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横田一の政界ウォッチ⑪

 「統一教会国会」(『週刊新潮』10月27日号)とも呼ばれる臨時国会で本格論戦が始まる直前の10月15日、安倍晋三元首相の県民葬が山口県下関市で行われた。自民党安倍派の細田博之衆院議長や萩生田光一政調会長ら約80名を含む2000人(主催者発表)が参列する中、弔辞を述べたのは、旧統一教会関連集会での挨拶や教団票差配などが明らかになった細田氏。泉健太立民代表が代表質問で議長席を振り返りつつ関係について問い質しても一言も答えず、2回の文書提出で事足りた。皮肉を込めて「紙対応」と報じられたのはこのためだが、県民葬では雄弁に立って安倍氏を次のように褒め称えた。

 「君は終始、経済の成長および行財政と教育改革ならびに災害からの復興に心魂を傾け、また世界の繁栄と平和に力を生かし、国民生活の充実と我が国の国際的地位の向上に貢献されました。その功績はまことに偉大であります」

 しかし国葬と同様、同じ時間帯に下関市役所前などで県民葬反対集会が開かれた。「憲法違反の県民葬はやめよう」といったプラカードを持った市民が、「内心の自由への侵害」などと訴えていたのだ。

 先月号でも指摘した通り、安倍元首相は日本人の国富を韓国教団に流出させる片棒を担いだ「国賊」紛いの言動が問題になっていた。“アベ友教団”への便宜供与(高額献金の放置など)をする一方、選挙支援を受けてきた貸し借り関係がクローズアップされ、自民党最大派閥「清和会(安倍派)」トップだった安倍氏や細田氏は教団票差配の元締めのような存在と見られてきたからだ。

 それでも岸田文雄首相は、安倍氏と旧統一教会の関係調査について「お亡くなりになった今、確認するには限界がある」(閉会中審査)と拒否。臨時国会が始まっても「本人が亡くなられて反論もできない。十分に調査をすることは難しい」(参院予算委)と拒み続けているのだ。

 韓国教団への国富流出阻止にも岸田政権(首相)は即座に対応しようとしていなかった。高額献金根絶のための新規立法は当初、今臨時国会に提出予定でなく、銃撃事件から半年経っても野放し状態が続くという事態が罷り通ろうとしていたのだ。

 これに異議申し立てをすると期待したのが、「突破力」「発信力」に秀でていると報じられる河野太郎デジタル担当大臣(消費者庁担当大臣も兼務)。しかし17日に予算委が始まるまでは、「見守り大臣」と呼びたくなる待ちの姿勢。紀藤正樹弁護士らがメンバーの「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」を立ち上げ、初回会合から新規立法を求める声が出たのに「臨時国会での法案成立に全力を尽くす」という決意表明を聞くことはできなかった。会見で何度聞いても「検討会の議論を見守る」としか答えず、新規立法の旗振り役を買って出ることはなかったのだ。

 唖然としながら10月11日の会見で「銃撃事件から半年も経って法改正がなされないと、政権担当能力を疑われるのではないか。旧統一教会とのズブズブの関係を断ち切ろうとする本気度不足ではないか」と迫ると、「会見ですから個人の誹謗中傷をするなら次回からご遠慮下さい」と記者排除を予告してきたのだ。

 この質疑応答を10月14日にネット媒体で「“検討使”総理と“見守り”大臣のコンビで17日からの予算委員会を乗り切ることができるのか」と紹介すると、4日後の18日に岸田首相は臨時国会での法案提出に初めて言及。これに呼応する形で自民党も、立民と維新が共同提出していた被害者救済法案の協議に応じることを決定、臨時国会での成立を目指すことで合意した。野党が岸田政権を突き上げ、カルト規制強化(高額献金根絶など)の年内実現の可能性が一気に高まったのだ。激動の臨時国会から目が離せない。


よこた・はじめ フリージャーナリスト。1957年山口県生まれ。東工大卒。奄美の右翼襲撃事件を描いた『漂流者たちの楽園』で90年朝日ジャーナル大賞受賞。震災後は東電や復興関連記事を執筆。著作に『新潟県知事選では、どうして大逆転が起こったのか』『検証ー小池都政』など。

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