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ドナルド・トランプJr.がえげつないTシャツを売り出したわけ

 英語には”Like father, like son"(この父にしてこの息子あり)という表現がある。息子は父親の強い影響を受けて育つものだという意味だが、まさにその通り通りの出来事が米国で起きた。

 トランプ前米大統領の放蕩息子ドナルド・トランプ・ジュニアが、こともあろうに失意のどん底にある有名俳優アレック・ボールドウィンを馬鹿にしたTシャツをネット上で販売していることが明らかになった。まさに父親譲りのえげつなさである。

 この27.99ドル(約2900円)で売られているTシャツの胸には大きな白抜き文字で“GUNS DON’T KILL PEOPLE、 ALEC BOALDWIN KILLS PEOPLE”(銃は人を殺さない。アレック・ボールドウィンは人殺しだ)とプリントされているのだ。

 これだけでは何のことだかよく分からないという方が多いだろう。じつは米国では今、ニューメキシコ州でボールドウィン主演の西部劇映画「Rust」の撮影中に起きた銃の誤射事件のニュースで持ちきりなのだ。なにしろ、助監督から「コールドガン(弾丸が装填されていない銃)」だといわれ手渡された銃を発砲したのが他ならぬボールドウィン(63歳)自身だったからまさに衝撃的。

 42歳の女性撮影監督のハリーナ・ハッチンズが搬送先の病院で死亡が確認され、ジョエル・ソウザ監督も負傷した。

 詳しい状況はまだ捜査中だが、ボールドウィンがカメラに向けてすばやく銃を撃つシーンのリハーサル中に実弾が発射されたとのこと。ショックを受けた同氏は警察の捜査に全面的に協力しているとし、「彼女の夫や子供、ハリーナを知り愛していた人のことを考えると胸が張り裂けそうだ」とツイッターに投稿している。

 撮影現場では以前から過酷な労働環境や銃の安全管理に問題があったとの  関係者証言があるが、本物の銃や実弾を持ち込むなどもってのほかだ。もしかすると刑事事件に発展するかもしれない。

 それにしても、トランプ・ジュニアはなぜそんな悲劇的な出来事の最中に悪意丸出しのTシャツを売り出したのだろうか。じつはそれには理由があった。

 アメリカのNBC放送で毎週土曜の深夜に放送されている人気コメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ(SNL)」の中でボールドウィンは幾度もトランプ前大統領の扮装をしパロディ化して話題になっていたのだ。そのモノマネのそっくりさと皮肉の辛辣さにはSNLファンのひとりである私も腹を抱えて笑った。
 
 だが、その名演技を人一倍自尊心の高いトランプ大統領とそのセレブ一家が喜ぶわけがない。「(ボールドウィンとSLNは)民主党の情報洗脳装置だ!不公平な民主党のコマーシャル以外の何物でもない!裁判にかけるべきだ。違法だろう!」とトランプは在任中もお得意のツイートでそうボールドウィンとSLNを口汚く攻撃していた。

 そんな敵対関係の中で、ボールドウィンの誤射事件が起きてしまったのだ。さっそく同氏に対する積年の恨みを晴らすべく銃愛好者のトランプ・ジュニアが悪趣味なTシャツを売り出したというわけだ。「やられたら10倍返しでやりかえせ」がモットーのトランプ一家はとにかく執念深い。

 だが理由はそれだけではない。じつは・・・

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