『なんのようだい』
雨の匂いの思い出などないけれど
けれど、なつかしく胸の内から芽吹いている
どこのだれだかしらないけれど
けれど、けれど、なんのようだい
胸の内から紫陽花が咲いた
口から紫陽花が咲いた
尻からも咲いた
穴という穴から咲いた
胸がいっぱいであふれた
「もろもろもろもろもろもろもろり」と咲いた
私は紫陽花の路を生んだ
蛍と連れずれに北の山を越えたところで
ふいに、途方に暮れた
路をわすれた
雨の匂いの思い出などわすれたほうがいい
そうに、きまっている
けれど、けれど、なんのようだい
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