藤野論60:酷道20号線

藤野駅前ほど劣悪な道路は他にはないだろう。天下の国道20号線 甲州街道なのだが、センターラインはかすれ、道幅も十分に確保されていない。
つねに大型ダンプが難渋していて、歩道のない路肩を、風雪から身を避けるようにして進む歩行者の姿は涙を誘う。
毎日のように通るが、接近を告げるアラートが鳴るのも、たいていここだ。とにかく藤野駅前は危険極まりない。
私は以前、「まっぷる」の昭文社に勤めていた。
道路の新設や高規格化などを役所に取材して、地図に反映するというのが私の任務だった(長野オリンピックや温泉など観光地の取材もあったがw)。
このとき知ったのは「辺境は冷遇される」ということだ。予算は県庁所在地や都市を中心に投下され、県境エリアは絞られる。
山梨県と接する藤野は、神奈川県の辺境たる相模原市のさらに辺境だ。
道路改善のみならず、昨今頻発する災害の復興においても、辺境の地 藤野は冷遇を強いられることになろう。
日中クルマを乗りまわして用が足りる藤野婦人にはわかるまい。辺境の拙劣なインフラのあおりを受けるのは交通弱者たる子供と夫たちなのだ。
藤野移住を考える人たちは「里山ほっこり日向ぼっこ^ - ^」ではなく、酷寒の朝、苛烈な酷道20号線を体験してみるといい。
「東京駅までわずか20分♪」の武蔵小杉がじっさいにはそれどころではないように、「都心に座って1時間」の藤野も額面通り受け取れなくなるだろう。

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