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『電子的熊猫遊戯症状3』

「どす、ばす、とす、どす、ばす、どす、です」
京都人がいるわけではない。まして、相撲取りなど近所にいるわけがない。未だ、パキシルの離脱症状は止んでいない。
一応、朝にも服用したのに、だ。
相変わらず耳を塞ぐと、『電子的熊猫遊戯症状」はなくなる。パキシルの血中濃度が上がるのを気長に待つしかないのか。サンタクロースが野外でサンドバッグを叩き続けている。
「どす、ばす、とす、どす、ばす、どす、です」
最後の一発は必ず「です(death)」なのが気になる。丁寧なのか、乱暴者なのか。サンタクロースの謎だ。
パンダは全頭四川省に帰国したのかも知れない。朝以降見かけていないからだ。

この状態で明日『盲腸癌』の術後6カ月検診の結果を聞きに行かなければならない。私は冷静に考える。この私が置かれた状況は、人によっては発狂するのではないかと。しかし、私の本質はドラえもんが未来から助けに来ないパターンの、のび太くんだ。昼寝をすればいいのだ。昼寝をすればだいたいの事はうやむやにできるのが私のチャームポイントだ。
「どす、ばす、とす、どす、ばす、どす、です」
サンタクロースのサンドバッグ打ちを、「チバ、アベ、チバ、キュウ、ウエノ、アベ」にしてしまえばいい。
『電子的熊猫遊戯症状』を、ミッシェルガンエレファントの大音量でかき消してしまえばいいのだ。そして、私は昼寝をするのだ。

追記。
再服用から30時間が経った。
『電子的熊猫遊戯症状』からやっと抜け出せそうだ。
離脱症状期間中はほとんど横になっていた。いま、「私は帰って来たぞ感」で満ち満ちている。しかし、帰るべき場所は此処なのだろうか。そんな疑問も抱えている。

1 抗うつ薬と睡眠薬を飲み続ける。という選択肢の帰る場所。
2 離脱症状を克服して、減薬から断薬に成功した。という帰る場所。
3 離脱症状を克服できずに『まぼろし』と時々会話するようなイタコ状態 をつづけていく。という啓示場所。依り代になり、神に成りすます。
4 つるつるやわやわのうまれたばかりの姿に退行していく。という誕生の場所。甘えん坊になり、赤ちゃんに成りすます。

私は、結局どこかへ戻らなくてはならない。それではつまらない。
私は、『帰る場所』と『普通とはなにか』を突きつけられている。進化した先にも、退化した先にも『帰る場所』はあるのだろうが。
もう、『帰らない』という選択肢もある。じっさいには、もう『帰れない』が正しいのだろう。『帰ったことのない場所』に『お菓子の家』を建てて暮らす。そんな選択肢もある。

実を言えば、私は知っている。『帰る場所』とは、あたらしい場所なのだ、と。在りし日に帰る場所はない。在りし日と、いま在る日のブレンドが、私の帰る場所なのだ。ただ、ときどき、こうやって駄々をこねて遊んで見たいのだ。




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