しかた9

谷地

みぞれにぬれてちょうど棒のような帰路に本日の才能ある雀蜂やみなさん

こわいということもないな白身が一瞬の地層に身代わりも立てられるし

なんとも鱏のあくびのような広い夜だ胡桃をよく茹でたお湯が残る

外套に覆われた遠くのふたりぐみは落ち着いた犬どうしに見える

堰を強く流れ落ちる川の水を見下ろすと職員も見ている

めひかりの胃の中の星座はてらてらとし ここの酸素の具合も見事だ

裏杉の間伐材が横たわりこのようですらあり得るのか景色め

食通がパラシュートで降りてくるような清潔な砂丘に来なさい

雪原をひとりで溶かしきるかたつむりは手術のように集中している

なんでもそう珊瑚樹の生垣が尽きるあたりに冗談みたいに朽ちている茣蓙


halo

おなじばしょは、おなじなまえでよばれていて、ふたりがであうのはいつもそういうばしょでした。

こえをだすと、そのあいだにじかんがすすむので、ここではむかしばなししかできませんでした。

せかいはたいらだとおもったひとが、どこまでもとおくをみようとしました。

わらったら、みんながふりむいてそれをみるので、みんながそのかおをまねることができました。

そらは、ひとつのくによりおおきくて、しらないふりがなかなかできませんでした。

みんなは、やまになまえをつけましたが、どこからがやまなのかいつまでもわかりませんでした。

ちかくのひとは、とおくのひとをいつもかくすので、だれもひとのかずをかぞえきれませんでした。

ほんとうにふるいことばは、もうことばにみえないので、それをみただけでみんなはまんぞくしました。

だれからもわすれられたひとが、だれかのことをわすれることはべつにありませんでした。

そのむこうがわをかんがえなくてもすむように、ひとはやまよりもおおきくなりませんでした。

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