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蜜蜂の馬車に乗って(その12)

さながら嵐のような三日三晩の雨風の翌日は早朝から青空いっぱいの

この上ない晴天となりました。これを台風一過というのでありましょうか。

おじいさんおばあさんよりも少し早く起きたミッちゃんは玄関の戸を開けると一番に蜜蜂の巣の下に駆け寄りました。そうして巣が何事もないことを確かめると急いで囲いのむしろを外したのでございます。

『ああ!よかった』とミッちゃんは思わず大きな声を出しました。

みっちゃんのその声に誘われたのか一斉に蜂たちは飛び始め、ある蜂は東へ

またある蜂は西へと、東西南北へと元気良く飛び出して行きました。

やがて巣の中からひときわ大きな女王蜂が飛んできて迷わずミッちゃんの頭の上に止まったのです。みっちゃんはしばらく頭上を見やりながら何事か合図を送り合い確認しているようでした。

まるで女王蜂は『ありがとう』をミッちゃんは『よかったよかった』を繰り返しているような「親と娘』の仲睦まじい語らいのようでした。

やがて『ミッちゃんは今朝も早いのう』と言いながら、さんこ屋敷のおじいさんとおばあさんが起き出してきてミッちゃんに話しかけたのです。

『ばあさんや、見て見なさい!。あの雨風が嘘のような晴天じゃが』

『ほんとじゃほんとじゃ、嘘のようじゃな』とおばあさん。

『おじいさんおばあさん二人のおかげで、蜜蜂の巣は何事もありませんでした。ありがとうございました』とミッちゃん。

『むしろ』を外された蜜蜂の巣を見やりながらおじいさんもおばあさんも心底から安堵したようでした。

そしてその時も二人の頭のすぐ上を女王蜂がさながらお礼の挨拶をしているかのように三回、旋回しそれから巣へと戻って行きました。

『おじいさんおばあさん、蜜蜂たちもお母さんもお二人にお世話になったおかげですと、喜んでいます。そしてくれぐれもお二人によろしくって』

『なんのなんの、大した手間でもありゃあせんかった。』

そう言いながら二人は何度か背伸びをして、空気を胸いっぱいに吸い込んでからうちの中へと戻った行きました。

ミッちゃんはこれからいつものように朝ごはんの用意です。

その前にミッちゃんは庭の放し飼いのニワトリのたまご集めです。

雨と風で3日は庭にも出られなかったので果たして卵があるかどうか気にかかったのですが、庭の植え込みの灌木のかたわらに卵はいくつもありました。小さなカゴでしたが、余るほどです。

『おじいさんおばあさん、卵はこんなにありました!』とミッちゃんは二人に自慢げに見せたのです。

二人は『そうかそうか』と笑顔を見せながら、しかしおじいさんはその時少しだけ思案顔をしたのです。(続く)



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