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❖読書:失敗の本質

私が今の会社に入社して2年目だったか、3年目だったか、田舎に帰省した時に亡父がこの本を読んでいた。
そして、この本を亡父から引き継ぎ、今も読み続けている。
この本も何回読んだのか、わからない。気になった時に読んでいる。
話は太平洋戦争、日本はどうして戦争に負けたのか。
物量面だけを考えれば、アメリカに勝てるわけがないのだが、日本は理論面では比べ物にならないくらい劣っていた。
ご都合主義、事実誤認、勝手な解釈、大和魂的精神論、身勝手な判断、指示不徹底、無責任など、列挙し出すとキリがない。(現在にも通じるが)

ミッドウェイ海戦に勝利し、アメリカを交渉の場に引きずり下ろして政治的に解決するのが筋書だったのだろうが、勝手に作られた筋書を現実は許さない。日本海軍側の作戦行動がアメリカの暗号解読・分析力である程度のことは事前に把握されていたことは事実だが、そもそも日本海軍の作戦目的自体が曖昧だったことが敗戦の最大の原因だった。

山本五十六が指令した作戦は「ミッドウェイ島を攻略するとともに、出現する敵空母を撃滅するにあり」(そのままではない)だった。
この「・・・するとともに」が作戦自体の優先順位を過させる原因になる。
島への攻撃を優先するのか、それとも敵空母への攻撃を優先するのか。
指令は両方やれということなのだろうが、そんなに都合よく敵が動くわけはない。
一方、ニミッツはハワイ島から敵空母のみへの集中攻撃を指令している。
後にニミッツはミッドウェイ海戦を振り返り、「二重目的(Dual Purpose)は必ず失敗する」と言っている。余談だが、この言葉は私の座右の銘的な位置を占めている。
元寇での偶然の勝利を引き合いに出し、神風が吹くとでも思っていたのだろうか。

余談だが、永井荷風の断腸亭日乗を読むと当時の国内がどうなっていたいのか、垣間見ることができる。
日本軍の暴走だけではなく、国内・国民そのものが参戦することを肯定していた。それは日露戦争で勝利したにも関わらず、戦利品(物理的利益)が得られなかったことも原因なのかもしれない。
日本国そのものが暴走した。
真珠湾攻撃の日、銀座の町は勝利に興奮する国民に包まれていた。(永井荷風はクールな目で観察しているが)

この本に書かれていることは過去の失敗の検証だけではない。
主語を変えれば、現代に十分生かされる内容が盛り込まれている。
見方を変えると現代も同じ失敗を繰り返す可能性が十分にあるということなのだろう。
過去の成功事例、過大評価・過小評価、情緒的空気、組織的構造、長老体制、学習棄却等、キーワードがたくさんある。

この本は最後に問いかける。
新たな環境変化に対応するために、自己革新能力を創造できるかどうかが問われている。

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