職員によるお米の産地研修を行いました
\全国各地の生活クラブの職員が、生活クラブと繋がりの深い庄内生産者との産地見学研修を8月26日(月)~28日(水)に実施しました/
(執筆:政策調整部 遊佐田んぼクラブ事務局)
遊YOU米やパプリカ、アスパラガスの生産者である「遊佐町共同開発米部会」と、日本の米育ち豚、三元豚でお馴染みの「㈱平田牧場」の2つの生産者が参加してくださりました。職員は合計13名が参加し、遠くですと愛知からの参加者もいました。
【1日目】
①生活クラブとの提携の歴史・遊YOU米ができるまでの学習
②7月25日の豪雨被害とその現状についての圃場視察
1971年より、遊佐共同開発米部会と生活クラブは53年間の長い歴史を築いてきました。その間、食文化の変化や高齢化、核家族化などによって、日本全体でパンや麺類の消費が増え、お米の需要が減少してきました。生活クラブも例外ではありません。
しかし、日本各地で多発する地震などの災害を背景に、お米を備蓄する動きが強まっていることから、令和の米騒動と呼ばれる現象も発生しています。この状況は生活クラブにも影響を及ぼしており、最近ではお米を確保するために、新たに加入を検討する方も増えてきています。
これは、日本が長年、輸入品や工業製品、特に自動車産業に重点を置き、第一次産業を支える取り組みが十分でなかったことが一因です。この課題に対処するために、生活クラブの組合員としてできることは、共同購入や定期購入(予約)を通じて生産者を支え、安定した供給をともに作り上げることです。
お米ができるまでの1年の流れ
3月
種もみを作り、お湯で消毒して、いもち病などの発生を防ぎます。苗を温室に移して育てます。
4月
田植えが始まります。
5月~9月
田んぼの雑草を取り除く作業が続きます。特に減農薬や有機栽培のお米の場合、この雑草取りが最も根気のいる作業です。田んぼに生える雑草の中でもヒエは見分けがつきにくく、手間のかかる厄介な雑草です。この作業が終わると中干しと呼ばれる、田んぼの水を抜いて肥料の効きを調整する作業を行います。
9月~10月
稲刈りが始まり、稲の実り具合や雑草の発生状況を確認しながら作業を進め、次年度の肥料設計や除草剤の計画の参考にします。最後に脱穀・精米を経て、みなさんのご家庭にお届けしています。
このように、安全で安心なお米を作り続けるためには、「予約して食べる」「約束して食べる」ことが大事です。
今年度、私は遊佐町共同開発米部会の皆さんや生活クラブ神奈川の組合員とともに、遊佐田んぼクラブでお米作りに取り組んでいます。消費者として生産者を見てきた立場から、実際に生産現場を体験することで、その努力や取り組みを直接感じ、生活クラブの消費材や生産者への愛着が深まりました。
豪雨の被害状況
7月25日の局地的豪雨の影響で、生活クラブに供給しているお米の生産者、特に中山間部の田んぼが大きな被害を受けました。遊佐町共同開発米部会の会長、今野修さんも中山間部でお米を作っており、現地で被害状況を視察しました。崩れた山肌からは赤茶けた土が見えてしまっており、稲の間には土砂や流木が流れ込み、排水路も倒木や岩でふさがれていました。コンバインでの稲刈りが困難なため、手作業で刈り取ることを検討しているとのことでした。
また、遊佐町共同開発米部会ではお米だけでなく、パプリカやアスパラガスも出荷しています。佐藤俊輔さんのアスパラガス圃場では、ハウスの倒壊は免れたものの、1/5が浸水しました。
同様に、榊原さんの田んぼと大豆圃場も被害を受けています。
田んぼでは稲の間に石や流木が流入し、機械が入ることが難しい状況です。大豆の圃場は一部浸水の影響で収穫が出来なくなってしまったそうです。道路に面したところに榊原さんの圃場はありますが、山から流れてくる大雨の影響で、道路までもが川のようだったと当時の状況を語られました。
【2日目】平田牧場での見学と学習
2日目は、平田牧場にて庄内食肉流通センターや冷凍保管庫、酒田京田ミートセンターを見学しました。庄内食肉流通センターでは、豚が数分で枝肉に加工される様子を見学しました。ショッキングな場面ではありましたが、命をいただくことの重みを改めて実感しました。この作業は、従業員一人の職人技によって支えられています。解体とパック詰めの作業が行われる酒田京田ミートセンターは、昨年9月に新設された工場で太陽光パネルが設置されています。
平田牧場との提携の歴史は豚の1頭買いから始まりました
開放的な環境で健康的に育てられた豚を見て、「この豚を食べたい」という組合員の思いから提携がスタートし、1頭買いして、共同購入で食べきることを約束しました。
しかし、現在ではお米と同様に豚肉の利用も低迷しています。理由の一つは、組合員の都合による需要が大きく変動していることにあります。「約束して食べる」から、「必要だから買う」に変化しています。
その影響もあり、冷凍保管庫には、消費されなかった在庫が棚いっぱいに積まれており、約2万頭分のお肉が保管されています(当日の説明では2万頭弱のお肉の在庫があり、1パレット500㎏、箱数にして17~30箱積まれていました)。
2020年頃から2023年の約3年間コロナ禍の期間は巣ごもり需要の影響もあり、利用は伸びましたが、現在では飼料の高騰や地球沸騰化によるコストが大きく値上げをせざるを得ない状況となりました。
また、輸入豚種の変遷による種の保管や維持が不安の種となっております。これにより多くの精肉重量を確保できますが、海外の消費者向けに改良され日本人向けではない可能性や、生まれた子豚の豚肉を食べるため、定期的に母豚を輸入する必要が出て、コストがかかるとの事です。
平田牧場の良質な白身(脂身)や赤身が食べられなくなることも予想されるため、生産者を支えていくためにも、食べ続けることがより重要となっています。
物価高の影響を受けているのは、私たちだけでなく生産者も同じです。生産者と作ってきた消費材を次の世代に受け渡すためにも、買い物は投票だと思って消費していきましょう。
【3日目】
研修の最終日には、職員一人ひとりが、お米や豚肉の利用をどう促進していくかを発表しました。また、消費地交流会のあり方についても議論し、今後の取り組み方針を共有しました。
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お肉に関して、私たちにできることは、部位バランスを意識し、全ての部位をまんべんなく消費することです。現在、バラ肉の利用が増えていますが、ひき肉の利用は減少しています。平田牧場では、豚の部位を余すことなく使用していますが、特定の部位に偏った消費は、全体のバランスを崩してしまいます。ひき肉、ロースブロック、ローススライスなどを組み合わせて利用することが大切です。
またお米に関しては、2024年夏に市場で不足する事態も起きましたが、安定的な供給と来年度の作付けの指標を定めていくためにも予約登録をして、無い時に購入するのではなく、生産者の安定的な供給を行えるようにしていきましょう。