pool

これはpoolという、30個の短歌です。


crater

おなじばしょは、いつもおなじなまえでよばれていて、わたしたちがであうのはそういうばしょでした。

そらは、ひとつのほしよりおおきいから、わたしたちはしらないふりができませんでした。

はなしはじめると、いつもじかんがすすむので、わたしたちはむかしばなししかはなせませんでした。

ことばは、べつにそういうふうにはできていないのに、わたしたちはいつもはなしおわりました。

ほんとうにふるいことばは、もうことばにみえないので、わたしたちはみているだけでまんぞくしました。

ちかくのひとは、とおくのひとをかくすので、わたしたちはひとのかずをかぞえきれませんでした。

ほしは、だれにもおおきさがわからなかったのに、いつもなまえがついていました。

わたしたちは、すべてになまえをつけることができましたが、すべてのものをみることができませんでした。

わたしたちは、たくさんうまれていきていたから、たくさんしんでしまいました。

わたしたちは、みんなしんでしまったから、みんなしんでしまったことにきがつきませんでした。


parade

おわるころにはわたしもわすれてしまった、わたしのながいおはなしに、あなたはうなずきました。

ゆめのなかで、あなたのあとをおいながら、じぶんがみているゆめだとだれもがおもっていました。

わたしたちは、あるいてきたほうへもどってきても、わたしたちにはであいませんでした。

わたしは、こえをだしたさきへあるいてみても、そのこえはもういちどきこえませんでした。

そらは、みんながみていたから、ことばでわかちあわなくてもだいじょうぶでした。

わたしたちは、いつまでもであいませんでしたが、どちらもしぬまでいきていました。

ことばには、わたしのしらないつかいかたがあって、わたしはあなたのことをかんがえられませんでした。

あなたは、わたしのしらないことばしかしらなくても、わたしのことをはなすことができました。

ことばは、いちどもそんざいしていないわたしのことを、あなたがはなすためにありました。

わたしたちには、もうわすれてしまったことばがあって、はなせないことがたくさんありました。


value

わたしたちは、まだことばをしらなかったので、ゆめでみたことをだれにもつたえませんでした。

わたしたちは、まだうたをしらなかったので、ゆめできいたものがなにかわかりませんでした。

ことばは、わたしたちがそれをうたうまで、かってにうたにはなりませんでした。

わたしには、ききとれなかったことばがあって、それがことばだったのか、もうわかりませんでした。

こえは、わたしよりさきにいってしまうので、わたしはそのけっかをしらなくてもだいじょうぶでした。

わたしたちは、ほんとうにちいさなこえでうたったのに、こえはうたになりました。

わたしたちは、うたっているあいだははなしをきかなくてすむので、しあわせでした。

それは、わたしにはうたにきこえなかったので、わたしはうたをひとつききそこねました。

うたになったことばは、わたしたちがわすれてしまっても、もうずっとうたのままでした。

わたしたちは、ことばがなくてもうたえたから、ことばをわすれてもだいじょうぶでした。

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