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『12時18分』

12時18分に目が覚める予定であった。
お雑煮の匂いがした。或いは、昆布巻きの匂いがした。醤油ベースの汁にだしの効いた、年の瀬らしい料理が生まれているようだった。私は、謎の時計職人で、謎の文字を作っていた。12時18分まで粘って『謎時計』を完成する予定を立てていた私の心は挫かれた。

12時18分には何の意味もない。そこから動く予定もない。それが『謎時計』のよいところだった。急かされることがない。待たされることもない。12時18分の世界があるだけだ。

安心していい。12時18分しかないのだから。今日は一日中、2023年12月30日12時18分なのだから。そうして過ごそう。私は大掃除を終えたきちんとした人間だ。
私には、2024年1月3日が終わるまでは12時18分しかないのだ。きちんと大掃除を終えた人間の基本的な権利だ。

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