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ナショナルマイクロモータ株式会社(米子市二本木)

 昭和52年2月の創刊時から連載されていた、山陰の事業所を紹介する『事業所めぐり』をnoteで順次紹介。今回は昭和52年6月25日号より、ナショナルマイクロモータ株式会社をご紹介します。
※地名、会社名など各種名称、役員、事業内容・方針、広告内容等記載内容は掲載当時のものです。


【事業所めぐり28】ナショナルマイクロモータ株式会社(米子市二本木)


電機関係では鳥取市の三洋電機に続く大型誘致企業として注目を集めた同社も、ことし4月28日に設立5周年を迎えた。松下電器㈱の精密モーター部門の工場として設立された当初は、本社(大阪)からの出向社員15人を含む300人あまりでスタートした。

大山有料道路の入口に10万6000平方㍍の広大な敷地を確保、大山の遠望をバックに1万8700平方㍍の本社工場をはじめとする県内最大規模のグラウンド・駐車場を有する工場の全貌はなかなか見事である。松下電器が100%出資の子会社だが、5年目にして既に現地採用の役職社員が40人にも達しており、地元重視の姿勢がうかがえる。取締役•田中欽也総務部長は「当初は、確かに環境の違いというか、生活風俗の差異で苦労しました。しかし、今では、田舎の人の純朴さが逆に好結果を招く原因になって、他工場と比較しても生産性は上がっています」と、松下イズムのひとつである”順応同化“の成果に胸を張る。

同社製品の90%以上は、音響機器用のモーターで占められているが、そのうちの約12%がアメリカ・ヨーロッパを中心とした国外輸出。あとは、本社の松下電器をはじめとする国内音響機器メーカーに出荷されているが、各メーカーともセット輸出が大きな比重を占めており、そうした間接輸出も含めると、ナショナル小型精密モーターは、世界各地で活躍していることになる。

50年2月には、共産圏向けとして画期的な大型プラント輸出をソ連との間に締結。テープレコーダー用のマイクロモーターの生産ラインを実現しており、現地工場も近々完成の予定だ。現在、同社の生産能力は、月産150万台に達しており、昨年の好調時には170万代を達成したという。「48年から50年までは、横ばいの状態でしたが、昨年はオイルショックの反動でしょうネ。不況で各セットメーカーとも生産を手控えていたのが、昨年は急激な需要の高まりをみせましたね」と、田中部長。

ただ、ことしの見通しについては「輸出がウエイトを占めているといっても、音響機器を中心とし」ているから、やはり一般の消費動向が懸念されます。最近は、マニアはもとより、一般的に音に対して厳しくなっていると同時に、不況下を反映して財布のヒモが堅くなっており”安くて良いものを” ということで、環境は厳しくなってきています」と、好調とはいえ楽観視できない情勢を分析。

いずれにしても現在、900人の従業員を抱え、県の誘致企業として順調に躍進している。地元密着ということから、賃金体系も大阪本社並み。今春のベ・アも13.8%の高額回答を示し、地元優遇を実践している。(昭和52年6月25日号)



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