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加藤勝信 氏 所得倍増した暁には物価も2倍で、乗り損ね&老後世帯は地獄

2024年9月の総裁選に出馬した加藤氏。大蔵省出身で、官房長官や厚生労働大臣を歴任している。
驚いたのは彼が「所得の倍増」を公約にしていることで、たしかに世界の所得はここ20~30年でとんでもない上昇を遂げているが、日本で「所得倍増計画」が唱えられたのは1960年で、歴史の彼方にある単語が突如蘇ったことに戸惑いを抱いた人も多いと思う。

具体的にどういう道筋を立てているのか、公式サイトを見てみたが、政策関連は例によって総裁選特設サイトに用意しているようで、そちらをチェックした。

国民所得の倍増のための具体的な取り組みを周辺政策と合わせて抜粋すると
・賃上げ促進税制の整備
・年収の壁撤廃
・教育、医療職の賃上げ
・設備投資推進
・職務給導入
・リスキリング推進
・公共事業単価見直し(おそらく上げ方向)
・最低賃金1,500円
・iDeCo限度額引き上げ

などとなっている。
また、所得倍増意外の政策でいくつか抜粋すると
・給付型奨学金充実
・がん検診等の無償化
・低年金者の年金水準の改善

などが目についた。外交や安全保障は一般的な自民党右派の主張に近いと思われるので割愛した。

これらがすべて実現すれば物価の上昇もとんでもないレベルになることが予想される。一方で所得増加が広く波及するのか、一部の層にとどまるのかは
予測困難である。「職務給の導入」は企業の主体性によるし、すべての職種に当てはまるものでもない。そもそもこの手の制度は人件費抑制の手段として使われてきた。
「賃上げ促進税制」も、詳しい内容が不明なため予測不可能である。

気になるのは「年収の壁撤廃」「iDeCo限度額引き上げ」「がん検診無償化」など、老後資金を自助努力で稼ぐことを求める政策が盛り込まれている点である。
もちろんこれだけ物価上昇の政策を打つ以上、年金以外の老後資金を稼ぐことが必要になるのは目に見えている。つまり現在及び近い将来に老後を迎える世帯にとっては現金資産の大幅な価値減少に苦しむことは間違いない。

よって、所得倍増を目指すにしても緩やかに進めていく必要があるのだが、どのくらいのスパンで計画を進めるつもりなのかが示されていない。
特に氷河期世帯がこれから老後に向かっていく中で強烈に物価高が進んでしまうと、彼らの生活不安を招いてしまい、社会にとって結局は負担増になってしまう。
そういう意味ではこの計画はちょっと遅かったと言えるのではないだろうか。少なくとも15年くらい遅かった。

また、公共事業に目を向けていることも含めて、それなりに大規模な財政出動を志向しているようだが、その財源について触れられていない。しかし列挙した政策は増税や保険料増の理由にはしやすいだろう。
また、貨幣価値が棄損するのでこれまで積み上げた国債の実質額は減るかもしれないが、新たな発行額もとんでもないことになるため、いずれ行きづまる可能性も考えなければならない。

所得倍増というと聞こえはよいが、物価も上昇するので今まで以上に物が買えるわけでもない。
また、所得倍増の波に乗れなかった世帯、現役を退いている世帯にとっては物価上昇と増税でこれまで以上に苦しむことになる。
つまり「所属倍増=豊かさ」ではないことを十分認識しておきたい。


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