御祭神がわからない場合は?
さて、参拝についてもう少しお話ししましょう。皆さんが初めて参拝する神社を訪れたとき、御祭神は? と真っ先に由緒書きを探しますか。ガイドの方の説明があれば別ですが、一般の方は、案外気になさらない方が多いことにお気づきでしょうか。お社を見て社頭で手を合わせて、そのままお帰りの方が多いようです。
もちろん、よく寺社巡りをされる方は、事前に調べたり、由緒書きを丹念に読まれたりいたします。しかし、それでも聴きなれない御神名に出会ったことはありませんか。私は始めて聴く御神名が少なくはありません。
素朴な疑問ですがと言って、ご質問を頂いたことがあります。「少人数のグループの方が、社頭で参拝した後、境内の休憩所で休んでるときに、そこに置いてある神社の栞を手にとって初めて祭神を知ったようだった」というものでした。このように参拝者が御神名を気にしないのはごく普通です。別に神社を軽視しているわけではありません。大げさに言えば、これが神社の謎の一つです。
みなさんは、ご自分の生まれた地の氏神さん、今住んでるところのお祭りのある神社の御神名ー神さんのお名前を知ってますか? はちまんさま、おてんのうさま、おすわさま、てんじんさま、おいなりさん・・は答えられると思いますが、神さんのお名前はいかがでしょう。おそらく観念的に言えば、はちまんさまの神さまで済んでいるはずです。私たちは、○○の神さま、○神さまのくくりで事足りているはずです。これは何故でしょうか。
私たちの一番身近な神さまは氏神様です。正確には、うぶすなのかみ(産土神)と言います。われわれが生まれた土地を守護してくれている神さんです。本をただせば血縁的な集まりであったものが、地縁的な集まりになってきて、やがて村になって、人々が共同でお祀りするようになった地域の神社の神さんです。
じつはこの神社の神さんのお名前、すなわち御祭神名が不詳なのが多いんです。不明のままでも、村の神さんで、村を守ってくれているという信頼が、我々に共通してありました。これが氏神さまです。神社の原型がこの産土神社にあるわけです。祭神名が不明でも信頼がおける理由がこれなんです。お年寄りが、並んだ路傍の神々に手を合わせている姿をご覧になったことがあると思います。心から信頼している様子が伺えます。
はちまんさま(八幡宮=応神天皇)、おいなりさん(稲荷神社=宇迦御魂命)などは、御祭神名や御神徳を調べてみるとすぐ判ります。また、全国的にあることもご存知でしょう。これらの神社や神さまは、つとに有名で明白です。それは、その地に本祀よりご分霊を遷し祭る、すなわち目的があって勧請したからです。その理由は、個人の問題を解決することに主体がおかれています。したがって同じ祈願を持つ人が、その神社が鎮座する地域以外からも、わざわざ参拝にやってくるのです。
この二つの流れがあることを心に留めて、ご神気に触れ、ご神気浴を試みていただきたいと思います。地域の守りとしての欠かせないものであることを理解し、また、個人の生活の不安を取り除いてくれる存在として、日々のおかげさまを感謝する場として、われわれの崇敬心を育ていきたいと思います。
個人の祈願やご利益への考え方はここから出発したものでなければなりません。
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