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「早期解散説」浮上も迷走状態の立民|横田一の政界ウォッチ⑱

 G7広島サミット開催中の世論調査で内閣支持率が9%上昇(5月21日の読売新聞)、早期解散の可能性が高まっている。5月22日の日テレニュースも「自民党内から早期“解散”の声高まる サミット閉幕、支持率上昇踏まえ」と銘打って「いま解散しないでいつやるんだ」という党内の声を紹介した。一方、安倍元首相の一回忌と同時期を投開票日にして“弔い合戦風”を吹かせようとする思惑も漏れ聞こえてくる。

 5月12日の会見で山本太郎れいわ新選組代表にこの早期解散説について聞くと、“安倍元首相メモリアル解散・総選挙説”を次のように説明した。

 「(質問内容と)同じ情報を耳にした。要は、安倍さんがお亡くなりになった日(7月8日・土曜日)に近づけて選挙を打つのではないか。安倍さんメモリアル的なことを、例えば、メデイアジャックによって自民党がけっこう熱く流れてしまうといった操作を行えるカードは持っていると思う。一週ずれたとしても、(一回忌が)選挙冒頭になってカードとして使えるだろう。自分たちの党勢拡大のために様々なものを利用すると考えるならば、当然、そういうこともやってくるだろう」

 早期解散説については、立憲民主党の泉健太代表も5月10日の両院議員懇談会の挨拶で口にしていた。

 「総選挙までは本当に短期間かも知れない。常任幹事会の場で菅直人元総理、最高顧問からも話があった。『もう本当に(通常)国会直後、サミット直後に、いつ選挙があるかということで準備するべきだ』と」

 早期解散の可能性が高まる中、自民党を迎え撃つ立憲民主党がいまだに迷走状態にある。野党第一党党首としての資質を欠く泉代表が4月の衆参補選全敗でも辞任せず、次期衆院選まで居座ろうとしているのだ。

 4月28日の泉代表の会見で、引責辞任について聞いた。

 ――千葉5区では(立民公認候補の票に)共産党の票を足せば勝った計算。共産党を含めた野党連携(候補者一本化)をしていれば勝てたのに、泉体制になって後退させたのが敗因の可能性が高いと思うが、それでも辞めない理由を教えてほしい。

 泉代表 「野党の力を足せば」と言うが、単純にいかない状況にある。

 ――共産党の票を足せば千葉5区では勝っていた。共産やれいわや社民との連携を強化する方向に方針変更をする考えはないのか。

 泉代表 政治はそう簡単に足し算が通じるものではないと思う。
 正直言って唖然とした。共産党との候補者調整に全力を尽くさなかった職務怠慢を棚に上げ、野党4党(立民・共産・れいわ・社民)の連携を復活させる軌道修正さえ否定した。「合理的思考能力が欠如している」と確信したのはこのためだ。

 泉代表がきちんと直視していないのは、千葉5区だけではない。山口2区補選では共産党との選挙協力が実現、立民公認ではなく無所属で出馬した平岡秀夫候補(元民主党)が惜敗率9割と大善戦。告示日には立民だけではなくて、共産党やれいわ新選組の国会議員が駆け付け、枝野前代表時代と同じような共産を含む野党連携が復活していたのだ。

 通常の思考能力があれば、枝野前代表時代の「野党4党連携(共産党を含めた選挙協力・候補者一本化)」に再び戻ることが不可欠だと気付くはずだ。しかし泉代表は、補選全敗後も共産党との連携(選挙協力)はしないと言い続けているのだ。

 経営悪化の責任を取らないダメ経営者が居座る企業が傾いていくのと同様、野党陣営の“司令官役”がこの様では次期総選挙での結果は見えている。すぐに代表を辞めさせるか、党内外から突き上げて野党4党連携を復活させない限り、与党が勝利するのは確実な状況だ。今後の動向が注目される。

よこた・はじめ フリージャーナリスト。1957年山口県生まれ。東工大卒。奄美の右翼襲撃事件を描いた『漂流者たちの楽園』で90年朝日ジャーナル大賞受賞。震災後は東電や復興関連記事を執筆。著作に『新潟県知事選では、どうして大逆転が起こったのか』『検証ー小池都政』など。


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