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なんでもない日に何にもできなかった自分

なんでもない日。

朝起きて、ご飯食べて、食事して、アルバイトに行く。
電車の中でバイト先のホームページを見ながら少し勉強して、ウォークマン充電してなかったことを後悔する。


今日は朝から調子が良くて、1週間ぶりのアルバイトだとか、私が休んでる間に出た新作だとか、あんまり気にならなかった。
次の電車まで余裕を持って来たので、駅のホームを端まで歩き、少し開けた景色を眺めた。田舎らしく、端っこの車両にはボックス席があって、私はボックス席の横の2人がけのイスに座る。
ボックス席があるのは田舎行きだけらしい。
アルバイト先は都会で、そこの社員さんに「あんな席あるんだね」と言われたとき、どの席のことを指しているのかわからなかった。まさに私みたいなのを、田舎出って言うのだろうか。
少し恥ずかしくて、高校生のころ友達とボックス席に座ってお話ししながら帰ったこと、お向かいに座ったおばあちゃんに「素敵な制服ね」と言われたことを早口で話してしまった。
あまり感じていない田舎の良さを無駄に語ってしまった気がした。

今日もまたボックス席のある車両に座って、都会に行く。高校生のころとは反対方向。
気にせずお喋りできる緩さも、微笑んでくれるおばあちゃんもいない。
隣のボックス席で誰かが何かを落とした。金属製のデカい水筒を落としたときみたいな音がした。小学校みたいな音。

途端に、周りの音がたくさん聞こえるようになる。ここで先のウォークマンのくだりへ戻る。イヤホンをしていれば、そこまで音に驚くことはなかった。
さっきより車内の空調の音がとても大きいように感じるが、はじめからこうだっただろうか。それとも、水筒が落ちた音がしてからだろうか。

大きな駅に着いて、ずっと隣に座っていた女性が降りていった。大きく息を吐いてもジロジロ見られることがない状態にホッとする。
女性は大きな、でも落ち着いた花柄のスカートを履いていて、私のスカーフの柄と喧嘩しているな、と思った。視界もごちゃごちゃしなくて落ち着く。

アルバイトも、もうあと数ヶ月で丸2年なのに、こんなんで良いのだろうか。
週末だからか、駅にスーツケースを持った人がたくさんいて、スーツケースの人がたくさんやって来てもなんてことない顔で案内できるのか不安になった。
オドオドして変なやつって思われそうだ。
幸か不幸か、田舎列車は本数が少ない。デスクワークしに行くわけではないから、席もないのに40分前にバイト先に着く。
休憩室で薄グレーの机を眺めて、落ち着いたら出勤しよう。帰りは極力窓の外を眺めて帰ろう。

あと、Bluetoothのイヤホンを今日こそは充電する。なんか今朝は調子が良いぞと思ってもいつ崩れるか分からない。
水筒の音とか、誰かの貧乏ゆすりとか。
昨日眠っている間に充電してしまえばよかったのに、また明日やろうと思って眠ってしまった。
なんかこういう、すぐ出来ると思うことほどできない。期限もない、どうでも良いことの方がやりたくなる。



高校1年のときの担任が、テスト期間に部屋の掃除がしたくなると言っていた。普段は部屋が多少汚くたって気にならないのに、いざテスト勉強となると机周りから順番に片付けだす。
この「片付け」には、大いに無駄が潜んでいて、机を少し綺麗にするに留まらず本棚の整理を始め、気づいたら古い漫画を読んでいたりする。
先生は勉強に関してほぼ常に正しく、私たちは学年で1番クラス平均が良かった。私の部屋は高校3年間ずっと汚いままだったし、代わりに長期休みに掃除する日を設けることもなかった。

大学生のある日、アルバイト先の整理され、テプラが貼られた棚に憧れ、部屋を整理した。どの棚に何があるか表を作るところまで含めて丸2日かかった。
テスト前に勉強しない口実がまた減る。部屋が整理されてしまった。私はもう2年同じアルバイトをしているが、まだ緊張ばかりしていて、全く成長がない。


みんなどうやって大人になったんだろう。
誰が教えてくれたんだろう。
部屋の掃除は長休みにしようなんて教えてくれる高校の先生は珍しい気がする。
そのくらいできて当たり前だよと言われる気がして、これからどんどん質問できなくなっていくのかな。

なんで昨日イヤホンの充電しなかったんだろう。必ず必要になるって分かっているのに目の前のことがこなせない。
私はいつ「ちゃんと」をやり始めるんだろう。

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