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県知事選 廃炉は争点になるのか―【尾松亮】廃炉の流儀 連載31

 10月9日には原発事故から3度目に当たる福島県知事選挙が公示される。選挙になるからこそ現職知事も公開討論会や選挙報道において、その立場を問われることになる。

 選挙の争点は県民が決めることだ。しかし福島第一原発事故の影響を受けてきた県外の住民として「事故原発の後始末(汚染水の問題含む)」について現県政の姿勢がどのように問われるのか、注目している。

 本連載で繰り返し指摘したように東京電力は「廃炉の最終的姿は決まっていない」(どこまでやり終えるかは約束しない)という姿勢を維持している。燃料デブリの取り出しや原子炉解体、敷地のクリーンアップまでを「廃炉完了の条件」として義務づけた法規則は存在しない。この現状において県知事には、法的な担保のある「廃炉完了の姿」を本気で国や東電に求めてきたかどうか、が問われる。

 令和2年2月28日福島県議会定例会において「廃炉終了の姿」について問われ、内堀雅雄知事は以下のように答弁している。

 「燃料デブリについては、世界の英知を結集し、安全かつ確実に取り出すこと、もう1つは、使用済燃料や燃料デブリなどの放射性廃棄物については、原子力政策を推進してきた国の責任において処分方法の議論を進め、県外において適切に処分することであります」

 一見、国に求める内容としては問題がないと感じるかもしれない。しかし、この内堀氏が語る「廃炉終了の姿」には、「福島第一原発」に対する工程についての根本的な認識の欠如がある。

 例えば内堀氏は「燃料デブリなどの放射性廃棄物を県外で適切に処分」というが、そもそも現行法制では「燃料デブリ」は放射性廃棄物として位置づけられていない。しかも溶融燃料を含むがれきのうちどの範囲を「燃料デブリ」として扱うのかも、法的に決まっていない。このまま「燃料デブリ」と呼ばれる溶融燃料含有物を取り出せたとしても、国は「高レベル放射性廃棄物」として引き受ける義務はない。溶融燃料が混ざっていても勝手な判断で「微量なのでこれは燃料デブリではない」と、通常の廃棄物同様に扱う余地も残っている。

 「国の責任による処分」を本気で求めるのであれば、「燃料デブリを高レベル放射性廃棄物と認めよ」という訴えが、繰り返しなされていなければいけない。

 「県外における適切な処分」を本気で求めるのであれば、福島第一原発のロードマップ改訂に際して「取り出した燃料デブリは原発敷地内で保管」という方針が出されている現状に、徹底抗戦していてよいはずだ。少なくとも期限を決めて県外に搬出することを義務づける法的な約束を求めて必死に交渉していなければおかしい。

 本連載でも紹介したように米国スリーマイル原発では、立地自治体の抵抗によりエネルギー省が燃料デブリを受け入れることを協定で約束し、燃料デブリは立地州外に搬出された。内堀氏が「廃炉終了の姿」に原子炉解体撤去や敷地の完全除染を含めていないのも気になる。

 どこまで本気で法的担保のある「廃炉終了」を求めるのか、選挙期間中質問してみてほしい。

おまつ・りょう 1978年生まれ。東大大学院人文社会系研究科修士課程修了。文科省長期留学生派遣制度でモスクワ大大学院留学。その後は通信社、シンクタンクでロシア・CIS地域、北東アジアのエネルギー問題を中心に経済調査・政策提言に従事。震災後は子ども被災者支援法の政府WGに参加。現在、「廃炉制度研究会」主催。
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