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前立腺肥大症の予防方法|耳寄り健康講座⑬

 常磐病院の新村です。今月もよろしくお願いします。今回のテーマは「前立腺肥大症」についてです。「最近、おしっこの出が悪くなってきたかも?」と感じている方は、ぜひご一読ください。

 【前立腺肥大症とは】

 前立腺肥大症とは、前立腺が大きくなることで排尿障害を起こす病気です。「前立腺」は男性にしかない生殖器で、精子に栄養を与えたり、保護をする役割を持つ精液を作っています。前立腺は、青年期はクルミ程度の大きさですが、加齢や男性ホルモンなどの影響によって大きくなってしまいます。前立腺は膀胱の出口に尿道を取り囲むようにあるため、前立腺が大きくなると、尿道が圧迫されることで尿が出にくくなってしまいます。

 前立腺肥大を放置してしまうと、尿や前立腺、膀胱などに細菌が繁殖してしまい尿路感染症を引き起こしてしまったり、腎機能障害の原因となってしまう恐れがあるので注意が必要です。

 【原因】

 前立腺が肥大する原因は、まだ詳しくは判明していませんが、「加齢」による男性ホルモンの変化が起因しているのではと考えられています。排尿障害などの障害がない人も含めると、60代の男性の約6割は前立腺肥大症に罹っていると言われており、70代で約8割、80代で約9割の方が前立腺肥大症であると考えられています。また、その他の原因として、食生活・高血圧・高血糖・肥満などの生活習慣や遺伝的要因などが挙げられます。

 【症状】

 初期症状としては、「尿が出にくくなる」「何度もトイレに行くようになる」などがあります。夜間の寝ている時に何度もトイレに行く「夜間頻尿」で身体の異変に気づくことも多いです。前立腺肥大症の方は、膀胱が過敏に活動してしまう「過活動膀胱」を併発しているというケースも多く、前述の症状のほか、急に我慢できなくなるほどの尿意が現れる「尿意切迫感」や、排尿後の残尿感、排尿後に少量の尿が漏れてしまうといった症状も現れます。

 【治療方法】

 主な治療方法としては「薬物治療」、自力で排尿できない状態や合併症などが見られる際は「手術」を行う場合もあります。薬の種類としては、前立腺や尿道の筋肉を緩めることで尿の通りを良くするものなどがあります。また症状が進み、薬の効果が見られない場合は、前立腺を切除する手術などを行います。

 なお、前立腺は肥大していても症状や合併症が見られない場合には、早急な治療は必要ないと判断し、定期的に経過観察を行い様子を見ていくケースも多いです。

 【予防方法】

 ①適度に水分を摂取する……頻尿を避けるために水分量を減らすのは身体に良くありません。1日の適切な水分摂取量は食事以外で1000~1500㍉㍑程度と言われています。適度な水分摂取を心がけましょう。

 ただし、水分の取りすぎやアルコールの摂取は控えましょう。

 ②座っている時間を減らす……長時間座ったままでいると前立腺に負担を掛けてしまいます。適度に軽い体操などを挟むと良いでしょう。

 ③尿意を感じたら早めにトイレに行く……尿意の我慢は、尿が出なくなる「閉尿」を引き起こす原因にもなります。尿意を催したらすぐお手洗いへ行くようにしましょう。

しんむら・ひろあき 1967年生まれ。富山大学医学部卒。専門は泌尿器科。2015年から現職。


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