NFT Lootの持つ本当の可能性

 私はSFが好きなので、ビットコイン、ブロックチェーンの存在は早くから注目し、それの持つ投機性などどうでも良く、社会変革を実現する技術として期待していた。もちろんそれはまだ起こっておらず、各国政府は、規制を検討するか、静観するか、アレルギー反応を起こすかである。NFT?新しすぎる。まだ誰もどういう態度を取ればいいかわからないようだ。

 もちろん私だってわからないが、一つ、可能性を考えてみたりはする。


○NFT Lootはそれ自身に由来しないものを前提とするべきではないのでは?

 私はテキストタイプのNFTを考案しようとしていて、それはもちろん人間が古来より環境との相互作用で分散的に作ってきた自然言語由来であるから、厳密に言えばこの理念を実現できてはいない。しかし、ファンタジーゲームの設定を前提とするLoot for Adventuresよりかは徹底されていると自負している。つまり、詩文の一部や新しい言語の最小単位などをNFTにすることで、分散型でボトムアップというLootの設計思想がより実現できるのではないかと考えているのだ。


○NFT Lootの価値は、誰かが決めるのではなく、自然に決まるべきだ。

 Loot for AdventuresのNFT一つ一つには、ファンタジー世界観から産み落とされ、その前提の中で機能する単語、概念、元ネタが埋め込まれている。ランダムに作るか、レアリティを設定するか……。それはLootの最初の発案者に委ねられている。そしてその本質的な価値は、NFTを作った人間ではなく、購入し、コミュニティを作り、価値を付与し、新たに創造した人間に委ねられる……。だがちょっと待ってほしい。それは本当だろうか。そもそもにおいてビルトインされた前提や目的が本当にないと?


○既存NFTは最終的な価値の創出に至らないのではないか

 Loot for Adventures、animeLoot などは、最終的な目的を、その世界観を表現したゲームやアニメの作成においている。まだ一度も実現していない。流石に数年経たないと結果はわからないが、そもそも完成するのだろうか? ゲームやアニメ……発想はいい。しかし魅力的ではない。少なくとも私にとっては。全員で協力して作り上げる。理念はいい。だが実現しないだろう。ゲーム、アニメ。それらは統括者が全体を認識しつつ責任とガバナンスを持って調整しながら組み上がっていくものだ。それが存在しない分散型システム? 結構なことだ。全く新しい。成功するかもしれない。しないかもしれない。だが私は多くの先例を知っている。NFTもブロックチェーンも知られていないはるか昔から、人々は匿名掲示板やフォーラムや、もっと古くは学校の休み時間に集まり、参加者みんなが平等に、分散的に、ゲームや漫画やアニメや雑誌を作ろうとしたものである。その中に成功例はあったか? もちろん中にはあるのだろうが……基本的に誰かが責任を持つ、つまり、全体んみたいしてガバナンスを発揮するという中央集権的な仕組みができなければそれは極めて脆い物にしかならないだろう。ましてや最終的に成果物を提出するなど、それ自体が奇跡に近い。せいぜい、個人がひとつのNFTからいくつかのパーツを作って、それらが少し他の人のパーツとシナジーを起こすか起こさないかで終わるだろう。というかそもそもかこれほどにまで革新的なNFTアイディアが生み出すものが、ネット上にいくらでも転がっているシェアードワールド企画の新たな一つでしかないなど、犯罪的でしかないのでは?


○ NFT Lootはもっと新しいものを創出すべきだ

 既存のものを作ろうという発想がそもそも間違っている。上の文章では、

1、既存の発想、既存の設定、既存の世界観を前提とすることへの、分散型思想の非徹底という点からの疑問

2、最終的な成果物が本当に提出されるのかという実現性への疑問

3、最終的な成果物が新しくない、既存の物に新たなひとつ加わるだけなのでは、という疑問

 を提起してみた。NFT Lootはとてもとてもセクシーなのに、そこに乗っているもの、それが作り出すものがセクシーではない、という落胆。なので私は、代わりにもっと新しいものを提案する。


○ NFTによるまったく新しい言語創出の可能性

 グレッグイーガンの『TAP』という小説を知っているだろうか。そこでは、新たに創出された人間の感情を記述する言語が登場する。本当はもっと革新的な機能があるのだが、それを既存技術で実現することはできない。だが、感情の記述という部分は実現できるのではないか。私は当初、このようなNFT Lootを考案した。

7
A conversation like pouring water little by little.

8
The injustice of being overlooked is a sign of abandonment.

9
My relaxation shifts to you as I speak out.

10
The music inside of me is being dragged out.

11
Give me a bliss that is not celestial.

12
Give me a love that is not affection.

 これら英単語5から10程度の行をNFT Lootにして、それらを組み合わせたりそこから別の発想をしてもらったりして、詩や他の何かを作るプロジェクトだ。悪くないと今でも思う。まず詩文一文の価値は、流石に言語依然というどうしようもなく回避できない制約はあるものの、それ自体が他の世界観や設定や社会の中の位置づけなどに左右されない。NFTそれ自体とそれを見た人間の間で一対一で評価される、無前提の芸術だ。上にあげた一行で誰がどれを好きになるかは誰にもわからない。少なくとも作った時点でレアリティを設定することはできない。もちろん自信があるかどうかはあるだろうが。これら一行の価値は完全に見るものに依存する。価値評価を言語さえ共有できていれば、教養も前提も要らずに評価できるのだ。価値評価基準の分散を実現するものではないか?

○さらにSFめいた可能性

 ここまでなら、これらLootの最終的目的は、これまで人類文明がいくらでも作り出してきた詩文をつくり出すということになり、最終的成果物は詩になろう。これは最終的成果物をゲームやアニメにするよりもより実現可能性が高い小さな目標だ。これで満足してもいい。しかし私はこれをさらに押し進めたい。


 この画像に記述されているのは新言語のプランである。漢字四文字をおにぎりのようにぎゅっと凝集させただけの、まだあまりセクシーではない造形だが、言わんとすることは伝わるかと思う。表意文字の創出を考えてみたのだ。しかしそれをNFTでどう実現するか? というかNFTでなくてもいいんじゃないか? 勝手に創作ノートにでも書いてろ。わかる。それらの疑問はもっともだ。だが私はそれに回答することができる。次回のノートで詳しく述べたいと思う。


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