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相対論的ジェットの謎に迫る

宇宙におけるジェット 

 宇宙における ”高エネルギー現象” と呼ばれるものの中に ジェット がある。

ジェットと聞くと、ジェット機のように勢いよく何かが噴出するイメージが有るが、ここでいうジェットもイメージ的にはそんな感じらしい。

ジェット機のジェットは、エンジンで空気を吸い込んで圧縮して燃焼に適した状態にした空気を燃焼することで作られる。

ターボファンエンジン

では、宇宙におけるジェットのエンジンはなんだろう?
今回はこのジェットの機構に着目して考えていく。

ガンマ線バースト ~歴史背景~

宇宙でジェットと聞くと、ガンマ線バーストを思い浮かべる人が多いかも知れない。高エネルギー現象の代表格で人気も高い(ように感じる)。


Credit: NASA/Swift/Cruz deWilde

ガンマ線バーストは、超新星爆発と同程度のエネルギー ($${10^{51} \rm{erg}}$$) をより質量の小さな物質に分け与えるので、結果として相対論的な速度で膨張するモデルが考えられている。

では、なぜそのようなモデルが必要なのか?

そもそも、ガンマ線バーストは 0.1-1000秒程度の短い時間で突発的に飛来するガンマ線のことをいう。バーストは激しく時間変動しており、その時間スケールはざっくり 1 ミリ秒 ぐらいだという。

変動の時間スケールは、光がその天体を伝播するのにかかる時間に依存すると考えることができるので天体の大きさを $${R}$$ とすると、

$${R = c \Delta t = 3\times 10^7 \ \rm{cm} = 3\times 10^{2}\  \rm{km}}$$

程度以下と見積もられる。結構小さい。天体でいえば、白色矮星だとはみ出してしまい、中性子星やブラックホールが収まる程度だろう。

さらに、観測から示唆されることがいくつかある。

  • スペクトルがベキ型 → 光学的に薄い

  • 天球分布が等方的 → 銀河系外の遠方天体

こうして導かれた天体の大きさと、上記の2つが問題を起こしてしまう。

ガンマ線バーストが系外の天体由来だとして、その距離をざっくり $${d = 1\ \rm{Gpc}}$$ と考えてみよう。放射のフラックス$${F\  [\rm{erg/s/cm^2}]}$$は観測から得られるので、天体の光度 ($${L [\rm{erg}/s]}$$ )は、

$${L = 4\pi d^{2} F \simeq 10^{51}\  \rm{erg \ s^{-1}}}$$

となる。これからおおよそのガンマ線光子の数密度が求められ、

$${n_{\gamma} = \frac{L}{4 \pi R^2 \epsilon c} \simeq 10^{30} \rm{cm^{-3}}}$$

となる。これは光学的に薄いベキ型のスペクトルと矛盾する。

観測で得られた高い光度と薄いベキ型のスペクトルの両方を説明するために考えられたのは、はじめに概算した天体の大きさが 相対論的ビーミング効果 を受けており、実際の輻射源はもっと大きいサイズであるというモデルである。

これを実現するために、最初に述べたような高エネルギーを小さな質量に押し付けるモデルが考えられた。

今日はこのあたりで、次回

  • 相対論的ビーミング効果

  • ファイアボールモデル

について触れたいと思います。


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