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五輪に血税が注ぎ込まれる今、改めて税のことを考えた

 その昔、ローマ皇帝アウグストゥスが「この世にあるものすべて税を払うべし」と命令して以来、人類は税金に悩ませられ続けてきました。多くの納税者にとって税金は負担としか感じられず頭痛の種だからです。

 米国の独立が英国から課せられた税金(茶税)の支払いを拒否したことから始まり、ギャングの親玉アル・カポネが問われた罪が殺人でも強盗でもなく所得税の支払いを怠ったことだったことを見ても分かります。


◎ 課税額の限界は

 課税の上限はどのあたりが適当なのでしょうか。「金は入っただけ出る」というパーキンソンの第2法則によれば、納税者の拒否点は古代では総生産の20%程度。それを超えると納税者は税金逃れに走るようになったとのことです。一方、英経済学者コーリン・クラークは1945年、国民所得の25%を超える課税は税金の目的自体を達成できなくなるからです。

 それでも1913年に1~3%だった米国の所得税は1955年には最大87%まで上昇しました。それではまともな社会を保てるわけが無いと思いうかもしれませんが、じつはそうでもないケースがふたつあります。

 ひとつは、戦争のような状況。自分たちの生存を賭して戦っているとき人々は重税をいといません。命がけとなれば反対できのです。その証拠に戦争に明け暮れた英国では多年にわたって国民所得の40%に達する税が議抗議なしに支払われていました。

 ふたつ目は、納税者の倫理観や公共心が高く政府に対する信頼度が高い場合です。例えば、デンマークの税率は所得税55%、消費税25%、車の購入は280%ですが、世界一幸せな国ランキングでは毎年のようにトップ3にランクされています。少し詳しく見てみましょう。

◎ 税負担は大きくても幸せな理由

 デンマークでは国全体で稼ぎ出すお金の大半を国家が一度集めてしまい、それをみんなが利用する教育やサービスや困っている人を救うサービスに投じる「共生」の精神が浸透しているのです。多くの国民が「税金が高くても、国が生活の面倒をみてくれるのだから納得できる」と考えているわけです。税負担7割で格差を生みにくい社会をつくっているのです。

 その背景にはふたつの重要なポイントがあります。ひとつは税の透明性。企業も個人も登録番号制度で管理され、銀行は年末になるとすべての口座所有者の預金残高を税務署に通知する義務があります。個人が所有する株や公債,社債などについても同様で脱税が難しい制度です。

 政治は一院制で、国会議員の年収は日本円にして約750万円。大卒サラリーマンの給与より低い。地方議員にいたっては無給のボランティアです。毎年、何千万円も貰ってろくな仕事もせず金が足りないと文句ばかり言っている日本の国会議員は彼らの爪の垢でも煎じて飲んだ方がいい。悪徳議員はただ罷免罷免してもらいたいものです。

 もう一つは理由は歴史にあります。近代デンマークの歴史はナチスドイツとの国土争奪戦の歴史でした。その中から「自分たちで協力して国家を守るしかない」という共通意識が国民の間で生まれたのです。これが今日のデンマークの社会福祉政策の根幹にある「共生」精神です。

 デンマーク憲法では徴兵制度を定められています。しかし兵役を志望する若者が増えているため徴兵する必要がないのだそうです。政治参加も活発で、投票率は80%以上と高い。自分たちの生活を守ってくれる政治家を真剣に選ぶからです。日本の若者も少し彼らを見習ったらどうでしょうか。

◎ アンデルセンは大人の教科書

 デンマークはアンデルセンの童話でも有名だが、現地ではアンデルセンは正義を語る哲学者として評価されています。なぜなら『親指姫』は試練と希望、『人魚姫』は親の愛、そして『裸の王様』は権力にしがみつく人間の愚かさを教えているからだそうです。日本の文科省や先生もアンデルセンから学び直す必要がありそうです。

◎ タックスヘイブンはなくならない

 日本では消費税増税に関しての賛否の議論が喧しいですが、個別の税だけを取り上げて議論をしてもあまり意味がありません。金儲けに余念のないお金持ちや企業が税負担が限りなくゼロに近く守秘性が高いケイマン諸島や香港などの「租税回避地」を使うからです。

 今や世界の貿易取引の少なくとも半分以上がタックスヘイブンを経由しており、犯罪組織の資金洗浄の温床ともなっています。

 租税回避は合法的な節税と違法な脱税の間のグレーゾーンに位置しており、行き過ぎた節税行為として国際的に批判が高まっています。しかし、金融市場はグローバル化でひとつですが、税制は国ごとに異なった居るため、課税ルールが統一されない限り、タックスヘイブンは無くなりそうもありません。

 一方、政治家がまずなすべきことは、国家が支出できる金額を知ることです。過去の浪費分ではなく、真っ当に手にすることができる税収額です。本来はその金額内で予算を立てるべきなのです。なぜなら歳出にあわせて歳入を得ようとすると必ず失敗するからです。残るのは借金だけ。個人には借入の限界があります。しかし政府の場合は債券を発行できるため支出に歯止めがかからず、借金が雪だるまのように膨れ上がるのが問題です。いずれ破たんするか戦争を起こすしかなくなるのですから。

 平和の祭典といわれるオリンピックも、終わってみれば開催都市や国の財政的負担増という負の遺産を残しているのが現実です。

                                                                           (写真はinc.com)






 

 

 

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