M-1グランプリ2021感想【遅ればせながら】

【あいさつ】
 M-1グランプリ2021もついに決着しましたね。この記事では全編ネタバレですので、これから見る予定でまだ見ていない人はさっさと見てください。
 
 
【本編】
 さて、この記事ではM-1グランプリ2021の感想と、素人なりに結果を基に考えた来年以降の対策を述べる。感想については好き嫌いも含めて書きますが、対策については好き嫌い抜きで全組が少しでも点数を上げる方法を考えていく。
 

※各芸人のネタについての筆者の知識は、毎年のM-1決勝、去年の敗者復活戦と一部動画、今年の三回戦動画、準決勝配信、一部のネタ番組及びYouTube動画です。なお芸名等のコンビ情報についてはM-1公式HPのコンビ情報に記載されているものを参照しているので、ボケとツッコミの名前がイマイチ一致していないコンビもいます。

 
【敗者復活戦】
 まずは決勝戦の前に行われた敗者復活戦について振り返る。
 コンビ名の横の数字は筆者によるネタ直後採点。もちろん多少の好みが入っているので点数は話半分に。
 
キュウ 88
 ネタは「ルパン三世」。キュウの公式chで見た覚えがある。5ちゃんねる情報では昨年準決勝のネタらしい。トップバッター、キュウの笑いの取り方がM-1向きではないという点は無視して採点すると、名前の質量保存はやはり面白い。質量保存だけで4分間やってほしい。この時点で90点をつけたいのだが、後半のモノマネの中で質量保存するところはあまりハマらなかったので2点減点した。あとになって考えると、モノマネの時間が長かったから86点くらいまで減点してもよかったかな……と思ってしまった。
 見たことのあるネタではあったが、キュウらしさが出ていたので、敗者復活投票では一票を投じた。
 
アインシュタイン 83
 ネタは「イナモン」。架空の化け物というかキャラクターが主軸のネタだが、稲田さん本人とイナモンの区別というか、中途半端に稲田本人に寄せている設定のせいかイマイチ場面が想像できなかった。どちらかというとコントの方が生きた設定かもしれない。
 
ダイタク 87
 ネタは「双子の葬式」。準決勝と同じネタだが、今回は間違えずにやり通した。個人的には双子漫才だと圧倒的に『吉田たち』の方が好きで、ダイタクのネタは「双子ありき」に終始してしまっている上に、(こういうこと言うとよくないが)顔が似ていることを(必然的に)ウリにするにしては「顔が普通」すぎる。ただM-1的にはそれくらい(双子特化で)尖ったネタの方が予選審査員の印象がいいのだろう。ネタの出来自体はいい。
 これも準決勝配信で見てはいるが、やりきったご祝儀も若干含めて、敗者復活投票で一票を投じた。
 
 
見取り図 85
 ネタは「左利き」。基本的に舞台上でしか見ない芸人が「自分左利きで」と言われてもピンと来ず、先に「左利きって嘘?本当?」という思考にさせられてしまった。ボケの内容等は相変わらず分かりやすい。ただ後半の芸人と見比べると85点はあげなくてもよかったかな……
 
ハライチ 86
 ネタは「悪魔の契約」。澤部の名演が光る。かつてのフリまくるのと違って沈黙で笑いを作るという、また違ったハライチを見せた。ただ、あれだけ沈黙で調整できる時間があるのにタイムオーバーするのはいかがなものか……ということを考えるとあと2点下げてもよかったかもしれない。
 
マユリカ 80
 ネタは「ドライブ」。会場ではウケていたが、筆者はハマらなかった。完全に個人的な好みだが、ツッコミの中谷さん(多分)の女役が全く好きじゃない。ツッコミとしてはたくならまだしも、ただ叩くのをボケにするのもマイナス。自転車のカギは面白かったが、それ以外のボケはぴりっとしなかった感がある。
 
ヨネダ2000 84
 ネタは「YMCA寿司」。っていうかDef Tech寿司だろwwwwwというのが初見の感想。準決勝配信では一切分からなかった部分なので、そこは爆笑してしまった。余談だが、三回戦動画を始めてみた時、『オジンオズボーン』の「俺の方がツッコミ上手い」というネタで正拳突き延々してるのにツッコむのを思い出してしまった。というかそれを4分間やってるのがヨネダ2000だと思う。
 
ヘンダーソン 83
 ネタは「街コン」。三回戦のネタをさらに改変したもの。準決勝からもさらに変わっていたが、今年はこのネタ一本でM-1に挑んだのだろうか?今年のフォーマットは好きなので、せっかくだから他のネタも見たいと思ってしまった。ただ、スカし方のバリエーションを豊富にしてもイマイチ面白くならないかもしれないというのも同様に感じる。街コンでないテーマだったら投票していたかも。
 
アルコ&ピース 83
 ネタは「鳥」。準決勝と同じネタ。他のネタや漫才師をフリに使うネタだが、後半戦一発目という出順に加え、ここまでのコンビがあまり「○○の練習をしたい」というネタをしていなかったこともあって、実質的なフリが弱かったか。「ボケはツッコミの夢を叶えるためにいる」という台詞があるが、最近ツッコミから「○○の練習したい」と始める漫才ってそういえばあまり見ないかもしれない。
 
カベポスター 81
 ネタは「バンドの紹介」。今年の予選でけっこう好きになったコンビなのだが、今回のネタは難しかった。昨年決勝で、審査員の巨人師匠から東京ホテイソンに「客に頭を使わせるネタだった」という評があったが、正にそれだった。ホテイソンの場合はツッコミのワードだけで面白いので、謎解きの問題部分はフリとして聞き流してもそれなりに面白いのだが、今回のカベポスターのネタは「バンドの風貌を聞いて想像する→バンド名と一致するかどうかを考える→それらを覚えた上で歌詞を聞いてイメージに一致するか考える」という、客にかなり複雑な思考を強いる構造だったので、こればっかりは巨人師匠が正しいと言わざるを得ないようなネタだった。一度固まりかけた組み合わせが二転三転するのは面白かったのだが、実にもったいない。
 
ニューヨーク 81
 ネタは「稲垣吾郎」。公認ネタだそうなので本人及び周辺から文句は出ないだろうが、一個人をただひたすらあり得ない行動でイジるネタってどうなの?と考えてしまう。もう少し点数低くてもよかったかも。
 
男性ブランコ 84
 ネタは「温泉旅館」。三回戦かどこかで見た覚えがある。オーソドックスな漫才コントで外れがない印象。ただ、それ以上の印象がないのが課題では。二人が落ち着いた雰囲気なので、「全治癒」レベルの惹き込まれるワードがもっとほしい。
 
東京ホテイソン 84
 ネタは「クイズ」。「単語をくれればそれが答えになるクイズを作れる」という設定を聞いて真っ先に浮かんだのは『三拍子』の「早押しクイズ」のネタだった。もちろん展開はあちらとは大きく異なるのでいいのだが。カベポスターの項で述べた昨年の巨人の指摘はある意味全無視したネタだったと言える。ショーゴの問題(つまりフリ)が長いので、昨年の動物の羅列よりも分かりづらかったので点数は抑えめにした。
 
金属バット 85
 ネタは「早口言葉」。政治(というか思想)に関心が薄いのでツカミが長いわりにピンとは来なかった。ただネタの内容は信頼と実績の金属バットという感触だった。最後時間が余ったのか、友保さんが腹を出したのはさすがにお下品というか見苦しい(みてくれがどうこうではなく)のでさすがに減点対象。そことツカミが分かりやすかったら投票していたが、ツカミは多分金属バットらしさ前回のツカミだったのだろう。
 
からし蓮根 89
 ネタは「居酒屋」。現代M-1の漫才コント職人。安定の面白さと分かりやすさ。三回戦の「カフェ」か何かでもトイレについて行くボケがあった気がするが本人達の間で流行ってるのか?準決勝のネタでも思ったが、終盤に説教臭かったり怒ったりする流れが長いわりに打率が低いので変えた方がいいのではないか。あと青空くんのツッコミが終始怖く聞こえる。
 敗者復活投票では一票を投じた。
 
さや香 50
 ネタは「唐揚げ」。全体に重かったのでチャンスがあるのでは、と(コンビ自体はそんなに好きじゃないけど)期待したのに、何をしに来たんだろう。導入のくだりも面白くないし、その後もただ叫んでるだけ。漫才を名乗る以上は「やりとり」「展開」「言葉」「理論」のどれかの面白さはあってほしい、話芸なのだから。この日のネタからはそのどれも感じられなかった。準決勝まではウケがよかっただけに残念である。これに投票した連中もお里が知れる、と殊この日のさや香に対しては厳しく言わせてもらいたい。
 
 
 敗者復活戦全体を通して。
 昨年はあった敗者復活戦終わりの中間結果発表がなかったのは改善された点といえる。あの時点で4位以下の芸人(とそこに投票した人)はテンション爆下げだったので、全て直前発表だったのはよかった。
 あと改善してほしいのは一つ。きっと、もっと面白いコンビも多かったはずなのだが、やはり会場の観客の笑い声が小さいとどうしても面白くないという印象を受け取ってしまう。テレビの前の視聴者にも面白いと思わせるために、やはり屋外ではなく屋内でやってほしい。
 
 
 
【決勝戦】
 さあ、いよいよここからが本番。2021年の決勝戦である。ここでは出番順に、審査員の点数も並べて振り返りたい。コンビ名の左が出順、右の数字が点数であり、左から巨人、富澤、塙、志らく、礼二、松本、上沼、合計点である。
 
①モグライダー 91 93 92 89 90 89 93 637
☆感想
 決勝初出場。優勝を期待していたので、トップバッターかー!と参ってしまった。ネタは準決勝配信で音声カットされていた「さそり座の女」が待望の披露。観客も温まっていてよかった。音なしでも面白かったが、やはり本物は違う。全体の流れはもちろん、個人的には、芝さんが最初は嫌そうに歌っているのに美川さん役になるとしっかり歌うのがツボ。
 トップバッターとして最高の出来だった。順番さえ違えば最終決戦は固かった、と今でも思う。モグライダーがトップバッターだったおかげで得点的にハイレベルな戦いになったともいえる。ちなみにトップバッター637点は歴代最高点。
☆対策
 正直変えるところはないと思う。この調子でネタを磨いて優勝してほしい。ただ一つ気になった点は、ネタ時間である。試しに(第一声を開始、礼を終了として)計ったらしっかり5分あった。もし手元にストップウォッチを用意する審査員がいたら相当心証は悪い。内容自体は「長い」と感じさせる冗長さはないが、今回で削るとしたら「お前の夢は何だ!」辺りか。
 あと志らくから指摘のあったともしげさんの歌は、上手くなくてもいいけど音程は合ってるに越したことはないと思う。
 
②ランジャタイ 87 91 90 96 89 87 88 628
☆感想
 決勝初出場。個人的には好きになれないタイプの芸風なので、早めに消化されてよかった。ネタは「風が強い日のネコ」。漫才というよりはパントマイム。まあ審査員も場がヒエッヒエになるほど低くもなく、かといって上に上がる可能性もないくらいに低くしてくれて安心である。
 しかし、2回目を見ると意外と内容が分かるもので、ちょっと面白くなるのである。最初に面白くなかったと思った人は、ちょっと日にちを置いてもう一度見てみてはいかがだろうか。
☆対策
 さて直すところはいっぱいある。が、あまり変えすぎても彼らの良さが消えてしまうので、「漫才っぽさ」を出すのはどうだろう。
 ランジャタイのネタが漫才っぽくないのはやはり「ボケとツッコミのやりとりの少なさ」だろう。特にツッコミの伊藤くんが筋に絡んでこないのが気になる。いっそ伊藤くんを国崎くんワールドに始めに引き込んで思い切り振り回してしまえばいいのではないか。4分のうち2分は伊藤くんを連れ回して残りは置いてけぼりの国崎劇場でもいい気がする。
 
③ゆにばーす 89 92 91 91 93 88 94 638
☆感想
 3年振り3度目の決勝進出。ネタは準決勝でも披露した「ディベート」。男女を活かしたネタとして台本はトップレベルのネタだと思う。ただ男女を意識しすぎて下ネタがキモいのをどうするかと心配していたが、「遺伝子を残し合う関係性」と変えていた。ただ、結局下ネタがキモい、という部分は残ってたかなー……
☆対策
 男女コンビを活かしたネタは(M-1で出せる範囲では)極めた感もある。これ以上男女方向に尖らせるとキモさが爆裂してしまうし、男女を活かさずともいい上手さが十分にあるので、ここでいっそ男女に特にこだわらないネタで上手さを見せてもいいのではないか?また、審査員評にもあったが、川瀬名人が気合いが入りすぎていた。名人の見た目が大声を張り上げるタイプにはあまり見えないので、前半はもっと気楽というか落ち着いて見せた方が後半の伸びも見せられるような気がする。
 
④ハライチ(敗者復活枠) 88 90 89 90 89 92 98 636
☆感想
 敗者復活戦を制して5年振り5度目の決勝進出。敗者復活のネタではなく、「怒る岩井」のネタを披露。おそらくネットで噂になっていた準々決勝の「ぷんすか岩井」と思われる。「決勝でやりたいネタがある」と本人達が語るだけあって、今までとは全く違うハライチを見せた。連続で決勝進出していた時期からM-1出場の期間を空け、ラストイヤーで見せた漫才はどれもかつてのハライチとは異なるスタイルで、彼らの漫才にかける想いを見た気がする。
 ネットの一部のお笑いファン()からは「こんなのが出るくらいなら○○が出た方がよかった」「○○だったら最終残ったかもしれないのに」という意見が散見されたが、私はそうは思わない。結果こそ振るわなかったが私は笑ったし、何より「ハライチとM-1」の物語の完結を丁寧に見られた嬉しさがある。見ましたか?最後のイワーイの晴れやかな顔。それと、他のコンビが敗者復活から上がったところで点数は正直似たり寄ったりだっただろう。むしろ真空ジェシカゆにばーすモグライダーより高い点数をあげようものなら、審査員批判のやり玉に挙げられるだけだろう。準決勝の客ウケではあまり差は見られなかったコンビも、改めてネタ内容を見ると決勝組と準決勝組ではかなりの差があるというのをこの一日で痛感した次第である。
 なお、ハライチはラストイヤーなので対策は省略するが、終盤のぷんすか三連発は明らかに長すぎたと思う。ネタ時間を考慮しないとしてもちょっと飽きがきてしまった。
 
⑤真空ジェシカ 90 89 92 94 94 90 89 638
☆感想
 決勝初進出。準決勝感想の記事でも書いたが、『爆笑オンエアバトル』全盛期のお笑いを感じられるストレートな漫才コントである。大好き。
 ネタは準決勝と同じ「一日市長」。ただしボケの入れ替えがけっこう行われている。相変わらずのボケの精度とツッコミとの二段構えで大いに笑った。点数に納得がいかないくらいである。
 ただ、筆者は現職市長のところのボケが二回見ても聞き取れず、一緒に見た家族に確認してようやく理解する始末であった。「川北くんの声が聞き取りづらいのではないか」という懸念はよく見られたが、まさか自分が喰らうとは思わず残念(自分の耳も)。好みの問題だが、入れ替えでなくなったボケの「納税税」も「ETC内蔵人間」も好きだったので少々もったいない感じがした。客ウケも審査員ウケも悪くなかったので、このまま決勝常連になるか、さっさと優勝して売れまくってほしい。
☆対策
 まずは声量だろう。川北くんのあの雰囲気は大事にしてほしいので、声のトーンは変えずにどうにか声量を増してほしい。
 ネタの内容で気になるところは、ボケがけっこう取っ散らかってしまったところ。準決勝からの大きなボケの変更点は「焼いた亀の甲羅で政治方針、納税税→現職市長による踏み絵、好きな法律守って」と「高速歩かせるETC内蔵人間→江夏のジャイロボール」辺りだが、特に前者は「一日市長で政治のこと知りたい」という本筋らしい展開だったので、ここが削れてしまったのは惜しい。酸性雨のボケもだが、一日市長と関わりの薄いボケではなく関わりの濃いボケが続けば富澤くんの点数は上がった気がする。来年も準決勝以上は固いと思うので、ぜひリベンジしてほしい。
 
⑥オズワルド 94 95 95 96 96 96 93 665
☆感想
 3年連続3回目の決勝進出。初決勝からバチバチのしゃべくり漫才で、去年の時点でさえ貫禄を感じたが、今年のファーストステージは特に圧巻の出来だった。
 ネタは準決勝で披露した「友達」。畠中くんの狂人度が増しているのもあって、だんだん『かまいたち』っぽくなってきている。M-1で結果を出し続けているのも合わさって、かまいたちの後継者に見えてくる。でもそれじゃ優勝が……それはさておき、準決勝からさらにブラッシュアップさせて中指のくだりを利用してハッピーエンドっぽくなっているのも好印象だったか。来年も決勝は確実、優勝候補筆頭だろう。
☆対策
 このネタに関してはもう何も言うことはあるまい。このクオリティのネタが2本あれば優勝は確実だろう。漫才コントや異色のネタだと点数を考える審査員もいるが、しゃべくりなので余計な心配もいらない。ただ、この日2本目のネタに関しては欠点も見られたので後述。
 
⑦ロングコートダディ 89 90 93 95 95 91 96 649
☆感想
 決勝初進出。キングオブコントでも決勝進出しており、個人的にはコント師のイメージが強い。この日のネタは準決勝と同じ「生まれ変わり」。ボケ数こそ少ないがその破壊力(特に顔とマイム)でブチ抜いた。オチがワイドハンガーからワゴンRに変わったが、この日の方が分かりやすくて好み。ただ、どうしてもコントコントしているのが気になる(コントでは面倒な設定ではあるが)ので高得点は出ない方がいいけどなー……と思っていたが予想通りの巨人師匠以外は高得点。塙くんはもうちょっと低くするかと思ったが。
☆対策
 今回のようなテイストのネタで勝負するなら、やはり「いかにコントっぽさをなくすか」だろう。この日の出来でボケ数を増やすとかテンポを速くするとか、そういったことは言われないだろう。
 コントっぽさをなくすには、巨人や松本から指摘のあった「センターマイク中心に展開すること」だ。兎くんが二、三歩歩いて移動している様子を見せ、堂前くんがマイクの前でくるんと回るだけで登場人物が変わったことは見せられる。天寿を全うするくだりだけマイクから離れてやれば充分だろう。堂前くんが兎くんより遠いのに下手から上手へ(天界の住人なのに)頑張って移動しているのはだいぶ格好悪い。
 コントっぽさをなくすもう一つの方法は、「コントの登場人物」から「ロコディの二人」に戻って終わることだろう。今回でいえばワゴンRの天寿の話から、「天寿長すぎるわ!もう戻れ!」とでも言ってセンターに二人で戻り、堂前「どうする?まだワニなりたい?」兎「いやもうええわ」と結べばしっかり漫才の終わりである。話題の提示があったら話題の回収がある方が話としてもよい。
 
⑧錦鯉 92 94 94 90 96 94 95 655
☆感想
 2年連続2度目の決勝進出。ネタは準決勝でも披露された「合コン」。圧巻のパフォーマンスである。特にツッコミの渡辺さんの腕を見せつけるような後半の畳みかけは現役M-1戦士が持っていない技術といえる。まさのりさんが死なない程度に頭を叩き続けてほしい。昨年ハマっていなかった審査員も味方につけたような点数で、しっかり評価を上げた。
☆対策
 先に言ってしまうと、優勝したので来年は出ないと思うが、ケチをつけるとしたらツッコみ方か。叩くのはいいのだが、音がよく響きすぎて、音量が「まさのりさんの声>叩く音>渡辺さんの声」と聞こえる感じがする。ツッコミが全く分からないほど聞こえないわけではないが、タイミングを上手く変えて修正するか。
 
⑨インディアンス 92 91 93 94 94 93 98 655
☆感想
 3年連続3度目の決勝進出(敗者復活枠含む)。ネタは準決勝でも披露した「怖い体験」。インディアンスのネタはそもそもボケの種類とかじゃなく勢いで笑えるのだが、このネタは本筋から外れないボケが多く、ツッコミのきむくんが振り回されすぎずに田渕くんをある程度制御できているのが好感を持てる。何より「どーもー!インディアンスでーす!」が、伏線ではないが、インディアンスでしか出せないボケでバチコーン!とハマった。「お前は誰だ…」をフリにしたボケとしては最強の回答。
☆対策
 「きむが主軸を押さえて本筋に戻す」ができていれば次回も同じ以上の結果が望めるだろう。2本目はきむが振り回されすぎていた感があった。また、少し気になったのは、楽天モバイルのくだりが多いこと。他人のふんどしで相撲を取っている感が出るので、連発は避けた方がいいのではないか。
 
⑩もも 91 90 91 96 95 92 90 645
☆感想
 決勝初進出。ネタは「欲しい物(顔漫才)」。去年から注目していたが今年一年で一気に(筆者が)ファンになったコンビ。特定の芸人のファンになるなんて15年振りくらいかもしれない。
 一回戦三回戦準決勝とネタを見たが、またも違うネタ。とはいえ形のあるシステム漫才なので過去にも登場したワードを入れ替えて使うことはあるが、今回はよく聞くのは「三代目」くらいで、まだまだ決めワードがあるのはさすがだった。結果は残念だったけど点数は良かったので、来年は最終決戦以上に期待してます。
 審査員の評価、特に巨人師匠の「前半からもっとテンポ上げていけばよかった」というのは、予想通り。ただ初M-1決勝という大舞台を考えれば、「ネタの自己紹介」としてしっかり形を見せたのは間違っていなかったと思う。ここで名前も「ズレてるわー」も浸透したので、来年からは省略できる。来年は優勝します(願望)。
☆対策
 まずは審査員からの「前半テンポ上げる」に対する回答。決勝では入りのテンポをわざといつもより遅めにしていたように感じられたので、通常のテンポで攻めるのは一案。
 その他にボケ数を増やしてギアを上げるタイミングを早めるということもできる。ボケ数を増やすための方策として考えられるのは①自己紹介を省略②話題提示の時点で1ボケ入れる③「ズレてるわー」のくだりを短くする④名言のくだりをなくす、辺りがあるだろう。
 ④はもったいない。言い合いで終わるとただのあるあるネタに見えるが、名言が入ることで漫才っぽく終われる。
 ①は彼らのYouTubeチャンネルの導入のように「せめる。です」「まもる。です」「ももです」で十分通じる(ようになった)だろう。丁寧に自己紹介するのも面白いので、寄席では今のままで全然いいと思う。
 ②はスタイルを変えずに早めに笑いを取れるのでアリだと思う。例えば決勝ネタで入れるなら、
せめる。「俺、欲しい物がめっちゃあんねんけど、」
まもる。「なんでやねん!お前買い物全部コンビニで済む顔やろ!」
というようなタイミングになるか。そのあとで何食わぬ顔で説明を入れてもある程度観客は温まった状態で第二段階に進めるのではないか。
 ③は、「ズレてる」をなくすとなぜお互いに言い合っているのかという軸もなくなってしまうので、「見た目と違うこと言ってるから~」をなくしたり、「二人でズレてるか言い合い→お客さんに聞く→二人で確認し合う」の流れを一つ減らしたりすればいいのではないか。
 テンポ以外で点数を上げる、あるいは最終決戦でも飽きられない2本目ネタに仕上げる方策としては、同じ「顔ネタ」でも見せ方を変えることだ。決勝の「おい!お前そんなこと~」は現状分かりやすい「見せ方の変化」だろう。全部の顔ボケの見せ方を変える必要はないが、4分間の中でこれが3、4種類と出せれば後半の盛り上がりがさらに増え、長くなると思う。
 ネタ自体の見せ方を工夫してもいい。漫才コントの顔ネタもやっていたらしいので、1本目を普通の顔ネタ、2本目を漫才コントの顔ネタと見せて同等以上のクオリティを見せれば審査員の印象は非常に良くなるだろう。
 と、こんなことを考えながら12月23日の「M-1グランプリ決勝体験ライブ」を見ていたら、ここに挙げたようなことを既に実践し、よりパワーアップしたもものネタが披露されていた。本人もトークで改善したことを話していたが、決勝からわずか四日である。さすが365日ネタ合わせする漫才の鬼、こちらの心配など杞憂である。M-1常連になるかさっさと優勝してほしい。そして関東のテレビにも出てほしい(関東人)。ちなみに当該ライブはFANYの配信でまだ見られるので、来年M-1優勝するももの力の片鱗とちょっとした失敗を見にチケット買ってあげてください。決勝組では真空ジェシカ、ゆにばーす、ランジャタイ、モグライダーも出ていて、彼らの(一部ある意味での)本気ネタが見られます。何で俺はこんな宣伝をしてるんだ……?吉本の回し者か?お前ら全員東大に行け!
 
【最終決戦】
 最終決戦進出はネタ順にインディアンス、錦鯉、オズワルドの三組。ご存じの通り優勝は錦鯉であるが、ここでも感想とネタの気になった点を書いていく。
 
インディアンス
 ネタは「売れっ子のスケジュール」。相変わらずの勢い。1本目よりもきむの振り回されっぷりが強くて、「あー2019のインディアンスっぽいなー」と思ってしまった(真実のせいかもしれんが)。あと個人的にもう中学生をよく知らないので、やっぱり予備知識が必要なボケは難しいなーと思うなど。逆に「ペガサス幻想」は観客に伝わってなかったんだよなあ……
 
錦鯉
 ネタは「猿を捕まえたい」。「パチンコ」や「合コン」は一発ギャグ的なボケを複数投入するなど、「バカの紹介ネタ」といった趣が強いのだが、今回はそういった要素は排して展開で笑わせるネタだったのが、M-1審査における重要要素(と筆者は勝手に思っている)の「変化を見せる」につながったのではないか。「森に逃げ込んだ→じゃあいいじゃねえか」や、今までまさのりさんの世界に介入してこなかった渡辺さんが直接手を下すなど、過去のネタに比べて挑戦的なネタに見えた。3本のネタを見終えたあとだと「優勝に文句なし」といえる出来だった。優勝おめでとうございます!
 
オズワルド
 ネタは「割り込み」。正直1本目に比べるとかなり弱いか……畠中くんの「ヤバい奴」感はあるが、1本目が「会話が通じるのにヤバい奴」だったのに対して、このネタは「会話ができないヤバい奴」だったので、伊藤くんがツッコミとして論理的に対抗する流れが作れなかったのが敗因か。オズワルドには「狂人畠中VSキレた常識人伊藤」の構図を極めてほしい。
 
【2021年のM-1全体を通して】
 今年は早い段階から予選動画を見て、M-1大好き芸人の動画などで仕入れた情報から既知の芸人以外のネタも見て、例年の数倍M-1を楽しませてもらった。
 その中でももを筆頭に、真空ジェシカ、モグライダー、準決勝にこそ進めなかったが黒帯、侍スライス、フースーヤ、ヤーレンズ、怪奇!YesどんぐりRPG、等々……来年も応援したくなる芸人をたくさん見つけることができて、更にはそれが勝ち上がり、決勝までいく姿を見ると、笑いだけではない何かが胸に湧き上がるようだった。
 ……少しクサくなったが、M-1が終わればM-1が始まるとはよく言ったもので、チャンピオン以外の芸人はもう2022年の決勝の方を向いているだろう。
 私はお笑い以外にも趣味があり、ライブにまではなかなか足を運ばなかったのだが、今後はその隙間に配信などでお笑いをよりたくさん楽しませてもらうことにしよう。そして来年のM-1も楽しもう。
 とりあえず、来年は準々決勝の配信も買おうと思います。長くなりましたが、改めて錦鯉のお二人、優勝おめでとうございます。そして全てのお笑い芸人の皆様に感謝を!

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