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自分自身への帰宅

黄昏時を過ぎ、暗くなった人気の無い帰り道、マスクを外して歩いてみた。夕餉の支度の匂いが鼻をくすぐる。

母を亡くしたあと、子供心に、夜道に灯りのついた窓や夕餉の支度の匂いに、悲しみとか寂しさとかが入り混じったなんとも言えない気持ちになった事を思い出す。

母となり、子育てと家事と仕事に追われて、その灯りの中にも、いろんな闘いが存在することも知った。

ひとりになって、それぞれの灯りの中に幸せが在る事を祈ることが、自分自身を豊かにしてくれることも知った。

いろんな思いを経験できて良かったと、今は思っている。

匂いひとつにこれほどの思いが交錯する。

視覚と聴覚と嗅覚と味覚と触覚、いずれも今ここに在る自分自身に引き戻す。

心配事は、傍に置いて、今を楽しもうと思う。

何度でも目からウロコを落としながら。
言葉と思考の支配という罠から逃れながら。

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