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腰痛解消かわら版 第3号


今回は、どんな姿勢や動作が腰部に悪影響を及ぼすのか、どうすれば腰部が安定するのかについて紹介したいと思います。

腰部に負担のかかる姿勢と動作

興味ある研究結果を2つ紹介しましょう。

(研究その1)
 2種類の姿勢で比較しています。(下の写真を参考にしてください。)
・腰を伸ばし、膝を曲げた姿勢
・腰を曲げて膝を伸ばした姿勢
 これらの姿勢で20kgの荷物を持ち上げた時の第3腰椎椎間板の内圧を測定しました。
結果
 腰椎を前に曲げた姿勢では、腰椎を伸ばした時に比べて、内圧はなんと約2倍以上に高まりました。

(研究その2)
 さまざまな姿勢で腰椎椎間板にかかる圧力を調査しました。
結果

仰向きの姿勢が圧力はもっとも小さくなりました。座位で体を前に曲げた姿勢が非常に大きくなっています。興味深いことに座位よりも立位の方が圧力は小さいようです。介助する際には、立位で行うことが殆どですが、立位では、体を前に曲げた姿勢で圧力が高まり、重量物を持った状態ではさらに圧力が大きくなっています。ここでは、紹介していませんが、体を前に曲げた状態で体をねじるとさらに圧力が上昇することが、明らかになっています。
以上の実験からいえることは

腰を曲げてねじらないこと!


「腰を曲げて」と一言で表現しますが、腰の曲げ方には大きく2種類に区別できます。1番目は、左図のように股関節は、伸ばした状態で腰椎を前に曲げる方法で、2番目は、腰椎は伸ばしたまま股関節を曲げるやり方です。日常の生活ではこの両方を組み合わせて動作していることが多い為、今どこを曲げているのか、あまり意識していないと思います。もちろん股関節と腰椎をいっしょに曲げたり、両方を少しだけ曲げたり、その組み合わせはさまざまです。
 しかし、腰痛を予防する為には、腰椎の生理的カーブを保持するということが重要になりますので、腰椎や股関節を意識して別々に動かす練習をしておくことが大切です。


次のグラフは、物を持ち上げる際、腰椎屈曲位と中間位での多裂筋等の筋活動や脊柱への圧迫力、剪断力を調査した結果です。腰椎を曲げた状態では、中間位と比較して多裂筋等の筋活動は極めて少ないことがわかります。これは、腰椎を曲げた姿勢では、棘間靭帯などが緊張して固定されるため腰椎の安定化筋はほとんど働いていません。一方、中間位では、多裂筋などの腰部の安定化筋が高いレベルで活動し腰を保護していることが伺えます。
 また、脊柱への圧迫力は、腰椎を曲げている方がやや高い程度ですが、剪断力(脊椎を横にずらそうとする力)は、数倍以上大きく、極めて危険な様子を示しています。
 したがって、腰椎を中間位(生理的彎曲の状態)に保持し、介助動作をすることが腰痛予防の観点から重要であることがおわかりいただけたと思います。

<ポイント>
腰をかがめた状態で介助しない!
腰を曲げ、持ち上げながら捻らない!
腰を伸ばした正しい姿勢を保持する!


腰部の安定化とブレイシング

1.ブレイシング( Bracing )とは?

腰痛予防においてブレイシングとは、腹横筋・内外腹斜筋などの深部腹筋群及び多裂筋・回旋筋等の棘筋群を同時収縮させ、腹部を引き締め、腰部を安定させることをいいます。腹部、腰の深部の筋肉を一緒に力を入れることで腰部がグラグラせず固定され、安定させることにより腰痛を予防することができます。

2.ブレイシング( Bracing )の練習方法

正確にブレイシングを体得するためには、段階を踏まえたさまざまな練習が必要です。必要な場面で、即座にブレイシングができ、腰椎を安定させることができなければほとんど使いものにならないからです。ここでは、その練習のポイントを紹介しましよう。

(1) 腹横筋の筋収縮感覚の習得 最初に腹圧を上げるために必要な腹横筋の筋肉を収縮させることを覚えます。腹横筋や内外腹斜筋の活動レベルを上げるためには、一般的に行われている起き上がり動作(いわゆる腹筋運動)のような練習は適応ではありません。仰向きに寝た状態での、頭や上半身を前に曲げる運動では、腹直筋の収縮が中心となり、腹横筋等の強い筋収縮は期待できません。 腹横筋を中心とした腹筋群の筋収縮を引き出すためには次のような方法で練習します。 まず仰向きに寝て膝を立てます。次に両手で側腹部を内側方向に圧迫し、それを横に押し広げるように腹部に力を入れます。腹部への力の入れ方がわかり難い場合は、頭部を、わずかに上げるようにして、腹部の筋の収縮感覚を学習します。その際、息を止めないように注意します。腹部が平らになるように力を入れるのがコツです。うまく力を入れられるようになったら会話しながらできるように練習しましょう。 仰向きでの腹横筋の収縮練習

(2) 多裂筋、回旋筋の筋収縮感覚の習得
 腹横筋に力を入れることが自由にできるようになったら、次に腰椎のすぐ近くに付着している小さいけれども大切な筋肉である多裂筋や回旋筋の練習をします。ます。骨盤を軽度前傾させる練習を行います。わかり易く表現すると「ドナルドダックのようにおしりを軽く突き出しましょう。」そして、「肛門をしめる」又は「ウンチを切るように力を入れてみましょう。」といった感じでしょうか?

(3) 坐位や立位での練習
 これらの筋肉の収縮を坐位や立位などさまざまな姿勢でできるように練習をおこないます。練習の手順を以下に示します。

① 腹を横に広げるように力を入れ、腹横筋を収縮させます。
② おしりをドナルドダックのように軽く突き出し多裂筋を収縮させます。また、肛門をしめるように力を入れます。
③ 左右の肩甲骨を内側に寄せるように力を入れます。
これらが坐位や立位など、どのような肢位でもできるように練習します。

(4) 実際の作業場面での練習
 ブレイシングをしながら物を持ち上げる運動や重い物を移動する動作など、実際の場面での応用を繰り返し練習し体得します。

ブレイシングの基本肢位

今回は、介助や作業をする際、腰痛を予防する上で必要な基本的知識を中心にご紹介しました。どのような姿勢や動作が腰に負担をかけるのかご理解いただけたでしょうか? 
次号も盛りだくさんの情報をお届けできたらと考えております。次号もよろしくお願いいたします。

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