横田一の政界ウォッチ⑤

参院選前哨戦の新潟県知事選


 7月の「参院議員選挙」の前哨戦として位置づけられる「新潟県知事選」(5月29日投開票)が盛り上がりを見せている。4月10日に脱原発に取り組む著名人が新潟市に結集、再稼働反対などを訴えて出馬表明をした片桐奈保美・立候補予定者(先月号で紹介)へのエールを送りつつ、「新潟から日本を変えよう」と呼び掛けていったのだ。

 「3・11から11年 どうする原発再稼働!」と題する集会は、小泉純一郎元首相や元経産官僚の古賀茂明氏、前滋賀県知事の嘉田由紀子参院議員ら11名の有識者がリレートーク。世界最大の東京電力「柏崎刈羽原子力発電所」の再稼働がメインテーマだったが、冒頭で片桐氏が熱のこもった挨拶をしたのだ。

 「年をとっても、あんな危険なもの(原発)をこのまま、もしかしたら戦争になったらターゲットになるような危険なものを残して死ねない。そう思って、この結果です」

 こう切り出すと、参加者から大きな拍手が沸き起こったのだ。

 続いて司会の佐々木寛・新潟国際情報大学教授が「普通なら1人で1時間以上講演する人たちばかりですが、今日の持ち時間は5分です」と断ってリレートーク開始。最初に指名された小泉元首相が次のような応援メッセージを発し、会場内の雰囲気はさらにヒートアップしたのだ。

 「これだけの様々な意見を持っている方々が片桐さんを必死に応援してくれれば、いい結果が出ると信じております。選挙はやってみないとわからない」「片桐さんに頑張ってもらって、まず新潟から『原発ゼロにしよう』という声を全国に広げる。片桐さんが当選すれば、新潟だけではない。日本を動かしますよ」。

 この発言に驚いたのが古賀氏。  「僕、驚いたのです。小泉元総理、あんなに片桐さんのことを応援するかなと。本当ですよ。小泉さん、そう簡単には政治的には、選挙にはあまり関与しないことでずっと貫いていた方ですから。(元首相の)細川さんの時だけは違いましたが、あれだけ前に出られるのはよっぽど期待をされているのだろうなと。片桐さんは謙遜されていましたが、『ああ、勝てるな』と思いました」

 3番目にスピーチをした「環境エネルギー政策研究所」の飯田哲也所長は、小泉元首相の呼び掛けを政治的な視点からこう意義づけた。

 「今の自民党政権はむしろ(再生可能エネルギーの)市場を潰す方向に来ているので、いま日本の太陽光と風力の市場はもう風前の灯火のような形になっている。(再生可能エネルギーが激増している)世界的な大転換から日本だけが取り残されているのを変えるには、ボトムアップで変えないといけない。片桐さんが知事になって、世界からの遅れを取り戻しながら、日本ひいては世界のトップランナーのようなことをやっていく。新潟と日本の未来を変える重要な選挙になると思います」

 先月号で紹介した通り、ロシアのウクライナ侵攻後、日本のエネルギー政策をめぐる国論は二分しつつある。原油価格高騰を理由に原発再稼働を促進しようとする維新、自民党と、原発攻撃リスクを直視して原発ゼロの加速を目指す立憲民主党、共産党、れいわ新選組などの野党が激突し始めたのだが、今夏の参院選でも一大争点になるのは確実だ。

 ただし立民は新潟県知事選で自主投票を決めた。現職の花角英世知事への支援を決めた連合新潟に配慮したとも見られているが、県政ウオッチャーはこう話す。「米山隆一知事が誕生した2016年の県知事選でも当時の民進党は自主投票だったが、蓮舫代表をはじめ党所属国会議員が応援のため現地入りした。今回も同じパターンになるだろう」。

 原発ゼロ加速派の野党が新潟県知事選で弾みをつけて参院選に臨むことができるのかが注目される。


よこた・はじめ フリージャーナリスト。1957年山口県生まれ。東工大卒。奄美の右翼襲撃事件を描いた『漂流者たちの楽園』で90年朝日ジャーナル大賞受賞。震災後は東電や復興関連記事を執筆。著作に『新潟県知事選では、どうして大逆転が起こったのか』『検証ー小池都政』など。

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