光れる空をつかみに

この前、仕事帰りにへとへとになりながら、高架の上の高速道路をひとり運転していた。空がでっかく広がり、ちょうど夕暮れ時の雲がまだらに去りつつ、まさにマジックアワー、そのまま光れる空に突っ込み消えてしまうのかもしれないと思った。

そしてなぜか突然、最近自ら逝ってしまった、あまり年の変わらない有名女優のことを思い出した。彼女は最後となってしまった家族との夕食の風景を、光のように穏やかに見つめていたのではないかと。

全てを持っているかのような彼女の突然の死を多くの人が驚いたし、その衝撃に、実は夫婦関係がうまく行ってなかったのではないかとか産後鬱ではなかったかなど、色々な憶測が飛び交った。

でも、人はその瞬間に辛いとか、直接的で明白な理由だけで死ぬわけではないのではないだろうか。ひたすらにもがき、ようやくそこにある幸福に辿り着いたとき、この先、また訪れるであろう悲しみや苦しさを、耐え抜くエネルギーを持てる気がしない。そう思うこともある。

私も多分に漏れず憶測を言ってるにすぎない。ただ、生きることも死ぬことも、長い時間の中に組み込まれ、もっと複雑だと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?