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「今日のこだいら」。

昭和50年創業の小平駅前のアイコン。赤いテントの「満北亭小平店」が8月3日に閉店する。このまちに越してきてから、お昼に、夕飯に、飲んで帰るしめにと家族ともども大切な場所。小平駅のホームから見える赤い提灯はブックマーク。

いつもの母さんに迎えられる。腰を下ろすとそこは日が当たるからこっちに座りなと即されて日が当たらない場所に座りなおす。サザンが軽やかに流れる有線。にんにくは使う?なんてなんだかいつもより饒舌な感じ。

コの字のカウンター。その奥に見通しの良い厨房。メニューが増えて少し賑やかになったけれど、ほぼあの頃からの店内。味噌も醤油もいいけど原点は塩バターって今日はそれ一択。

厨房からリズミカルな炒めの音が響いた後に「はい、塩バター」と母さんから届くそれは、いつもの麺顔。スープを啜る。バターではないほう。コクと旨みをまとう塩気にうんこれと小さく頷いたりする。

もやしとスープを暫く楽しんで、バターの黄色がスープに溶け出した頃に、麺を引きずり出す。スープを吸うもっちりな太い麺。ズズ。しあわせな噛み心地。

もくもくと野菜を頬張り、スープを啜り、麺を噛みしめながらいろいろなことを思い出す。汁に沈むコーンをレンゲで拾うのもいつものこと。

ほぼ汁を飲み干してごちそうさまと立ち上がるとお母さんが「これからは東大和に行ってねー、駐車場もあるし、近い?」と聞かれる。「はい」と答えると「よかった、ありがとう」と見送られる。

こちらこそいままでありがとう。

※この記事は2020年7月に書かれた記事をリライトしたものです。満北亭小平店は2020年8月に閉店しました。


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