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精巧 市場連動生産ストーリー(2)

精巧 市場連動生産ストーリー(2)

こんにちは近江です。

東京の両国に本社がある、Tシャツ、ポロシャツ、トレーナーなどカットソーアイテムを製造するメーカー精巧株式会社の代表です。

前回は、「アパレル業界の大量生産・余剰在庫」についてお話させていただきました。今回は、勘に頼って、過剰在庫を抱えることの怖さについて、実際の経験から身をもってお話しをしたいと思います。


◆古くからの業界商慣習とどんぶり経営への違和感

私は大学を卒業してから父が創業した家業のカットソーメーカーに入るまで
業界の仕事を知るために生地問屋に丁稚奉公として就職し5年間程働きました。

そこで見たのは古くからの業界の商慣習です。

決算期末になると沢山の生地を出荷して翌月には一度出荷したはずの生地が返品されてくるという光景でした。

同業者がお互いに売上を計上するために在庫のキャッチボールをしながら協力しあっていたのです。

しばらくすると、その生地問屋は資金ショートで経営破綻しました。

そんな信じられない経験をした後、家業に入って、すぐに目の当たりにしたのは倉庫に原反(染める前の生地)在庫の山でした。

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家業のカットソービジネスは当時メリヤス(莫大小)と呼ばれ、アパレルメーカーやアパレル問屋から製品受注をすると糸を買い、編み立てて生地にし(原反)、生地を染色し、デザインに応じてパーツに裁断後、縫製して製品にした上で受注先に納品していました。(フロー図を参照ください)

note-2フローチャート図


受注してから受注した分製品化して納めるのが仕事なのになぜか、行き場のない編み立て後の原反在庫が倉庫に山のように積まれていたのです。

なぜ、そんなことになっていたかというとメリヤスの漢字である莫大小の字のごとく、メリヤスつまりカットソー生地は引っ張れば伸び、縮むこともあるため、ピッタリ、計算通りに納めることが難しかったからです。

製品注文をうけると、概算で足りなくならないように多めに糸を買って、編み立てる。いざ、染色して製品化しようとすると、編み立て生地(原反)が多いことに気が付くので染色前にストップする。

多く編み立てた生地のコストは製品原価に上乗せしてあるので製品を納めれば回収できるという理屈です。

しかし、当時、年々増える受注高に対して、見込みで原料を仕入れるために借入金が増え、実際、決算を締めてみると利益は出ているもののわずかな薄利という状態。

そんな状況を見ていて、大学時代、原価計算が専攻だった私は、原反在庫がたくさんあっても本当に採算が取れているのかに関心を持ちました。

調べ始めたところ実際は、採算が取れている製品と取れていない製品のばらつきがひどく、実際には管理が出来ていなかったのが正直なところでした。

借入金が膨らみ、薄利多売、沢山の行き場のない在庫を抱える・・・

いわゆる「どんぶり経営」です。

◆脱どんぶり経営へ

そこで私が取り組んだのは、受注した製品ごとに個別原価と個別費用を計算し、利益がどれだけのこるかを計算する個別P/L(損益計算書)でした。

これにより、まず、生地の過剰発注を抑制することができました。

次に、過去の原反や当初個別生産しても多少残ってしまう原反を独自に製品化して、在庫買取業者(いわゆるバッタ屋さん)に買い取ってもらい現金化しました。

3年がかりで、原反在庫と銀行借入を相当減らすことができました。

しかし、まだまだ、儲かっているという実感はありません。

例えば、試作品はつくるものの、本生産に至らない商品のためにつくってしまった見本反(試作品作成用の生地)は残りますし、経済が右肩上がりの時はよいですが、安定成長に入ると、口約束で製品をつくっても難癖つけて引き取らない取引先も少なからずありました。

このままでは儲からない、本格的な効率経営が必要だ。

悩んだ末、その後、自動車業界のトヨタ生産方式に魅了され、効率生産を学ぶため教えを乞うためにアイシン精機さんの門を叩くことになります。


次のストーリーは「異業種から学ぶアパレル効率経営」です。


精巧株式会社のHPはこちら http://seiko-co.co.jp/



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