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マイナ保険証一本化を強行する岸田政権|横田一の政界ウォッチ25

 パーティー券裏金問題が急浮上、過去最低の支持率を更新している岸田政権だが、民意無視の姿勢は変わらないどころか、より鮮明になった。政府は12月12日にマイナンバー情報総点検本部の会合を開催、ひも付け誤りなどに関する総点検結果を発表する一方、マイナ保険証一本化(紙の健康保険証の廃止)を予定通り来年秋に行うことを表明したのだ。マイナカードのトラブルが頻発した昨年6月に岸田首相は、「国民の不安払しょくをする措置を講ずる」ことを健康保険証廃止の条件(前提)にすると会見で表明、マスコミは「『国民の不安払しょく』が前提」と報じた。「効果のある措置を講じた結果、国民の不安が払しょくされた状態を確認することが廃止の前提」という常識的解釈をしたのだが、河野太郎デジタル担当大臣は違った。

 総点検結果発表を受けた同日の会見で私は、岸田首相発言を紹介した上で「国民の不安が払しょくされた根拠はあるのか。何らかの世論調査をしたとか、(廃止)撤回を求めている『全国保険団体連合会』の方と意見交換をして納得してもらったとか、何らかの根拠がないと今の決断(紙の健康保険証廃止)はできないと思うが、何かあるのか」と聞くと、河野大臣は次のように答えたのだ。

 「不安を払しょくするための措置を取るということで『措置』を取ったので、(紙の健康保険証を)廃止する」

 不安払しょくをした具体的根拠が一切示されなかったので「『措置を取れば不安が払しょくされなくてもいい』ということか」と再質問をすると、河野大臣から驚くべき回答が返ってきた。

 「イデオロギー的に反対される方はいつまで経っても『不安だ、不安だ』と仰るでしょうから、それでは物事は進みませんので、きちんとした措置を取ったということで進めます」

 問題発言に呆れながら「イデオロギーではなくて、医療現場の方から『(紙の健康保険証を)撤廃しないで欲しい』という声が出ているのに、それすら調査しようとしないのか。意見交換をしないのか」と問い質したが、同じ答えを繰り返すだけ。納得がいかないので「民意無視」と言って質問を続けようとしたが、河野大臣は「次の方」と言って一方的に質疑を打ち切った。

 マイナ保険証の利用率は6カ月連続で減少、現時点の利用率はわずか4・5%に留まっている。国民の不安が払しょくされていない証しといえる数字だが、河野大臣は世論調査などで民意を確認する作業を頑なに拒否しているのだ。

 別の記者との質疑応答が一段落した後、私はあらためて「世論調査で『国民の不安が払しょくされていない』という結果が出ても見直す考えはないのか」と聞いたが、河野大臣は「総理から指示が出ているので、これはしっかりと進めていく」と回答。「民意無視ではないか」と迫っても、「医療DXに必要なことですから、不安がなくなるような努力は続けていきたいと思う」と答えるだけだった。

 防衛費倍増や原発運転期間延長などに続いて、パーティー券裏金問題のゴタゴタに紛れてマイナ保険証一本化も強行する岸田政権――国民に有害無益な独裁的体質が露わになって2023年は終わったが、その一方で希望を抱かせる動きもあった。

 子供予算を倍増以上にして10年連続人口増を達成、総理待望論が高まる泉房穂・前明石市長が東京新聞のインタビュー記事で「救民政権」構想を発表、次期総選挙での政権交代は可能と宣言した。新年最大の関心事は、民意無視・金権腐敗政治の自民党政治にピリオドが打たれるのか否か。泉前市長の救民政権構想が野党結集の旗印となり、政権交代の気運がどこまで高まっていくのかが注目されるのだ。


よこた・はじめ フリージャーナリスト。1957年山口県生まれ。東工大卒。奄美の右翼襲撃事件を描いた『漂流者たちの楽園』で90年朝日ジャーナル大賞受賞。震災後は東電や復興関連記事を執筆。著作に『新潟県知事選では、どうして大逆転が起こったのか』『検証ー小池都政』など。

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