懐中時計

小さな頃からコンパスとか、
懐中時計とか好きだったなぁ。

おじいちゃんの形見の、
手巻きの懐中時計が好きだった。

ある日、お留守番の時に、
おじちゃんの形見の懐中時計を渡してくれた。
１人で待つ時間、
懐中時計のネジを巻くのが楽しくて、
グルグルグルグル巻いていたら、
ネジを巻きすぎたのか、
針がビョーンとガラスのケースの中で
飛んでしまった。

お留守番だったので、
帰ってくるまで、
ごめんなさいの手紙を、
書こうと思ったのだけれど、
途中で泣けてきて、
書いた字の上にポタリポタリと、
涙が落ちてきて字が滲んでしまう。
何度書き直しても、
やっぱり涙が落ちてきて字が滲んでしまう。
だから、
ずっと書き終わらなくて、
それで、また、ずっと泣いていた。

それで、そのまま、
疲れて眠っちゃって、
その間に帰って来ていて、
ごめんなさいと言ったら、
許してくれた。
大切な物を壊してしまった、
申し訳ない気持ちと、
許されたされた安堵感で、
ホッとして、でもなんだか悲しい。
そんな気持ちを、
今でもずっと覚えている。

そういった事が、何度かあって、
大切な物はちゃんと大切にしようって
思えるようになった。

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