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「遠景のバロック」 (Program Note)

☆2021年9月19日に大阪 Salon de ぷりんしぱる で開催の「遠景のバロック」公演のプログラムノートとして作成した文章です。

-- Program --

ゲオルク・フリードリッヒ・ヘンデル Georg Friederich Händel (1685-1759) :
 ・シバの女王の入城 (オラトリオ「ソロモン」HWV.67 第3幕 シンフォニア)
   The Arrival of the Queen of Sheba (Solomon HWV.67, Act III, Sinfonia
 ・チェンバロ組曲 第3番 ニ短調 HWV.428 (チェンバロ組曲集 1720)
  Suite III in D minor, HWV.428 (Suites de Pieces pour le Clavecin, Premier Volume, 1720)
   Prélude / Allegro / Allemande / Courante / Air & 5 Doubles / Presto
 ・リコーダーと通奏低音のためのソナタ イ短調 HWV.362 op.1-4
  Recorder Sonata in A minor, HWV.362, op.1-4
   Larghetto / Allegro / Adagio / Allegro

ドメーニコ・スカルラッティ Domenico Scarlatti (1685-1757) :
  旋律楽器と通奏低音のためのソナタ ト長調 K.91(L.176)
  Sonata in G major, K.91 (L.176)
  Grave / Allegro / Grave / Allegro

ディエゴ・オルティス Diego Ortiz (ca.1510-ca.1576) :
 ・レセルカーダ 第3番 “古風なパッサメッツォ” (「変奏論 第2部 1553」)
  Recercada tercera sobra tenores “El passamezzo antiguo” (Tratado de Glosas… II, 1553)
 ・レセルカーダ 第8番 “ラ・フォリア” (「変奏論 第2部 1553」)
    Recercada ottava sobra tenores italianos “La folia” (Tratado de Glosas… II, 1553)
 ・レセルカーダ 第2番 “現代的なパッサメッツォ” (「変奏論 第2部 1553」)
   Recercada segunda sobra tenores “El passamezzo moderno” (Tratado de Glosas… II, 1553)

ダリオ・カステッロ Dario Castello (ca.1590-ca.1658) :
 ソナタ第3番 (「現代的なソナタ・コンチェルターテ 第2巻 1629」より)
  Sonata Terza à due Soprani (Sonate concertate in still moderno, libro secondo, 1629)

ベルナルド・ストラーチェ Bernardo Storace (ca.1637-ca.1707) :
 チャッコーナ (「チェンバロとオルガンのための様々な音楽の森 1664」より)
Ciaccona (Selve di varie composizioni d'intavolatura per cembalo ed organo, 1664)

ビアージョ・マリーニ Biagio Marini (1594-1663) :
 ロマネスカ (アリア、マドリガーレとコレンテ集 op.3 1620)
Romanesca per Solo è Basso se Piace, Dorian Mode (Arie Madrigali et corenti, op.3, 1620)
  4 Parti - Gagliarda e seconda Parte - Corente

マルコ・ウッチェリーニ Marco Uccellini (ca.1603-1680) :
 アリア第5番「ベルガマスカ」(ソナタ、アリアとコレンテ集 op.3 1642)
  Aria Quinta, Sopra la Bergamasca (Sonate, arie et correnti op.3, 1642)

演奏者
 井上 佳代 (リコーダー)
 多武 和民 (マンドリン、マンドリュート)
 二口 晴一 (バロック・ファゴット、ドルシアン)
 中田 聖子 (チェンバロ)

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Program Note 「遠景のバロック」

 1685年は西洋音楽史において、特にバロック音楽に携わる者にとって強く刻まれた年で、この年に後期バロックの音楽家の代表として挙げられる、ゲオルク・フリードリッヒ・ヘンデル Georg Friederich Händelドメーニコ・スカルラッティ Domenico Scarlatti (そしてヨハン・セバスチャン・バッハ Johann Sebastian Bach も) が生を受けました。この二人は生まれた地から離れた所で活躍して人生を終えます。ヘンデルはドイツのハレ出身で、のちにイギリスに渡って帰化し劇場音楽の作曲家として活躍しますが、イギリスに渡る前にイタリアでオペラなどの劇場音楽の作曲技術を身に付けたと考えられています。D.スカルラッティはイタリアのナポリで生まれ、父のアレッサンドロ・スカルラッティAlessandro Scarlatti (1660 - 1725) をはじめ、恐らくガエターノ・グレコ Gaetano Greco (ca.1657 - ca.1728)、フランチェスコ・ガスパリーニ Francesco Gasparini (1661-1727)、ベルナルド・パスクィーニ Bernardo Pasquini (1637-1710) らから音楽を学んだ後、ポルトガルで王女マリア・バルバラの音楽教師となります。そして、スペインへ嫁いだ王女と共にD,スカルラッティもスペインに渡っています。本日のコンサートでは、同年生まれのヘンデルとD.スカルラッティの音楽を起点に遡り、彼らと縁があったイタリアとスペインの16世紀から17世紀の音楽でプログラムが組まれています。

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関西を拠点に演奏活動を行なっているチェンバリストhttps://www.klavi.com