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ウサギ小屋なんて許さない

欧米人は日本の住環境を「ウサギ小屋」と蔑称することがあります。
ウサギ小屋」とは、落語家林家三平の「どうもすいません」や今(当時:1966)若者の間で使われる「超ベリバッド」などと同じような流行語です。

「「チョベリバ」1990年代に10代のギャル(これも死語ですね)を中心に流行した言葉。超ベリーバッド(Very Bad)ということで、「最悪」という意味です。反対の「最高」を意味する言葉として「チョベリグ」も流行しました。これは超ベリーグッド(Very Good)の略です。」

この言葉を取り上げたものとして、中国新報の十月24日に掲載された「流行語五十年・うさぎ小屋で小さな幸せ」という見出しの文を次に紹介することにします。

『北海道の国鉄広尾線の愛国駅から幸福駅行きの「幸福切符」がブームとなり、ピンからトリオの「女のみち」などの「演歌」がはやったのも四十九年のこと。こうした小さいながらも幸せそうな生活を送っていた日本人の生活に対して冷水を浴びせたのが、五十四年に暴露された欧州共同体(EC)の内部資料「対日経済戦略報告書」である。日本人は「ウサギ小屋」に住む「仕事中毒者(ワーカホリック)」であり、重役たちは会社が自分を必要としていると思えば休暇を取ることをあきらめる日本人の感覚で言えば、豚小屋と称したつもりだろうが、それが、「ウサギ小屋」と表現されたために見事に流行語として定着した。
その前年の五十三年には「窓際族」という流行語がある。同年の一月の日経新聞のコラムの中で、高度成長期に採用されて中高年に達した年齢層の人たちのうち、企業のラインの管理職から外されたオフィスの窓際にデスクを構えるミドルたち、と定義されたこの言葉は、その状況があまりにも的を射ている為「壁際族」「ドア際族」「ベランダ族」といった類語を生みながら定着していった。さらに忘れていけない言葉は、同じ年に登場してきた「嫌煙権」は確率したと言える。これほど定着度の良い言葉も珍しい。』

これらの記事も一つの見方をすれば、日本人は、欧米人が「ウサギ小屋」と蔑称されていると心の隅で認めながらも、日本の住居環境の常識であると、捉えているのではないでしょうか。

前掲の新聞のタイトルは「ウサギ小屋で小さな幸せ」です。

小さな家だから、小さな幸せしかないという解釈ですと、「気持ちよい居住空間」は家の大きさによって決められることになります。しかし人の「気持ちよさ」の要素は、決して空間の大小などという比較相対によるものではないはずです。
日本人は四季をもち、その中で培われた日本人にしかない特有の感性を、空間の大小で判断することはできません。
もっと深遠で微妙なものが存在します。

「侘(わび)」「寂(さび)」などがあげられます。

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花を見て「美しい」というのと、「きれい」というのでは「意味」が違うことは日本人であればなんとなくでも理解できることだし、わかっていることだと思います。しかし、これを英語に直すと「ビューティフル」の同一単語になってしまいます。この微妙な感性は、日本人にしか理解できなかったものであり、欧米や中国にもない日本独特の文化として生まれたものです。
日本独特の理念を失いつつ、家を次々と建て続ける様を「ウサギ小屋」と蔑称したのかもしれません。

次回予定記事:「陽当たり重視の日本人」上 予定

建築家、家相家として「建物」と「生活」のあいだをデザインしてます。
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