藤野論59:ピンクのカーテンめくってみれば

以下は、論文「日本におけるシュタイナー教育の動向」(大野裕美/名古屋市立大学大学院)からの抜粋である。
こんにちのシュタイナー教育に対する私の疑義を代弁してくれている。
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育児雑誌 『クーヨン』の定期掲載により、育児層の関心を高め、「シュタイナー的子育て」 というコンセプ トが母親たちの心を捉えた。 そこには、難解な思想は割愛され、シュタイナー教育では子どもをどのように捉えるかが分かりやすく紹介されており、具体的な玩具や育児環境も含めて、興味を促す構成になっている。
シュタイナー教育では、モンテッソーリ教育のように教具というものは無いが、手仕事関係の道具や、本場ドイツから人智学の思想を取り入れ、つくられている木の玩具を中心とするものなどがある 。それらヨーロッパ系玩具を取り扱う店が、「シュタイナーのおもちゃ」として販売したことで、誰でも容易に入手出来るようになった。 このように、表層的なレベルで、思想とは切り離されたかたちで日常生活のなかに入り込んできた。しかし、これらは広がりを加速する一因とはなったが、同時に誤謬も生み出した。木の玩具であれば内容を問わずシュタイナー系と宣伝されたり、自然派志向の高まりにより無農薬 ・無添加であることや、ホメオパシーなどがシュタイナー系と言われたりする。もしくは、シュタイナー教育の一部分のみが抽出され、子ども部屋にはピンクの力一テンが必要であるとか、テレビは絶対見せてはいけないなど、曲解や強調により誤解を招く現象も多々見られる。

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