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喫煙男性に多い膀胱がん|耳寄り健康講座⑫

 常磐病院泌尿器科の新村です。寒い日が続きますが、皆さん体調は大丈夫でしょうか? 今回は「膀胱がん」についてお話していきたいと思います。

 【膀胱がんとは】

 「膀胱がん」は、尿をためる器官の「膀胱」に発生するがんで、日本では年間約2万3000人もの方が罹患しています。

 女性よりも男性の罹患率が高く、その差は約4倍。男女ともに加齢とともに罹患者数が増加し、膀胱がん患者の約9割が60代以上となっています。

 【初期症状】

 早期の膀胱がんは、多くの場合、無症状です。まれに別の病気の診察や健康診断などで尿検査を行った際、潜血反応が出ることで発見される場合があります。多くの場合、ある程度進行すると現れる「痛みを伴わない血尿」がきっかけとなり発見されます。なお、さらに進行すると、頻尿や排尿痛、残尿感などの症状が出始めます。

 血尿が出たり、排尿時に「何かおかしいな?」と違和感を感じたら、決して放っておかず、早めにお近くの泌尿器科を受診するようにしてください。

 【治療方法】

 膀胱がんの標準治療は、手術による外科治療となります。早期の場合は、がん組織を部分的に削り取る「経尿道的膀胱腫瘍切除」を行い、深く浸潤したがんは、一般的に膀胱を摘出する「膀胱全摘除術」を実施します。膀胱を全て摘出した際は、がんの摘出手術と一緒に、尿路を新たに造る「尿路変向術」も行うことになります。

 【ロボット手術】

 近年、膀胱がんは手術支援ロボットを用いて手術することが増えてきました。手術支援ロボットを用いた手術は、一般的な開腹手術とは異なり、腹部に小さな穴を複数開けて手術を行うため、術後の回復が早いなどの特徴があります。当院でも手術支援ロボット「ダヴィンチ」を用いた手術を導入しています。

 【がん発生のリスク】

 膀胱がんが発生する要因はまだはっきりと分かっていませんが、喫煙者は非喫煙者と比べ2~3倍も発生リスクが高まるという研究結果が出ています。

 膀胱がんに限らず、他のがんの発生や呼吸機能の低下などが懸念されますので、喫煙数を減らしたり、禁煙などもご検討されてはいかがでしょうか。

 また塗料や化学物質を扱うお仕事をされている方もリスクが高まると言われていますので、併せてご注意ください。

 【再発率が高い膀胱がん】

 膀胱がんの特徴として「再発率が高い」ということが挙げられます。再発率が高い理由はまだ分かっていませんが、がんの腫瘍が2つ以上見つかったり、がんの進行度に比例して、再発率が高くなる傾向にあります。再発を抑えるための治療として、手術でがん組織を切除したあとも、膀胱内に抗がん剤を投与し、がんの再発を抑える治療などを行います。

 【最後に】

 60歳以上の男性で喫煙される方は、膀胱がんの発生リスクが高い傾向にありますのでご注意ください。もちろん、これらに該当していない方も、定期健診を受けるようにしましょう。

 「痛みのない血尿」は、膀胱がんなど「尿路のがん」の可能性があります。血尿が出たら、すぐに泌尿器科を受診するようにしてください。

しんむら・ひろあき 1967年生まれ。富山大学医学部卒。専門は泌尿器科。2015年から現職。


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