<ひらけ!ガリ版印刷発信基地 by Hand Saw Press 「自分のポスターをつくってみる」参加メモ>

自分のポスターをつくってみる。
これは、本当によいワークショップだった。
そして、子どもから大人まで、あらゆる人々に参加をオススメしたい、可能性を感じるイベントだった。
リソグラフ楽しい!
ポスターづくり楽しい!
そして、自分と社会のことを、ざっくばらんに話せるのが面白い。

私は今年、国政選挙に出る候補者の公募に手をあげて、政治活動を始めることになった。
そうしたら、街の風景が違って見えるようになった。

「トラベラーズアイ」といって、しばらく海外に滞在してから戻ってくると、住み慣れた町が違ってみえることがある。
こんな色だったかな、こんな風に建物が並んでいたかな、人々はこんな動きをしているんだな…、と。

そして、政治活動を始めることは、まさにそういった「異なる目線」を獲得することだった。
その中で「ポスター」は、街が違って見えるのに重要な役割を果たす。

政治家には選挙区がある。だから、街に貼られている政治家や政党のポスターは、選挙区によって変わっていく。
街を移動するごとに、貼られているポスターやその中で主張している人の顔とともに、風景が変わっていくのだ。
いままであまり意識していなかったが、どのような建物にどの政党が、どのような貼り方で貼られているのかも、よく見てみると特徴がある。

自分が選挙に出る側になってみるとよくわかる。
ポスターは、自分と街を、自分と社会とをつなぐメディアだ。
そして、選挙に出るという被選挙権は、25歳以上の日本国民誰しもが行使できる。
さらにいえば、この街に、この社会に生きている誰しもに、ポスターで発信してもよいことがあるのではないか?

Hand Saw Pressの今回のワークショップの説明文は、「選挙ポスターは、街に開かれた印刷物」だという。
そうして視点で行われたワークショップでは、参加者の心が、隣の人に、みんなに次第に開かれていった気がする。
自分の印刷物は、これまで名刺ぐらいしかつくったことがなかった。
こうやってやれば、こんなに楽しいなんて!


以下に、ワークショップの流れにそって、楽しかったことを紹介する。

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<流れとポイント>

1: 参加者同士、話をする。
とにかく、ざっくばらんに自分の身の回りのこと、社会のこと、政治のこと、何でもあり。
 
→これが本当によかった。
まず普段、知らない人同士、違和感を覚えたニュースや不満、ましてや自分の悩みや日常での疑問など、話さないだろう。
仮に「話してみよう」という会があっても、なかなか言い出しにくいものだ。
でも、「自分のポスターをつくる」という共通の目的があるからこそ、話せる。
さらに、テーマは個々に任されているし、個人は多様だから、本当に自由だ。

日常では、「このテーマに触れない方がよいかな」、「場違いかな」、「反対意見だから言わない」「分かっていないから黙っておこう」「自分の話ばかりしてもよくないし」など、暗黙に従ってしまう空気がある。
でも、ここでは「自分の話」をいくらでもしてよい。なぜならポスターのテーマを決めなくちゃいけないし。
そして、何をテーマにしてもよい。だって、自分の主張を考えるのだから。

なので、今回のワークショップでは、フェミニズムや過労、パワハラ、好きな芸能人、政治、食、韓国、表現の自由など、様々なテーマについて、半ば混沌としながら話された。
そして、普段は言いにくい反対意見も疑問も、和やかでゆるい雰囲気の中で交わされた。
これが、私には今まであまり経験にしたことのない対話で、この空気を作り出せるということに、実は一番大きな可能性を感じた。


2: ポスターをつくる
写真をとり、書くことを決めて、版をつくる。
写真をそのまま掲載してもよいし、トレースしてイラストにする人もいた。
今回は2色、2版使えるので、どのようなレイアウトでどのように色を分けるかを考えて、色々なペンと紙の切り貼りで2つの版をつくる。


→まだ1度だけだが、ポスター作りの経験がある私が、一般的な基本要素をお知らせした。
・写真
・キャッチコピー
が基本要素。
また、それらしくつくるなら、
・肩書
があっても楽しい。
自分を説明する立場。

あとプロフィールとか政党名とか、掲載しなくちゃいけない情報とかあるが、ひとまずそれはおいておく。
  
また、コツとして私が言われたことをお伝えした。
・写真は、これでもかというほど顔が大きい。
撮影するのには、政治家ポスターに強いスタジオがある。
女性は笑顔が、と言われるが、本人がどうしたいかが一番だと思う。
「自分はどのような人物だと思ってほしいか」を考えて、構図、表情、服装とプロデュース。
ちなみに、自分の写真は自分で選ばない方がよい。
色々な人に意見を聞き、特に訴えたい対象の人に選んでもらうのがよい。
私も意見を聞いたところ、自分ではどうしても皺がなくて綺麗に見えるほうがよいかなと思うが、逆に「皺があったりした方が親近感がわく」というコメントがあった。

・キャッチコピーは、政治家として何をしていきたいかを、端的に示す。
自分のストーリーがあるとよい。ただ、私の場合は、一つに決めないでアップデイトしてもよいし、地域によって変えてもよいと思っている。

3: 印刷する
2つの版を、2つの色に分けて印刷する。紙も選ぶ。
→とにかく色が綺麗だし、紙の質や色によってのり方が違うので、何枚も刷ってみるのが楽しかった。
2つの色を組み合わせた中間色になるように、2つの版に重なる部分をつくったのだが、思った程色が混ざらなかった。
何度もやっているうちに技術が身につき、出来上がりイメージの想像がついて、さらに色々挑戦ができそうだ。
これは楽しい。 
  
4: 掲げたり、他の人のものを見て、さらに話す。
→他の人のポスターと並ぶと、さらに楽しい。
先ほど話していたことが、ポスターになるとしっかりと主張になる。
でも、リソグラフの手触りのある質感が、よい感じに主張を包み込み、コミュニケーションしやすくしてくれる。
これは素敵だし、さらに会話が進む触媒になる。

5: もちかえって、参加しなかった他の人にも見てもらう。
→これはドキドキするので、まだやっていない。
でも、見ればきっと、自分もやってみたい!と思う人が多いだろう。

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以上が、流れだ。

社会に対して、街に対して、常に発信を続ける政治のポスター。
政治家は特殊だと思っていたけれど、本当は、この社会に生きる誰しもが、個としての発信者になれる。

今回のワークショップで、この選挙ポスターというメディアが、
自分と街だけではなく、自分と隣の人を、他の人とをつなげてくれることを知った。

ワークショップとしてまたやりたいし、できれば私も展開していきたい。
中高生なんて、とても良いんじゃないかな。


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