岩代メガソーラー_のコピー

メガソーラーに適するゴルフ場跡地

県内の転用事例を検証 

 会津若松市河東町にあるゴルフ場「ナリ会津カントリークラブ」が9月29日で営業を終え閉鎖された。地元紙報道によると、今後は太陽光発電設備が設けられる予定という。この例に限らず、近年はゴルフ場が閉鎖され、その跡地がメガソーラーになるという事例は少なくない。 


 福島民報(9月26日付)はナリ会津カントリークラブの閉鎖について、次のように伝えた。

 《会津若松市河東町八田のゴルフ場「ナリ会津カントリークラブ」は29日で営業を終え、閉鎖する。既に東京の会社に売却されており、太陽光発電設備が設けられる予定。季節雇用を含む社員約30人は解雇される。クラブの会員は約1000人で、近く会員預託金の返還手続きに入る》

閉鎖されたナリ会津カントリークラブのコピー

閉鎖されたナリ会津カントリークラブ

 同ゴルフ場は当初は「会津河東カントリークラブ」としてオープンしたが、その後、経営会社の変更があり、それに伴いコース名がナリ会津カントリークラブに変更された。同ゴルフ場はもともとは27ホールだったが、数年前に9ホールを売却しメガソーラー発電所となっていた。

 以降は、残りの18ホールで営業していたが、9月29日で閉鎖され、「東京の会社」に売却されたという。すでに稼働しているメガソーラー発電所運営者と関係があるのかは分かっていないが、福島民報記事によると、今後は残りの部分もメガソーラー発電所になるようだ。

 同ゴルフ場に限らず、県内ではゴルフ場がメガソーラーになる・なったところは少なくない。ナリ会津カントリークラブの場合は当てはまらないだろうが、とりわけ、東日本大震災・東京電力福島第一原発事故の影響で休業・縮小などを余儀なくされ、そのままメガソーラーに生まれ変わる事例が多い。

 別表は、ゴルフ情報サイトや新聞報道、事業者のリリースなどで確認できた部分で、メガソーラーになったゴルフ場跡地(計画段階のものを含む)を整理したもの。少なくとも、これだけのゴルフ場がメガソーラーに生まれ変わっている。

メガソーラーになったゴルフ場のコピー

 このほか、閉鎖前のナリ会津カントリークラブがそうだったように、ゴルフ場の一部をメガソーラーにした(太陽光発電事業者に売却した)ところもあるようだ。

 メガソーラーになったゴルフ場跡地のうち、サンフィールド二本松ゴルフ倶楽部岩代コースについては、本誌でも幾度かにわたってリポートしてきた。これまで報じてきた同ゴルフ場の経過は以下の通り。

 ①同ゴルフ場は、東日本大震災によって、クラブハウスやコース内に大きな被害を受けたほか、東電福島第一原発事故によって、コース上で高い放射線量が計測されたため、一時閉鎖して施設改修や除染を行ったうえで営業再開を目指していた。

 ②それと並行して、同ゴルフ場を運営する㈱サンフィールドは、東電を相手取り、放射性物質除去などを求める仮処分申請を東京地裁に行った。しかし、同申し立てが却下されたため、同社は2011年7月上旬ごろまでにホームページ上で「当面の休業」を告知した。なお、同社が行った仮処分申請の中で、東電が「原発から飛び散った放射性物質は東電の所有物ではない。したがって、東電には除染責任がない」との主張を展開し、県内外で大きな話題を呼んだ。

 ③同ゴルフ場閉鎖から間もなくすると、「サンフィールドはゴルフ場再開を完全にあきらめ、メガソーラー施設にするらしい」とのウワサが浮上した。当時、本誌が取材したところ、近隣住民から「大手ゼネコンが主体となり、京セラのシステムを使うそうだ」と、かなり具体的な話も聞かれた。ただ、内部事情に詳しい関係者に話を聞くと「正式にそういう打診があったわけではなく、結局、その話は立ち消えになった」とのことだった。

 ④その後、2012年秋ごろまでに、同ゴルフ場の駐車場に仮設住宅のような長屋風の建物が複数棟建てられた。除染作業員の宿舎として使われていたらしく、同ゴルフ場に併設されているホテルも除染作業員の宿舎になった。当時、サンフィールドにゴルフ場用地を貸していた地元地権者に聞くと、「サンフィールドに確認したところ『ビジネス上の付き合いから、県内で除染を請け負っている大成建設に無償貸与している』と説明していた」と話していた。実際、朝夕の時間はフロントガラスに「大成建設」のプレートが付けられた除染作業員を乗せたバスが出入りしていた。

 ⑤2014年春ごろには、先のウワサとは別に、メガソーラーにする目的で「ゴルフ場用地を買いたい」という会社が現れた。東京都港区に本社を置く「日本再生可能エネルギー」という会社で、ある地権者は「同社の要請(用地売却)に応じた。私の知る限り、ほとんどが同様の意向だと思う」と話した。

 ⑥昨年初め、同所を訪ねると「二本松太陽光発電所」という看板が掲げられ、外から様子をうかがった限りでは、すでに太陽光発電所として稼働している様子が見受けられた。「日本再生可能エネルギー」に問い合わせたところ、2017年8月から太陽光発電所として稼働しており、発電規模は29・5メガ㍗であることが分かった。なお、同社の関連会社に風力発電事業や各発電所の管理・運営などを行う会社があるが、それらの総称(ブランド名)を「ヴィーナ・エナジー」で統一している。

ゴルフ場跡地は最適!?

 同太陽光発電所(ゴルフ場)の元地権者によると、「太陽光発電事業者は①すでに開発済みで敷地が広大であること、②水はけがいいこと、等々の理由から、ゴルフ場跡地を狙っているようです。実際、用地交渉に来た(メガソーラー事業者の)関係者がそう話していました」と明かした。

 各地で計画されているメガソーラーは、山林などにつくるケースが多い。その点で言うと、ゴルフ場跡地であれば、すでに開発済みであるため、転用しやすく、しかも敷地は広大だ。さらには近隣住民とのコンセンサスなども比較的容易に得られると思われる。また、ソーラーパネルを設置すると、どうしても底地は日陰になってしまうが、ゴルフ場なら水はけがいいため、雨水による地盤の軟弱化などの懸念が少ないと考えられる。

 そのため、ゴルフ場跡地はメガソーラーに最適だ、と。

 一方で、太陽光発電事業に詳しい人物によると、「ゴルフ場は外部から見えないようになっているところがほとんどだから、景観を乱す心配が少ないことも、メガソーラー用地として適している理由だと思う」と語る。

 本誌8月号に「大玉村『メガソーラーいらない』宣言の真意」という記事を掲載した。同村では、「再生可能エネルギーの推進は今後も行っていく」としながらも、「自然景観に著しく違和感を与えるような大規模太陽光発電所は、できるなら村内にはもうつくってほしくない」として、メガソーラーいらない宣言を発した。

 こうした事例からも分かるように、景観上の問題からメガソーラーに反対する意見もあるのだ。その点、ゴルフ場であれば、外から見えないようになっているため、そうした問題も発生しないというわけ。

 一方で、大玉村では、ソーラーパネルの耐用年数を超えた後、更新、あるいはきちんと撤去されるのか、といった問題があることも、同宣言を発した理由として挙げていた。

 ソーラーパネルには鉛やセレンなどの有害物質が含まれていることもあり、発電終了後、放置・不法投棄されるのではないかといった懸念があるのは間違いない。

 ゴルフ場の場合、外から見えない分だけ、余計にそういった心配がありそう。景観を乱さないといったメリットがある半面、発電終了後、放置・不法投棄されても気付きにくいといったデメリットがあるのだ。

 そうならないためにも、ソーラーパネルの耐用年数後の対応については、国による明確なルール化、法制化が求められる。

 ともかく、ここで述べてきたさまざまな理由から、ゴルフ場跡地はメガソーラーに適しており、事業者からすると狙い目になるようだ。

厳しいゴルフ場経営

 加えて、ゴルフ場自体も厳しい状況にある。

 経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によると、ゴルフ場利用者数は2015年が約964万人、2016年が約939万人、2017年が約936万人、2018年が約892万人と年々微減している。今年上半期(1月〜6月)は約429万人で、通年すると前年割れの可能性が高いだろう。

 売上高も同様の傾向が見られる。2015年が約950億円、2016年が約925億円、2017年が約921億円、2018年が約888億円と減収が続いている。今年上半期は約418億円で、こちらも通年すると前年実績を下回る可能性が高い。

 以前、破綻したゴルフ場を取材した際、関係者は「年間の売り上げは約2億円だった」と語っていた。いまどき、パソコン1台あればそのくらいの売り上げを叩き出せるという企業がゴロゴロあるのに、これだけの敷地・設備を有し、相応の人員がいて、年間2億円の売り上げというのはなかなか厳しい商売だな――と感じた。しかも、その関係者は「天候に左右される面も多く、それ次第ではもっと厳しいことになることも……」とも語っており、そこからしても大変なことが分かる。

 今年8月の全英女子オープンで、渋野日向子選手が日本女子として42年ぶりに海外メジャー大会優勝を果たした。このようなスター選手誕生により、ゴルフ人気上昇、プレー人口増加につながる可能性があるものの、全体的には同業界は今後も厳しい状況が続くものと思われる。

 こうしたさまざまな事情から、ゴルフ場閉鎖→メガソーラーに転用といったケースが目立っているわけ。県内の場合、震災・原発事故の影響でゴルフ場の休業・閉鎖が相次いだことと、原発に依存しない社会の実現のため再生可能エネルギーの普及拡大が叫ばれるようになり、その2つの事象が上手く結び付いたという側面もあろう。

太陽光事業も苦戦

 もっとも、太陽光発電事業も簡単ではない。近年は太陽光関連事業者の倒産が相次いでいる。東京商工リサーチのリポートによると、過去10年と今年上半期の太陽光関連事業者の倒産件数(負債額1000万円以上)は次の通り。なお、ここで言う「太陽光関連事業者」は、売電事業者だけでなく、ソーラーパネルの製造・販売業、同設置・メンテナンス業なども含まれる。

 2009年 26件

 2010年 9件

 2011年 18件

 2012年 27件

 2013年 28件

 2014年 28件

 2015年 54件

 2016年 65件

 2017年 87件

 2018年 84件

 2019年 32件(※1月〜6月)

 2012年7月に再生可能エネルギーによる電力の「固定価格買い取り制度」(FIT)が導入され、太陽光発電分野では新規参入が相次いだ結果、同年ごろから関連事業者の倒産が相次ぎ、以降は増え続けた。2017年は過去最多となる87件の関連事業者の倒産が発生し、翌年は微減となったが、FIT制度開始直後の数倍。今年上半期は32件で、年間を通しても前年より少ない可能性が高そうだが、それでもFIT制度開始直後よりも多い。

 東京商工リサーチのリポートでは《FIT成立後、新規参入業者の多さに比例するように倒産は増加した。しかし、固定買い取り価格の段階的な引き下げや、入札制度の導入などで参入メリットが薄まり、太陽光関連市場への安易な進出は減少し、これに伴い倒産も減少している》と分析。その一方で《メンテナンス不足などで、稼働済み太陽光発電所が想定通りの発電効率を維持できずに収益が悪化するケースも出ている。太陽光関連の倒産は減少に転じたとはいえ、事業上のリスクは低減しておらず、太陽光事業者の営業実態の把握はこれまで以上に必要になっている》と結んでいる。

 こうして見ると、太陽光発電事業も決して簡単でないことが分かる。

 それでも、県内では震災・原発事故の影響でゴルフ場の休業・閉鎖が相次ぎ、別表で示したゴルフ場のほかにも休業中のゴルフ場はいくつかあり、県では再生可能エネルギーの普及・拡大を目指しているから、その両者が結びつく事例は今後も出てくるだろう。


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