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岸田政権の今後を占う山口ダブル補選|横田一の政界ウォッチ⑯

 岸田政権の今後を占うとされる「山口ダブル補選(4月11日告示、23日投開票)」が与野党激突の構図となることが確定した。3月15日に旧統一教会問題を追い続けるジャーナリストの有田芳生・前参院議員が山口4区補選への出馬を表明すると、5日後の20日には旧民主党政権で法務大臣を務めた弁護士の平岡秀夫・元衆院議員が山口2区補選に出馬する意向を表明したのだ。ただし有田氏が立憲民主党公認であるのに対し、平岡氏は無所属で「政党の公認や推薦は受けない」と述べたが、会見には地元の立民県議らが同席。政治家個人の支援は歓迎する立場だ。

 一方の自民党側は、安倍晋三元首相の死去に伴う4区補選には安倍派の下関市議だった吉田真次氏、岸信夫前防衛大臣の引退に伴う2区補選には長男で元秘書の岸信千世氏がすでに出馬表明。3月5日には岸田文雄首相が山口入りして4区の下関市と2区の岩国市に立ち寄り、吉田氏と岸氏への応援を終えていた。与党側に遅れは取ったものの、「自民王国・山口」でのダブル補選に野党系予定候補がそろって出馬表明、防衛費倍増や原発回帰に突き進む岸田政権(首相)にノーを突きつける機会が生まれることになったのだ。

 実際に両予定候補とも与党との対決姿勢は鮮明。出馬表明で有田氏が「安倍元首相がいなくなった議席を争う選挙で野党候補の不在は絶対に避けなければいけない。野党は戦わないといけないと考えた」と述べると、平岡氏も出馬の理由として「自民党(予定)候補が当選して岸田政権が信任されたという間違った認識を持たれては困る」ことを挙げ、岸田政権の国民不在の政策決定過程とその中身をこう批判したのだ。

 「戦争をしないための外交的努力が必要だ。抑止力強化のために岩国基地強化をしていけば、有事の際には岩国基地とその周辺が火の海になる可能性もある。しかし現政権は被害予測をして(住民に)示していない。説明不足だ」「民主党政権時代に脱原発ロードマップを作り、原発新増設はしない政策を作った。それが上関原発にも当てはまる」。

 実は山口2区は岩国基地を抱え、上関原発予定地もあることから平岡氏は、岸田政権の軍事偏重政策と原発推進政策を特に問題視したのだ。

 有田氏も会見で「安倍政権の検証」の必要性を強調した上で、旧統一教会問題、アベノミクス、拉致問題が争点になると説明していた。

 「地下鉄サリン事件が起きて以降、旧統一教会はノーマークになってしまった。この空白の30年間で旧統一教会は政治家にさらに接近、地方議会にも進出していった。山口県にも旧統一教会票をもらって当選した議員がいる。“統一教会汚染”を徹底的に無くすきっかけにしたい」「安倍元首相は『10年経てば年間所得は150万円上がる』と言ったが、10年経っても年間所得が上がるどころか平均賃金は下がった。全国各地を歩いても下関の街を歩いてもシャッター通りが当たり前になった」。

 有田氏の出馬で旧統一教会問題が再燃、教団支援議員を落選させようとする「ヤシノミ作戦」(先月号で紹介)が広まる可能性もある。サイボウズ㈱の青野慶久社長が前回の総選挙で仕掛けた落選運動だが、今回の統一地方選でも、有田氏に呼応する形で、全国各地で教団支援議員をリストアップする動きが活発化する可能性が高まったのだ。

 全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)は3月18日の集会で、各政党や議会に第三者委員会を設置して、教団と議員との接点などについて有権者に情報提供することも要望した。“統一地方選版ヤシノミ作戦”がどこまで浸透して、“統一教会汚染”を根絶せずに軍拡や原発回帰に邁進する岸田政権に打撃を与えることができるのか。山口ダブル補選や統一地方選の結果が注目される。

よこた・はじめ フリージャーナリスト。1957年山口県生まれ。東工大卒。奄美の右翼襲撃事件を描いた『漂流者たちの楽園』で90年朝日ジャーナル大賞受賞。震災後は東電や復興関連記事を執筆。著作に『新潟県知事選では、どうして大逆転が起こったのか』『検証ー小池都政』など。



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