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EV市場はどんどん拡大(中国自動車市場#1)

21年度の中国自動車販売台数は、2,628万台(対前年+3.8%)。一方で新エネルギー車(NEV=BEV、PHEV,、FCV)の販売台数は353万台(対前年+157.5%)で、大きく伸長しました。

NEV比率は13.4%に到達し、日本のEV普及率1%以下と比べて、大きく差が開く展開。

とはいえ、この状況はまだまだ中国にとって序章に過ぎません。彼らが計画している中国「NEV産業発展計画(2021~2035)によると、NEV販売比率を2025年:20%、2035年:50%と、欧州同様に高い計画を立てています。

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00326/072700002/
"日経ビジネス"から引用

2035年にNEV比率が50%を超え、新車販売の主流になる計画ですが、個人的にはもっと早い段階でNEVが占める新車販売の割合は、過半数を占めるのではないかと感じています。

22年末で補助金が無くなり多少販売に影響がでるとしても、今の中国のトレンドからすれば、25年までにNEV比率20%越えは間違いないと思います。

そもそも、中国はなんでこれ程までに、国をあげてEVに力を入れているんでしょうかね?その背景を少し振り返ってみたいと思います。



1.中国EV推進の背景


EV推進の背景、それは中国というか、中国共産党の壮大な夢を実現させるための取り組みのひとつとして、NEV推進が含まれているからです。

2012年、習近平は「2つの100年:中国共産党設立100年=2020年、建国100年=2050年」において、以下3つの目標を立てました。

  1. 2020年までに「ややゆとりのある生活ができる社会(小康社会)の全 面的建設」を予定通り完成させる

  2. 「社会主義現代化の基本的実現」を2035年までに達成し、先進国の仲間入りをする

  3. 2050年の「建国100年」には「社会主義現代化強国」を実現し、世界の先進国のトップグループに入る

これらの目標を実現するため、世界をリードする強国の仲間入りするためには、どうしたら良いのか?と中国は考えたところ、他の先進国が持っているような”強い製造業”が不可欠と判断したんですね。

2012年当時、世界の工場と呼ばれるぐらい、中国では沢山ものをすでに製造していたことは周知のことですが、部品、素材、設備については日米欧等の先進国からまだまだ輸入していました。特に製造業のコアとなるような基幹部品(減速機やサーボメーター等)に関しては、ほぼ輸入に頼っていたのが実態であり、この点、先進国と比べて遅れていたことは、中国としても弱点として認識していたようです。

さらには、ドイツが”インダストリー4.0"で製造業の改革、2012年にオバマ政権が製造業への回帰戦略打ち出す等、外部環境が一変する状況となった。この先進国の再工業化に中国は刺激を受け、2015年に国家戦略として”中国製造2025”を打ち出したんですね。

この戦略での10大産業のひとつに、”NEV推進”が掲げられました。その内容は以下の通り。

”省エネ・新エネルギー自動車:EV・FCVの推進、電池、駆動装置、スマート製造などの強化、中国ブランドNEVが世界一流水準へ”

家電(ハイアール等)、IT製品(シャオミ等)は世界市場を圧巻していましたが、製造業の中でも主要産業である自動車は、まだまだ遅れていました。そんな背景から、中国は国家戦略としてNEV推進を進めるようになったわけです。


2.なぜ、2021年に中国でEVはこれほど拡大したのか?

マクロ・ミクロ目線でみると、4つの点が、大きくEVが伸びたことに起因しています。

マクロ:① コロナ後リバウンド需要、② 補助金延長
ミクロ:③ 高級EV路線の台頭、 ④ 低価格EVの伸長

① コロナ後のリバウンド需要
ゼロコロナ対策を筆頭に、厳格なロックダウン政策を実施した結果、中国自動車市場は2020年半ばから回復し、販売台数は対前年を上回る勢いで伸びてきました。それはひとつに、コロナ影響での外出規制にともなって、自動車購入が出来なかった期間のリバウンド需要が、コロナ後にやってきたこと、そして、感染防止対策においてもマイカーの重要性が高まったことによって、販売意欲が刺激されたことによるものです。

② 補助金延長
新エネ市場拡大のために、中央政府に加えて一部の地方政府も購入補助金を出していました。一時、新エネ車1台の購入に対する補助金総額が最大12万元(200万円近く)に上ることもあった補助金ですが、当初の計画では2020年に終了する予定でした。しかし、コロナの感染拡大によって販売が低迷したことによって、2023年までの延長を決定し、中国政府としては、補助金によって新エネ車購入需要を刺激し、市場を成長させれば、支援なしでも新エネ車を購入する流れが構築できると考えたようで、実際に2021年のNEV販売は飛躍的に伸びたわけです。

③ 高級EV路線の台頭
それまで中国でEVと言ったら、ガソリン車モデルをEVにしたものが大半であったものが、テスラの影響により、大きく風向きが変わりました。特に2020年にギガファクトリー3を、上海で稼働させた後、現地生産されたモデル3が販売開始となると、20年のEV乗用車でモデル3はトップとなり、中国の地場ブランドを大きく引き離すことになりました。そのテスラを、中国新興メーカーのNIOやLi Autoが追いかける形となり、中国の大都市において、高級EVブームに火がつき始めました。

④ 低価格EVの伸長
一方で、地方都市・農村では、上海GM五菱汽車が20年に発売した「宏光MIMI」を筆頭に低価格EVの販売台数が大きく伸長。2.8万元(約46万円)で販売し、低価格・小型EVの新たなトレンドを作りました。安価、簡易で移動するための手段としてきた地方都市・農村でのユーザーにとって、低価格EVは新たな選択肢となったわけです。

このように、中国の中でも、各都市のユーザーニーズに合わせたEVを供給することで、低価格と高価格路線、両面でEVが普及、さらにはコロナ後のリバウンド需要や補助金延長等のマクロ的な効果が相まって、2020年後半から2021年にかけて、中国でEVが爆発的に売れたわけです。


ではでは、今日も1日頑張っていきましょー!

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