に春希の意思とプレイヤーの意思が重なる。最初は「雪菜しかおらんやろ!」っていう風に。そこで見事雪菜ルートをクリアする。雪菜と苦楽を共に過ごし、introductoryの時の何倍も物語に入り込んでいた。それから不意打ちのcoda。もうこれ以上俺をいじめないでくれ...やっと幸せを掴み取ったのに、それを奪い取る気か...。となり、最初は雪菜ルートに行く。幸せすぎた。何もかもが円満に終わって、満足してしまった。いいや、他のルートに行きたくなかっただけかもしれない。とりあえず、codaから目をそらし、closingの他のルート回収に行く。そうすると、胸が痛いのだ。closingはこれ雪菜ルート以外地獄や。最初から彼女いるギャルゲみたいなものなのだ。でも、ルートに入ったら入ったで、千晶とか小春に魅力感じちゃうし、もうどうすればいいのかわからなかった。それぞれいろんな思いが錯綜したエンドだったが、途中の雪菜フラグを折るのが見ていられなかった。そして逃げるようにintroductoryをやる。そんで、辛くなる。かずさを思い出す。codaをやる。かずさnormalルートに行くと、あぁ、幸せじゃないけど、幸せなのかなぁ。あの時春希はかずさを深く愛してやれていなかった。その未練が果たされていく。ダメだなと思いつつ、最高だなぁと思った。傍から見たら、ひっどいカップルだけど、それでいいんだ。なんて思った。ノーマルエンドは相変わらず記憶にあまり残らなかった...申し訳ない。いやだってこの後のかずさtrueルートの記憶が強すぎてですね...。あれこれやってきて、最後のルート。これで本編は終わりかぁと思いつつ、かずさを選ぶ。そして、これまで培ってきた全ての想いが、散っていく。失ってから初めてわかるとかよくいうけど、まさにその通りだった。失うって思っていたより辛かった。好きな人のためなら耐えられるとか思ってたけど、無理だった。超つらいじゃん、もう逃げ出したいよ。あんなに仲良くしてたのに、ほぼ家族みたいだったのに、すごく信頼されてたのに...なくなっちゃった。いやもうお手上げですよ。春希だけでなく、私の心も刈り取られていった。はぁ、これからどうやって生きていけば...そうだ、特典をまだ開封してなかった、ラジオCDもある。アニメ版もある。まだ、生きていける。それが終わったら...なんてことは考えない。考えたくない。今はこの穴を埋めたいんだ...。

 以上、私の思いの丈を載せた文章でした。本当にプレイしてよかった。辛いけど、一番心を通わせた作品だった。これからも応援してます。(何を?)とりあえず、この作品の価値はそこら辺の芸術作品の何倍もあるってことを俺は主張したい。もっといろんな人にこういう作品をプレイしてほしいなぁ...。

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