見出し画像

工藤あゆみ『今日は自習にします』の今日のこぼれ話 vol.5

しあわせの計算、人生の作文、月のように満ち欠けする体と心……。
45の教科と学校の時間をキーワードに、日々を大切に歩むヒントを絵とことばで紡ぐ『今日は自習にします』(工藤あゆみ著、2023年6月下旬発売)。

本書の刊行を記念して、書籍掲載作品の一部と、その作品に著者が寄せたことばを「今日のこぼれ話」としてご紹介します。


私はなんでも食べる子どもだったけれど、昼休みになっても席に座り、お皿に残る苦手な食材を睨むクラスメイトを横目で見るうちに自分までその食材が好きではないと錯覚をするようになりました。
ある子が嫌いだったナス。別の子が嫌いだった椎茸。また別の子が嫌いだった酢豚のパイナップル。
そうやって私のいくつかの「好きでも嫌いでもない」が「好きでない」にすり替わっていきました。
私が本当に嫌いだったのはグリンピースだけ。「嫌い」に乏しかった私には仮初(かりそめ)のそれが増えていくのが楽しく、そして好きではないのに頑張って食べる自分エライ!と小さな悦に入り満足しては昼休みの校庭に駆け出していました。

そういうことを繰り返しているうちに酢豚のパイナップルは本当に嫌いになりました。
グリンピースは、特に、冷凍のじゃないやつは、おいしいと思うようになりました。
椎茸が嫌いだった子の顔は今でも覚えています。
給食でもう一回食べたいのは鯨の竜田揚げです。
こういう思い出話が大好物です。[給食]

過去の投稿はこちら

書籍情報
今日は自習にします
著者:工藤あゆみ
定価:1,980円(本体1,800円)
アートディレクション:小熊千佳子
判型:180×140mm
製本:コデックス装
総頁:72頁
ISBN:978-4-86152-920-7 C0071
https://www.seigensha.com/books/978-4-86152-920-7/


著者プロフィール
工藤あゆみ(くどう・あゆみ)
1980年岡山生まれ。イタリア国立カッラーラアカデミア美術大学絵画科卒業。絵と文章からなる作品を中心に独自の世界観を展開、ヨーロッパや日本で発表を続ける。
2021年第14回岡山県新進美術家育成「I氏賞」大賞。
ボローニャ国際絵本原画展2012年、2019年入賞。
プレミオサンフェデーレ大賞2011/2012(ミラノ)2位。
2018年「はかれないものをはかる」2021年「キスの練習をしています また会える日のために」(ともに青幻舎)2022年「il sospiro della mamma」(Lazy Dog Press)を刊行。
2002年よりイタリア在住。現在、ミラノ近郊の街に彫刻家の夫と娘と暮らす。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?