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横田一の政界ウォッチ⑩

自民党と旧統一教会のズブズブ関係


 安倍晋三元首相を「国賊」と批判した村上誠一郎・元行革担当大臣の発言が波紋を呼んでいる。朝日新聞の取材で安倍氏について言及、「『財政、金融、外交をぼろぼろにし、官僚機構まで壊して、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)に選挙まで手伝わせた。私から言わせれば国賊だ』と述べた」(9月22日付の朝日新聞)と報じられたのだ。

 これに対して安倍派所属の自民幹部が「8年8カ月首相を務めた人を国賊呼ばわりするということはあってはならない」と批判したことも先の記事は紹介したが、安倍元首相が国益を損ねる売国奴紛いの政治家であるのは紛れもない事実だ。

 第二次安倍政権時代の2015年9月に認められた旧統一教会の名称変更について前川喜平・元文科事務次官は「下村博文・元文科大臣(安倍派)の意向が働いていることは間違いない」と断言。そして自民党と旧統一教会は「貸し借り関係(ギブ・アンド・テイクの関係)にある」とも指摘した。選挙支援(信者の無償労働提供)の見返りに自民党は、高額献金を野放しにする便宜供与を旧統一教会にしてきた。「選挙支援をしてくれる“アベ友教団”のために厳しいカルト規制をせず、日本の国富を韓国教団に流出させた元締めが安倍元首相」と捉えると、村上氏の国賊発言は的確と理解できるのだ。

 しかも、安倍元首相は旧統一教会票の差配をしていた。7月の参院選で安倍元首相の秘書官だった井上義行参院議員(当時は候補者)に旧統一教会票を回す一方、6年前の参院選で旧統一教会の支援を受けて全国比例で初当選をした宮島喜文・前参院議員に対しては「今回は井上で行く」と伝えたというのだ。旧統一教会の支援抜きでの当選は厳しいと考えた宮島氏は出馬を断念。その経緯を伊達忠一・元参院議長が地元のHBC北海道放送に語ったのだ。

 しかし自民党の調査には、なぜか安倍元首相と旧統一教会の関係が抜け落ちている。立憲民主党の泉健太代表らが調査対象にすべきと問い質しても、岸田文雄首相は「お亡くなりになった今、確認するには限界がある」と拒否した。疑惑の中心人物を聖域扱いにしながら「旧統一教会との関係を断つ」と宣言しても、説得力はない。「国民の半分以上が関係断絶は困難とみている」という世論調査結果が出るのは至極当然なのだ。

 高額献金による国富流出を根絶する本気度も、岸田政権からは伝わって来ない。首相の鶴の一声で「『旧統一教会』問題関係省庁連絡会議」(議長・葉梨康弘法務大臣)が8月に発足、約1カ月の相談集中強化期間が始まったが、フランスのような反セクト(カルト)法のような新たな立法措置には関わらないと事務方は断言。生みの親の岸田首相も「今の法令で何ができるか最大限追求したうえで議論を進めるべき」という消極的な立場なのだ。

 紀藤正樹弁護士らがメンバーの「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」を立ち上げた河野太郎・消費者担当大臣も、現時点では見かけ倒れ状態。検討会では初回から新規立法を求める声が出たのに、「新規立法をすべき」と岸田首相に方針変更を迫っていないからだ。

 このままでは“パフォーマンス検討会”で終わりかねないので、河野大臣に会見で「連絡会議に『新規立法についても検討すべきではないか』と提言はしていないのか」と聞いたが、河野大臣は「しっかりと議論をしてもらい、それに基づいて消費者庁に報告していく」としか答えない。「やっている感」演出のための大臣にしか見えない。

 これに対して野党は新規立法について検討を進め、10月召集の臨時国会に提出しようとしている。カルト規制に消極的な与党と積極的な野党が激突するのは確実なのだ。臨時国会から目が離せない。



よこた・はじめ フリージャーナリスト。1957年山口県生まれ。東工大卒。奄美の右翼襲撃事件を描いた『漂流者たちの楽園』で90年朝日ジャーナル大賞受賞。震災後は東電や復興関連記事を執筆。著作に『新潟県知事選では、どうして大逆転が起こったのか』『検証ー小池都政』など。


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