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父を超える瞬間。Vol.57

第7話

前にも話した話だが
父は自分を怒ったこともないし
否定したこともない。
あれしろ これしろ
こうあるべきだという ことすら
言われたがことがない。

何をしても叱られない。
その一方で母はとにかく厳しかった。

だから怒られそうなことは
だいたい父に言う。

その典型的なパターンは夜中のおねしょだ。
普段は母親っ子なのに
夜におねしょをした時は
父を起こして
パンツを出してもらったり
着替えをさせてもらった。


父は自分には怒らないし、
叱らないし、
否定をしないと知ってるから
相談という名の
背中を押してもらうための会話は
いっぱいあった。


悪いことをしたときも
まず最初に父に言う。
やりかえしにいくときも
先生に文句を言いにいくときも
野球から引退をすると言ったときも
父は「そうか」と受け止め多くを語らない。


父は優しい。


だから房の駅をニューヨークに出すため
単身でアメリカに乗り込むことも
賛成すると思っていた。
ところが「ニューヨークに行きたい」と
言ったとき、父が反対した。


父からのはじめての反対に戸惑った。


なんで?
嫌な予感?!
第六感?!
試されてる?
意気込みをみせなきゃいけない?


兄からも「父が反対するならダメだ」と。


えーーーーーーーっ!!!!
まさかの反対‼️
ココで?!
自分も意固地になり
「反対されたって行くもんは行くわ!」
と息を荒げた。
そんな自分を兄はなだめながら
1人でも反対ならニューヨークには行かせない
と言い、父を説得しようと言ってきた。


後日、父と兄と自分と
3人で改めて
その場が設けられた。


せいじから一言どうぞ。
👨「ニューヨークに行きます」
沈黙が流れる。
👨「ニューヨークに行きます」
ふたたび長い沈黙が流れる。
すると兄が
「父さんはなんで反対なの?」と問いた。


👴「・・・・・・・。」
みたび沈黙。


重い空気を切り裂くように
父が言った。

「何しにニューヨークに行くんだ?」


え?!いまさら?!
「そりゃー房の駅をニューヨークに出そうと思うんだよ」と言った後、
ニューヨークに房の駅を出す理由を
並べたてようとした、その時だ。


父は
「そういうことか!留学とか遊びに行くのかとおもった。そういうことなら行ってこい」
と快くYES。


ポカーン😯
兄と顔を見合わせて笑いが止まらない。


ニューヨークに房の駅を出すということを
伝え忘れていたのか
伝えていたのに聞いていなかったのか
定かではないが
ニューヨークに房の駅を出すという発想が
父の発想の遥か上をいったのは間違いない。


笑ってはいたけど自分の中で
父を超えるときが来たとおもった。


『諏訪聖二、どうする父さん』Vol.51-Vol.60(全10話)


結局、ニューヨークには房の駅を出すことは
できなかったけど
反対をしない、
否定をしない
そんな父のおかげで今日の自分がいる。
あれ?俺の唯一のカタチにできなかったことが
ニューヨーク?
反対されたの合ってるのか‼️

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