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比翼 散らかる文 /青紗蘭

「私は、彼の目。」
「僕は、彼女の耳。」

互いに不自由がありながらも助け合い生きている。そのような男女がおりました。

仲睦まじく、くらしていました。しかし、あるとき夜盗に入られてしまいました。

「金と食い物よこしな…なんだ女もいるじゃねぇか。いいねぇ可愛がってやるよ」

夜盗の悍ましさが辺りを埋め尽くします。

「ここにあるのは、僅かな米だけです。どうか、どうか…」

男も女も涙を流しながら懇願しました。

そう、男と女が語りかけた瞬間、男の片腕は切り落とされていました。女は、男の名を叫び続けました。

「うるせぇ!だまってろ!」

女は、顔を切られてしまいました。
耳も聞こえず目も流れる血で見えなくなった女は、なすすべも無く震えていました。

片腕を切り落とされようとも。
耳が鋭かった男は、夜盗の気配を読み、足を掴み、食らいつき、なんとか女を守ろうとしました。

「ちっ、死にぞこないが!」

次の瞬間、無惨にも男は、心の臓をなまくらな刀にて力任せに貫かれてしまいました。
男は、女の名を口にし、息絶えました。

女は、微かに見えた濁る惨状の中で、男が潰えたのを知りました。
そして震えていた体はぴたりと止み、懐刀にて心の臓を突き絶命しました。

夜盗は散々に荒らし回り、すべて奪い取りどす黒い暗夜へ消えていきました。

その数日後、修業にて通りがかった僧が、不穏を感じその元へ辿ってゆくと、手をつなぎ絶命した男と女をみつけました。

「なんと…なんと言うことだ。ああ…この様なことが…」

僧は、息を吸い涙しました。
その場で起きたことが顕れ見えてしまったのです。息を吐くのを忘れるほど凄惨なあの暗夜を。

「この様な姿になっても結わえるとは…」

僧は、経を唱えながら二人を弔い、ひとつの墓をつくりました。しばらく天を仰ぎみ、僧は立ち去りました。


幾月。
幾年。
幾星霜。


ひとりの男と女の美しい結わえは、互いを合わせることで一つとし、比翼の鳥となりました。

比翼の鳥は、連理のように飛んでゆきました。

ーーーーーーーーーーーーーーーー🍎✨

※比翼連理(仲睦まじいなどの例え)

お話しにしたらどうなるかなーという感じで書きました。比翼の鳥は中国の伝説や神話にでてくる鳥さんです。日本にもそんなタイトルの歌があったような。。

神の介入でも無く、救いの話でもなく。説教でもなく。稀有な魂が齎したものを書きたかったというところかなぁ。

読んでくれた方は、🍎置いていって下さい(笑)





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