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腰痛解消かわら版 第1号


多くの人が腰痛で苦しんでいる

 近年さまざまな調査において約70%の人が腰痛に悩んでいるという結果がでています。この記事を読んでくださっているかたもその中の一人だと思います。私も20歳代の頃、腰が痛くて仰向きに寝れませんでした。上を向いて寝れたらどんなに幸せなんだろうと、夜布団に入る度に思っていました。理学療法士という仕事上、持病なんだろうなと半分あきらめていました。それが、あることをきっかけに腰痛をまったく感じなくなったのです。現在私は60歳代になりましたが腰痛はほとんどありません。何がきっかけだったのかについては別の記事で書くこととして、これから腰痛をなくし楽に動ける体を取り戻すための、ちょっとしたコツを紹介していきたいと思います。
 大切なことは、腰にとって良いこと・悪いことを正確に知り、悪いことをしないことです。それはちょっとした生活習慣のコツです。
 今回から、腰痛に関するさまざまな情報を紹介していきたいと思います。腰痛を理解する上で必要な基本的知識から、腰痛を予防するリハビリや日常生活での注意点などを掲載していきたいと考えています。
 一般のすべての方々に理解していただけるように、医学的専門用語は極力控えるか、詳しく解説を加えながら説明していきたいと思います。

腰痛日記をつけよう!

慢性の腰痛にお悩みの皆さん、「腰痛解消かわら版」などという美味しい名前の記事で申し上げるのは大変気が引けるのですが、現実の話としては慢性腰痛を克服するということは簡単なことではありません。これは、腰痛に限らずほとんどの慢性疾患に言えることではないでしょうか?
 しかしながら、真剣にその病気と向き合い、病気に関する知識を深め、日々努力して生活をしている方は少なくありません。そして、そのような努力をしている方は、病気を持ちながらも比較的軽い症状かあるいは、ほとんど日常生活に支障を与えないレベルで生活できている割合が高いということは、医療従事者としては周知の事実であろうと思います。これから一緒に腰痛を克服するためのアクションプログラムにトライしていくわけですが、今回は、まず最初にしていただきたいことを紹介します。
 腰痛に関する知識を深めることは重要ですが、まず、最初にしていただきたいことは、自分の体調を記録することです。日々変化する腰の具合や体調を記録する習慣をつけることが大切です。それらを観察し記録することで腰痛に対する意識が向上するとともに、体調の小さな変化に一喜一憂することなくトレーニングを続けることができるようになるでしょう。それでは、腰痛日記について紹介しましょう。

腰痛日記の記入例

 これは、以前作成した腰痛日記とその記入例です。この腰痛日記のシートは、一枚で1ヶ月記録できます。
 このような面倒な用紙をつくらなくても、最近は体重や体調を簡単に入力してグラフ表示できるアプリがありますので、その中から自分に合ったものを使っていただいたので結構です。
 もちろん、カレンダーやノートに書き込むのも簡単な方法です。

どんなことを書いたらいいのでしょうか

1.体重を記録しよう
 腰痛と体重の変化には密接な関係があると言われています。
「どうも最近太りだしてから腰が痛くなってきた。」などというような訴えはよく耳にします。体重をベストの状態に維持することは、腰痛をコントロールしていく上で大切なことです。したがって、毎日変化する体重を測定し記録することは、腰痛管理を行う上で重要なのです。できれば毎晩入浴後など、決まった時間に同じ条件で測定するようにしましょう。現在、肥満傾向のある方は、これから体重を減少させていくことを頭に置いて記録しましょう。

2.腰に悪影響を及ぼす労作をしたか
 次に今日1日を振り返って、腰に悪いような仕事や動作をしたかどうか記録して下さい。

3.薬物服用の有無について
 腰の痛みを緩和させるために薬などを服用したかどうかを記入して下さい。湿布なども薬と

4.腰痛の程度について
 今日の腰の痛みの程度はどのくらいだったかき録します。まったく痛みがない状態を「0」とし、これまで感じた最大の痛みを「10」として、今日の腰の痛みはどのくらいであったか、0~10の整数で記入して下さい。おおまかな印象で結構です。

治療効果とその現れ方

これから腰痛とうまく付き合うためのいろいろな方法を紹介していくわけですが、自分にとって何が良かったかを適切に把握することが大切です。次は、この治療効果について考えてみましょう。

治療効果を考える際に重要なことは、即時効果と長期的効果は分けて考えた方が良いということです。
 即時効果というのは、治療直後や治療終了後数時間以内に現れるような、治療の後短時間に得られる効果のことです。例えば
「腰が痛いのでマッサージをしてもらったら、その後とても楽になった。」
「今日は、仕事中コルセットをしていたら荷物の運搬時に腰痛を感じずとても楽だった。」
 などが即時効果といえるでしょう。

一方、長期的効果というのは、ある治療を長期間継続することで得られる効果であり、少なくとも数週から数ヶ月の間観察する必要があります。例をあげると
「腰椎の安定化練習を毎日続けた結果、6ヶ月後、下肢痛が消失し、筋力が回復した。」
「有酸素運動20分間を週に2回、6ヶ月間実施した結果、腰痛が改善した。」
 などがこの長期的効果といえるでしょう。
 一般的に痛みを伴う疾患の場合、即時効果を重要視する傾向があります。これは、痛みを早くなくしてもらいたいという人間のごく自然な気持ちの現れだと思います。

腰が痛くなった時には、歩くのもつらく、腰をかがめた姿勢になってしまいます。この姿がこっけいに見えるのか、周囲の人に笑われたりします。また、夜は痛みのため良く眠れず、とても人に言うに言えないつらさがあります。とにかく早く痛みをどうにかしてほしい。これは腰痛を経験された方なら、どなたも共感される心理ではないでしょうか?
 従って、痛みの激しい急性期では、疼痛を緩和させる治療が最優先されます。この際は、即時効果の期待できる治療法を実施します。しかし、ここで考えていただきたいことがあります。それは、これらの症状がある程度落ち着いた慢性期の治療についてです。痛いからといってマッサージなどに通ったり、コルセットにいつも頼ってしまうような即時効果のみを中心とした治療を繰り返していたのでは、いつまでたっても腰痛を克服することはできないでしょう。楽で気持ち良くしてくれる「癒し」の誘惑に負けず、楽しく積極的に運動し、腰痛を治してみませんか?
 痛みがひどくなった時だけ痛みを紛らわせるだけではなく、腰痛の発生を予防する長期的視野に基づいた治療を続けることが最も大切なことだと思います。

右肩上がりのようには改善しない

リハビリを開始すると、多くの方は、右肩上がりの効果や症状の改善を期待されるようです。運動をすることにより、毎日少しずつでも痛みが軽くなり、できなかった動作ができるようになり、体調も少しずつ良くなっていくことを想定しています。しかし、実際の経過は、それとは異なったパターンを示すことが多いようです。
 近年、地球温暖化現象による気温の上昇が問題になってきていますが、よく観察すると、年によっては前年より著しく低くなった年があったり、いくつもの変動を繰り返しながら上昇しているのがわかります。腰痛の症状もまったくこれと同じようなパターンを示します。少し良くなったかと思うと悪くなり、今度こそ良くなってきたと思っているとまた悪化してしまう...
 このように変動しながら長期的には改善してきている。このような経過をたどるのが実際の治療経過であるということを常に頭に入れておいていただきたいと思います。腰痛日記の記入例を見ても同様のことが伺えます。体重は増減を繰り返しながらゆるいカーブを描きながら減少してきています。腰痛日記を書くことで初めて理解できることですね。
 しかし、実際にリハビリテーションを行っていると、症状は変動しながら改善していくということは十分理解できていたとしても、不安になり混乱してしまう方々が多いようです。特に、リハビリを開始し、やる気が充実し始めた時、やや症状が改善し、日常生活が少しだけ楽になってきて気持ちが明るくなりかけた時などは、治療する側にとって要注意なのです。昨日は、明るい声で「腰の安定化がうまくなったので、日常生活が楽になってきました。」と話していた方が、翌日は、暗い声で「もうだめです。もとに戻ってしまいました。」と人生どん底という気持ちになってしまいます。症状の変化により一喜一憂してしまう自分の心をコントロールすることの難しさを教えられます。症状の変化に一喜一憂する気持ちや、楽で受身的な治療に頼ろうとする悪循環の渦巻きに近づこうとする気持ちに打ち勝ち、根本的な治療に一緒にチャレンジしていきまし
う。

以上、今回は、腰痛日記と治療効果について紹介しました。腰痛日記は、このような日々の痛みや体調の変動に迷うことなく運動療法や日常生活の習慣を正しく維持するためのよきパートナーになってくれると思います。是非明日から記録していきましょう。

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