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あなたも健康で120歳まで生きられる?

  無病息災、不老長寿は誰しもが抱いている願いだろう。では人はいったい何歳まで元気に生き続けられるのだろうか。

 1997年に亡くなったフランス人女性、ジャンヌ・カルマンさんは122年と164日というギネス世界長寿記録を打ち立てている。100歳を超えても彼女はひとりで自転車を乗り回し、121歳の時にはラップ音楽などのCDを発表したというから驚きだ。考えてみれば彼女は蓄音機が発明される以前に生まれていたのだ。

 彼女の長寿記録に異議を唱える研究者がいないわけではない。娘のイヴォンヌが相続税を逃れるために99歳で亡くなった母親と密かにすり替わったというのが彼らの主張だ。本当のところは未だに不明だが。

 日本でもカルマンさんに負けないくらい元気な人がいた。プロスキーヤーで冒険家の三浦雄一郎さんの父、三浦敬三さんである。2006年に101歳で亡くなられたが、日本スキー界の草分けのひとりとして白寿(99歳)でモンブラン山系の氷河バレー・ブランシュを滑降するという快挙を成し遂げている。

 70歳でエベレスト登頂に成功した雄一郎さんと東京銀座でお食事をする機会があったが、敬三さんは骨折しても医者に行かずに自力で治してしまったそうだ。まさに超人的体力と精神力の持ち主だったわけだ。

 私にはとてもそんな真似はできないと思っていたら、誰でも元気に長生きができる薬の開発がもう目前に迫っているという。米国の連邦国立老化研究所(the federal National Institute on Aging)ではすでにマウスの寿命を200%延ばす研究が進んでいるそうだ。

 動物の延命メカニズムはすでに前から解明されている。ひとことで言えば、カロリーの低い食事を与えるのである。通常より3~4割少ないカロリーのエサしか与えられなかった動物は、生命維持と種の保存のために3~4割も長生きすることが実証されているのである。CR(caloric restriction カロリー制限)と呼ばれる方法だ。

 しかし、よほどの物好きか変人でないかぎり、食べたいものも食べられずにガリガリに痩せた体で長生きしたいとは思はないだろう。そこで期待が寄せられているのが長寿薬である。美味しいデザートを心置きなく食べながら無理をせず元気に老後が過ごせるとしたら、こんなにありがたい話はない。

 すでに存在する薬品にも延命効果があることも分かってきたという。例えば、メトフォルミン(metformin)などの糖尿病薬はCRと同じような効果があるし、アスピリンのような鎮痛解熱薬にも老化を遅らせる効果があるそうだ。さらに、赤ワインに含まれているレスベラトロール(resveratrol)は細胞を長生きさせる。これならいくらでも飲める。

もちろんすべての人が人工的な延命に賛成しているわけではない。人は自然に生まれ、自然に死ぬべきだと考えている人もいる。しかし考えてみれば、衛生管理や抗生物質、さらには車のシートベルトだって人命を人工的に延ばしているではないか。この流れはもう止められないだろう。

 その証拠に、これまで幾万冊という健康本が出版されてきた。例えば、『The End of Illness”(病気にさよなら)』。著者は南カリフォルニア大学の著名な腫瘍学者デビッド・アガス博士だ。彼は、亡くなったアップル創設者スティーブ・ジョブズ氏担当医のひとりとしても知られている。

 内容を一言でいえば、病気になって治療するよりも病気にならない身体をつくれということ。ごく当たり前の話なのだが、ポイントは癌に関しても同じことが言えると主張していることだろう。その為には体内に異常があるときに起きる炎症を抑えることが大切だという。それによって、癌だけでなく心臓病や糖尿病、痴呆症まで抑制することができるのだそうだ。

 薬としては、コレステロール値を低下させる薬スタチンや低用量アスピリン(baby aspirin)などが効果的としているが、薬には必ず副作用があるから使用にあたっては必ず事前に信頼できる医師と相談することが肝要だ。

 炎症を抑えるもっと簡単な方法があるとアガス博士は言う。

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